再生可能エネルギーによりCO2フリー水素を製造する水素エネルギーシステムを構築

水素の製造から利用までを実証し、システム全体の最適化をめざします

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、技術研究所(東京都清瀬市)において、再生可能エネルギーを利用してCO2フリー水素を製造する水素エネルギーシステムを構築し、製造、貯蔵、利用の各段階で実証を行います。本実証で得られた知見は、将来、既に取り組んでいる再生可能エネルギー発電事業と組み合わせた水素エネルギー供給事業への参画も見据えて活用してまいります。

水素は、利用の段階でCO2を排出しないクリーンなエネルギーですが、現在は石油や天然ガスなどの化石燃料を化学反応させて製造することが一般的で、製造過程でCO2が排出されます。再生可能エネルギーにより水を電気分解する方法で製造される水素はCO2フリー水素と呼ばれ、製造時のCO2排出を抑制できるため、CO2排出量削減に大きく貢献します。

水素には、電力貯蔵の点で比較的安価に大容量化しやすいうえ、時間の経過とともに減少しにくいという性質があるため、大量かつ長期間にわたって電力を貯蔵する場合には蓄電池よりも優位であるとの研究結果があります。

また、北海道・東北・九州地方など再生可能エネルギーの賦存(ふぞん)量は高いものの送電網が脆弱な地域では、系統電力の安定化対策や余剰電力の有効利用が課題となっていますが、余剰電力などを水素に変換することで貯蔵、運搬が容易となり、その課題の解決に貢献できる可能性があります。さらに、FIT制度(再生可能エネルギーによる発電電力の固定価格買取制度)終了後の発電設備の活用方法においても、水素利用が有力な選択肢の一つとなると考えられています。

2014年に経済産業省が発表した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」では、将来の水素社会実現に向けた取り組みを加速し、CO2フリー水素について2040年頃に供給システムを確立するという目標が示されています。

大林組はこれらの潮流を見据え、技術研究所に設置されている既存の再生可能エネルギー発電設備を活用し、新たにCO2フリー水素を製造する水素エネルギーシステムを構築します。ノウハウの獲得や実績の蓄積を目的とし、製造、貯蔵、利用の各段階を実証することで、システム全体の最適化をめざします。本システムは、2018年4月中の完成を予定しています。

システム概要図

システム概要図

構築する水素エネルギーシステムの特長は以下のとおりです。

  1. 再生可能エネルギーを利用してCO2フリー水素を製造します

    本システムは、技術研究所に設置済みの再生可能エネルギー発電設備(太陽光、風力)の一部の電力を用いて、水電解装置で水を水素と酸素に分解してCO2フリー水素を製造します。製造したCO2フリー水素は気体の状態でタンクに貯蔵し、電力需要に応じて純水素型燃料電池の稼働により酸素と反応させることで発電します。その電気は技術研究所内に供給します。

  2. システム全体の最適化をめざします

    再生可能エネルギーは天候などによって発電量が左右され、供給が不安定になる場合があります。水電解装置などの設備容量を再生可能エネルギー発電量のピーク時に合わせて計画した場合、夜間や雨天時などには再生可能エネルギー発電量の低下に伴い各設備の稼働率も低下してしまいます。

    そこで、各設備の高い稼働率を実現し効率良く水素を製造するために、蓄電システムを併用して水電解装置へ電力を安定的に供給するシステムを構築します。本実証では、水電解装置と蓄電池容量の最適な組み合わせや、各設備の制御手法などを検証します。

  3. 停電時にも自立運転が可能なレジリエントなシステムです

    本システムは、再生可能エネルギー由来の電力を、商用電力系統から切り離して水電解装置に供給するため、商用電力の停電時においても自立運転が可能です。これを活かし、本実証では災害時のBCP対応についても検証します。

本実証は、水素社会の実現に向けて取り組む東京都が、地産地消の低炭素な水素による環境負荷の低減をめざし実施している「事業所向け再生可能エネルギー由来水素活用設備導入促進事業」の助成を受けています。

大林組は、今回の実証を通じて得られたノウハウの活用により、水素関連施設のEPC事業(関連施設の設計・調達・施工)だけでなく、既に進めている再生可能エネルギー発電事業を活用した水素エネルギー供給事業への参画も視野に入れて水素関連事業を推進し、クリーンなエネルギー供給へのさらなる貢献をめざします。


以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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