展示ケース内の空気質汚染対策技術「ピクチャープロテクト®」を開発

美術品を劣化させる有害ガスの抑制を短工期で実現します

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、グループ会社の株式会社内外テクノス(本社:東京都新宿区、社長:井田貴仁)と共同で、美術館や博物館などに設置される展示ケースの内装材などから発生し、美術品の劣化原因となる有害ガスを抑制する空気質汚染対策技術「ピクチャープロテクト」を開発しました。

ピクチャープロテクトの構成

美術館や博物館に収蔵されている貴重な絵画、彫刻などの文化財や歴史的資料は、温湿度の変化により劣化しやすいことから気密性の高い展示ケースで保護することが一般的です。しかし、展示ケースに使われる内装材などから発生する有害ガスが蓄積すると、展示物に悪影響を及ぼすことが懸念されることから、その成分であるアンモニアや酢酸・ギ酸といった有機酸などを、東京文化財研究所が上限として定めた目安の濃度に抑制する必要があります。

アンモニアはコンクリートや水系塗料などさまざまな建設材料から発生し、展示ケース内に充満することがあります。また、有機酸は展示ケースの壁面を構成する主な材料である下地用の合板、表面のクロスおよびそれらを接着するでん粉系接着剤から発生するため、合板には十分に枯らし(一定期間放置して化学物質を放出させること)たもの、クロスには有害ガスの発生量が少ないものを採用し、さらに施工後にも枯らし期間を設けます。

しかし、その発生量をゼロにすることは難しく、密閉されたケース内では時間の経過とともに濃度が高くなる懸念があり、定期的な換気が必要となります。また、近年件数が増えている改修工事では、工期が短いため枯らし期間を十分に確保できないことから、換気とガス吸着シートの張り付けを併用して対処しなければならないことも課題でした。

従来の構成

今回大林組が開発したピクチャープロテクトは、施工直後から長期にわたり、密閉された展示ケース内を良好な状態に保つことを可能にする空気質汚染対策技術です。

ピクチャープロテクトの主な特長は以下のとおりです。

有害ガスを大幅に抑制

合板の表にガスバリア層とガス吸着シート層を設け、今回新たに開発した特殊接着剤でクロスを張り付けます。ガスバリア層が合板から発生する有機酸などの有害ガスを遮断すると同時に、ガス吸着シートがビス穴やクロスから発生する有害ガスを吸着します。また、特殊接着剤は、有機酸などを発生しないだけでなく、透湿性がありガス吸着シートの呼吸を妨げることがないため、有害ガスの抑制効果が最大限に発揮されます。

比較実験では、従来工法で施工した展示ケース内は日ごとに有害ガスが蓄積して濃度が高まるのに対し、ピクチャープロテクトで施工した展示ケース内は日数が経過してもほとんど濃度の変化はなく、有害ガスが大幅に抑制されていることを確認しました。

展示ケース内の有機酸(酢酸・ギ酸)濃度の比較

工期を短縮

ピクチャープロテクトの施工に際しては、下地板となる合板にガスバリア層とガス吸着シートが接着された状態で工場から出荷されるため、現地での工程を増やすことなく従来と同様に施工でき、施工後もアンモニアや有機酸をほとんど発生しないため、枯らし期間を短縮できます。また、改修工事の場合は、厚さ6.5mmの薄い下地板を既存の壁にかぶせ張りすることで、より短工期で改修することも可能です。

優れた調湿性能

使用しているガス吸着シートには、吸着材以外に天然粘土系調湿材料がすき込まれており、優れた調湿性能を発揮します。周囲が高湿度の時は吸湿し、乾燥状態の時は逆に放湿するため、展示ケース内の湿度を一定に保ち、文化財の劣化を防ぎます。

ピクチャープロテクトは、2019年1月頃から内外テクノスにて販売する予定です。
今後、大林組は美術館や博物館の新築および改修工事に含まれる壁付展示ケースや独立展示ケース、展示台、展示パネルなどへのピクチャープロテクトの適用を積極的に提案し、貴重な文化財や歴史的資料の良好な保存環境を提供していきます。

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
お問い合わせフォーム

内外テクノス 東京商事事業部
TEL 03-5261-3415

プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。