外壁タイル診断の省力化・高度化を実現する新型外壁検査システムを開発

検査データの取得作業と診断処理を高速・高効率化します

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、建物の外壁タイルの検査・診断処理を高速・高効率化した新型外壁検査システムを開発しました。

新型外壁検査システム

新型外壁検査システム

2008年4月に施行された国土交通省告示第282号により、建物所有者または管理者は、建物の外壁周りについて検査し、その結果を特定行政庁へ報告することが義務付けられました。中でも、タイル貼りの外壁は、経年劣化によるタイルの落下が第三者災害を招く危険性があることから、より信頼性の高い診断が必要とされています。従来、外壁タイルの浮きやひび割れの検査・診断は、ゴンドラに乗った作業員がタイルを打診・目視し、紙面上の立面図に診断結果を記入する方法で行われていました。

しかし、高層建物では外壁タイルの数が10万枚以上に及ぶことも多く、劣化が多い建物では検査結果の記録に、相当な労力と時間を要していました。そのため大林組は、従前よりタイル検査の自動化および省力化をめざし、ロボットによる外壁検査システムを開発するなど、検査の効率化に取り組んできました。

今回開発した新型の外壁検査システムは、旧型システムより自動操作の範囲を拡大し、さらにフレキシブルな動作を可能とする新たな機構を追加したことで、よりいっそうの省力化および高度化を実現しました。また、診断結果を自動的に記録、整理する機能を備えており、検査報告書作成に要する作業も大幅に省力化します。

新型外壁検査システムの主な特長は以下のとおりです。

  1. 自動検査の対象範囲を拡大

    外壁検査システムはロボットを建物屋上から吊り下げて検査を行います。旧型システムは垂直方向にしか移動できなかったため、窓や庇など障害物の下部にあるタイルを検査することができず、作業員が建物内に立ち入って障害物周辺の検査を行う必要がありました。

    今回の新型システムはロボットに、左右に伸縮するアームを取り付けることで、垂直方向に加え水平方向への移動を可能としました。検査機構がアーム上をスライドすることで、最大3,600mm幅のタイルの列を10秒程度で効率よく検査でき、かつ従来の検査システムでは困難であった窓や庇など障害物周辺の検査が可能になりました。さらに作業員の立ち入りを最小限に抑えられることから、建物使用者のセキュリティー、プライバシーも向上します。

    従来型との比較

    従来型との比較

  2. 高効率化により検査期間を大幅に短縮

    旧型システムでは、タイルの打診検査用機械と目視検査用のカメラを同時に動作させることができませんでした。このため、上昇時にまず打診装置を用いて、あらかじめ設定した一定の幅ごとに打診検査をした後、同じ場所を下降させながら搭載したカメラで目視検査用画像を撮影するという、2度の工程で検査していました。

    新型システムは同時にかつ連携して動作させることにより、カメラで目地を認識のうえタイル中央部を1枚ずつ高速で打診しながら、画像を自動撮影します。検査アームの伸縮により障害物周辺の検査が可能になったことや、一度に検査できる幅が3,600mmと拡大したことも含め、最大検査効率は80m²/h(約500m²/日)へと向上しました。作業員による検査や旧型システムと比較して、検査期間を最大で50%程度に短縮できるうえ、より正確な検査結果を出すことが可能です。

    撮影したタイル画像

    撮影したタイル画像

  3. 診断処理の自動化による報告書作成業務の省力化

    打診検査時の打音データは、検査に並行して解析(打音によるタイル浮きの有無の診断)され、ひび割れなどの撮影画像とともに、タイルの位置情報を付加したうえ、診断結果として内蔵記憶装置に保存されます。データ処理ソフトを用いて、建物の立面図上に診断結果を一覧表示することができ、任意の範囲における浮きの枚数やひび割れの枚数を、位置情報とともに一覧として出力することが可能です。劣化の多い建物では、診断結果を立面図に手書きする方法に比べ、報告書作成期間を約50%に短縮します。

    (左)打診結果診断システム (右)自動集計結果出力の報告書

大林組は、少子高齢化に伴う建設技能者不足が懸念される中、お客様へ安全・安心を提供するため、新型外壁検査システムによる検査を積極的に提案していくとともに、さらに多様なニーズに応えられるよう自動化技術を追及していきます。

新型外壁検査システムの動作状況

新型外壁検査システムの動作状況

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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