高強度かつ高耐久性のセメント系繊維補強材料「タフショットクリート®」を開発しました

ノンポリマーで圧縮強度100N/mm²、耐用年数50年を実現

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、宇部興産株式会社(本社:山口県宇部市、社長:山本謙)と共同で、コンクリート構造物のリニューアル工事に使用する長期耐久性に優れた補修・補強材料「タフショットクリート」を開発し、工事での実証を経て実用化しました。

高度成長期に建設・整備された構造物は供用開始から既に40年を超え、維持管理の面から補修などにより構造物の耐久性を向上し、ライフサイクルコストを低減できる技術が求められています。従来、コンクリート構造物の補修や補強には、ポリマーセメントモルタルを使用することが一般的ですが、圧縮強度が躯体コンクリートと同等のため、補強する場合には部材の厚さが増大してしまうという課題がありました。

また、補修や補強後の耐用年数が30年程度と短く、塩害や中性化による劣化が起こりやすい海岸などの特殊な環境下では、補修・補強部周辺にマクロセル腐食(※1)と呼ばれる再劣化が発生しやすいことが課題でした。

そこで大林組と宇部興産は、従来のポリマーセメントモルタルと比較してコストは同等で、優れた性能を有するノンポリマーの補修・補強材料タフショットクリートを開発しました。高強度かつ高耐久な材料なので、部材の厚さを低減できるとともに、ライフサイクルコストを低減できます。


タフショットクリートの特長は以下のとおりです。

  1. 部材をスリム化できます

    一般のポリマーセメントモルタルの圧縮強度が40N/mm²程度であるのに対し、タフショットクリートは100N/mm²以上の圧縮強度を長期的に確保できます。このため、ポリマーセメントモルタルより少量で同じ荷重を負担することが可能で、部材の厚さを低減することができます。

  2. ライフサイクルコストを低減できます

    タフショットクリートは組織が緻密なため、二酸化炭素、塩分、水分が浸透しにくく、中性化、塩害、凍害に対して高い抵抗性を有しています。そのため、一般のポリマーセメントモルタルの耐用年数が30年程度であるのに対し、50年以上の耐久性を確保することが可能です。またポリマーを含まないため、マクロセル腐食を抑制することが可能で補修後の再劣化が発生しにくい材料です。これらによりライフサイクルコストを低減することができます。

  3. 生産性が向上します

    コンクリート構造物の補修・補強の施工方法は、施工面積の大小に応じて、吹き付け工法と左官工法とを使い分けますが、従来はそれぞれの施工方法に応じて配合の異なるポリマーセメントモルタルを使う必要があり、作業が煩雑になりがちでした。タフショットクリートは、どちらの工法にも使用可能で、建築構造物など比較的範囲が狭い施工から、桟橋の補修などの広範囲の施工まで対応できます。

    また、従来のポリマーセメントモルタルを使用して吹き付け工法で施工する場合は、材料の性質上、左官仕上げを施すことが難しく、表層には凹凸が残りがちですが、タフショットクリートは吹き付けた後に左官仕上げを施すことが容易なため、表面を平滑に処理することができます。また、優れた接着性により、一度に厚く吹き付けることができるため、吹き付け回数の低減などにより工期の短縮が可能です。

    タフショットクリートの施工状況

    タフショットクリートの施工状況

大林組と宇部興産は、今後、コンクリート構造物の補修・補強の施工に、生産性・耐久性の高いタフショットクリートを積極的に適用し、工期短縮およびライフサイクルコストの低減を図ることで、お客様の負担軽減を実現するとともに、社会インフラなどの良好な維持管理に貢献していきます。

一般のポリマーセメントモルタルとの性能比較表

一般のポリマーセメントモルタルとの性能比較表

  • ※1 マクロセル腐食
    コンクリート中の鋼材に生じた電位差により陽極部と陰極部が形成されて電流が流れ、局部的に陽極部で鋼材が腐食する現象です。ポリマーセメントモルタルは電気抵抗が高いため、ポリマーセメントモルタルを用いて部分的に断面補修した場合、もともとの構造物との電気抵抗の違いで補修部と未補修部の電位差が増大し、補修部周辺の未補修部に鋼材の腐食が生じやすいことが問題となっています

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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