盛土による軟弱地盤の挙動を計測する「無人動態観測システム」を開発

地盤変位を自動計測し、安定管理図・沈下管理図を自動作成します

プレスリリース

株式会社大林組
株式会社岩崎

株式会社大林組(本社:東京都港区、代表取締役社長:白石達)と株式会社岩崎(本社:北海道札幌市、代表取締役社長:古口聡)は、盛土による軟弱地盤の挙動を自動計測する「無人動態観測システム」を共同開発しました。

軟弱地盤上の盛土による不具合事例

軟弱地盤上の盛土による不具合事例

一般的に、河川堤防や道路の建設工事では盛土を構築しますが、基礎地盤が軟弱である場合、盛土荷重により、すべり崩壊や地盤沈下が発生する恐れがあります。そのため、盛土の構築中には地盤の沈下量や周辺地盤の水平変位を計測し、安定管理図(※1)を作成することですべり崩壊が発生しない状況にあることを確認します。

また、盛土の構築後も、数ヵ月間は沈下量を計測し、沈下管理図(※2)を作成することで将来にわたる沈下量を予測するなど、毎日の動態観測が必要です。

これまで建設現場では、大林組の施工管理者(現場監督)が動態観測をしていましたが、計測や管理図作成に多くの時間を要しており、省力化・省人化が課題となっていました。

今回開発した「無人動態観測システム」は、沈下量と水平変位を自動計測し、安定管理図と沈下管理図も自動で作成します。本システムを適用した河川堤防工事において、動態観測業務の省力化・省人化により、測量コストを削減できることを確認しました。

沈下量と水平変位を自動計測する「無人動態観測システム」

沈下量と水平変位を自動計測する「無人動態観測システム」

「無人動態観測システム」の特長は以下のとおりです。

  1. 沈下量・水平変位の無人・自動計測などにより、測量コストを約3割削減

    本システムでは自動視準型トータルステーション(※3)をプログラムで制御し、沈下量や水平変位を自動計測します。また、盛土の進捗により視準点の高さが変わった場合でも、自動で視準点を探索し計測します。さらに、計測データを基に「道路土工-軟弱地盤対策工指針(日本道路協会)」などに準拠した安定管理図と沈下管理図も自動で作成されます。これに伴い、施工管理者が測量する場合に比べ、測量コストを約3割削減できます。

    沈下計測用視準点(左)、自動視準型トータルステーション(右)

  2. 警報システムにより、すべり崩壊を未然に防止

    自動作成した安定管理図において、計測値が危険領域(すべり崩壊が発生する危険性が高い領域)に入ると、携帯電話に通知メールを送信して施工管理者に知らせます。これにより、地盤がすべり崩壊に至る前に盛土の一時中止や押さえ盛土(※4)などの初動対応を迅速に行えるため、地盤のすべり崩壊を未然に防止できます。

大林組と岩崎は、河川堤防や道路工事など、さまざまな工事に本システムを積極的に導入することで省力化・省人化を推進し、工事の生産性向上を図ります。

  • ※1 安定管理図
    すべり崩壊しないように、盛土の安定性を評価するためのグラフ。沈下量と水平変位をグラフ上にプロットし、それらの関係からすべり崩壊の危険性がないことを管理する
  • ※2 沈下管理図
    沈下量が設計時の予測と一致しているかどうかの確認や、最終沈下量を予測するグラフ
  • ※3 トータルステーション
    計測機と視準点の間の距離と角度を測ることで視準点の位置座標を導出する測量機器。本システムでは、視準点を自ら見つけて計測できる自動視準型トータルステーションを採用している
  • ※4 押さえ盛土
    すべり崩壊を抑制する工法の一つ。崩壊の恐れがある盛土ののり面に別途盛土を行い、すべろうとする力に抵抗させる

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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