倒立振子を用いた大地震対応型TMD制震装置「ペアマスダンパー」を開発

コンパクト化かつ周期調整の簡素化を実現しました

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、大地震(※1)時に効果のあるコンパクトなTMD(チューンドマスダンパー)制震装置「ペアマスダンパー」を開発しました。

「ペアマスダンパー」の試験体による振動実験の様子

「ペアマスダンパー」の試験体による振動実験の様子

TMD制震装置は、建物震動時に頂部の錘(おもり)が建物と逆方向に動いて建物の揺れを低減する装置で、超高層建物の場合、地震時の建物の揺れを30~40%程度低減することが可能です。

既存の超高層建物の耐震補強を行う場合、TMD制震装置は通常屋上に設置しますが、大きな設置スペースが必要となるため、できるだけ装置をコンパクトにする技術が求められていました。また、TMD制震装置は、建物の固有周期と同調しながら逆方向に動くことで揺れる力を打ち消し、建物の揺れを低減させるため、施工時に周期調整が必要ですが、この調整に大きな労力がかかることが課題でした。

そこで大林組は、2つの振子(振子と倒立振子)を組み合わせることにより、装置のコンパクト化と周期調整の簡素化を実現したTMD制震装置「ペアマスダンパー」を開発しました。さらに、フェイルセーフ機構を設けることで、装置の安全性をより高めています。

「ペアマスダンパー」の特長は以下のとおりです。

  1. 装置のコンパクト化を実現

    建物は高いほどゆっくりと揺れるため、単振子式TMD制震装置の場合、超高層建物になるほど錘となる振子の長さを長くする必要があり、装置が大型化する懸念がありました。「ペアマスダンパー」は上からつるした通常の振子に、錘が上に位置する倒立振子を組み合わせることにより、通常の振子が元の位置に戻ろうとする力を倒立振子が倒れる力によって打ち消します。このため、振子の長さを短くしたまま、振子がゆっくり揺れるようにすることが可能です。

    「単振子式TMD制振装置」と「ペアマスダンパー」との比較

    「単振子式TMD制震装置」と「ペアマスダンパー」との比較

  2. 周期調整の簡素化を実現

    TMD制震装置は振子の周期によって制震効果が変わるため、周期の調整を容易に行えることが重要です。単振子式の場合はつり長さを変えることでしか周期調整できないため、装置の寸法に影響する可能性がありますが、「ペアマスダンパー」は2ヵ所に設置した錘の重量比率を変えることで、周期を調整できます。このため、作業も容易で、装置の寸法を変更する必要がありません。

  3. フェイルセーフ機構を装備し、安全性を向上

    設計で想定した規模以上の巨大地震が発生すると、振子の錘が大きく揺れて、周辺の構造物に衝突する危険性がありました。このため「ペアマスダンパー」は、直接建物の上に設置せずに、間に転がり支承(※2)とダンパーで構成されたフェイルセーフ機構を挟んでおり、錘が装置の限界変形量に近づくと作動を開始して装置に作用する力を制限し、錘の衝突や損傷を防止します。

    フェイルセーフ(FS)機構の仕組み

    フェイルセーフ(FS)機構の仕組み

大林組は、超高層建物の長周期地震動対策をはじめとするさまざまな地震対策に、TMD制震装置「ペアマスダンパー」を積極的に提案するとともに、さらなる新技術の開発に取り組み、社会の安全・安心の実現に貢献してまいります。

  • ※1 大地震
    建築基準法で定められた極めてまれに発生する地震で、震度6強~7(阪神淡路大震災クラス)に相当する地震
  • ※2 転がり支承
    ボールベアリングによって水平方向に自在に動くスライダー機構を持つ支承材

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
お問い合わせフォーム

プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。