無線加速度計とクラウドを活用した地震後の建物安全性判定支援システム「ポケレポ™」を開発

既存建物にも安価に設置でき、建物の継続利用可否をどこからでも確認可能です

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、株式会社中電シーティーアイ(本社:愛知県名古屋市、社長:内藤雄順)と共同で、無線加速度計(※1)とクラウドシステム(以下、クラウド)を活用した地震発生後の建物安全性判定支援システム「ポケレポ」を開発し、2018年11月から実際の建物で実証実験を開始しました。

「ポケレポ」の概要

大規模な地震が発生した際、居住者が建物にとどまることが可能かを判断し、余震による二次災害を防止するためには、建物の損傷具合を速やかに確認する必要があります。そのためには、内外装の脱落といった非構造部材の被害の有無を目視で確認する一方で、構造にかかる被害の有無は層間変形角(※2)を指標として確認することが一般的です。

層間変形角は、主に加速度計とデータ処理用PCを用いた観測システムにより地震時の加速度データから算出されます。その算出結果を構造設計に基づき観測システムに設定した安全段階(安全・注意・危険)ごとの基準値と照らし合わせることで、建物管理者が構造上の安全性を判断するための支援情報として利用可能となります。

BCPの観点から、このような観測システムを導入する建物は年々増加していますが、従来の観測システムは各階に設置した加速度計とPC間でデータ通信用の配線工事が必要となるため、システム導入費用が高額になることが課題でした。

今回、大林組と中電シーティーアイは、無線加速度計とクラウドを活用することで、建物内の配線工事やPC設置にかかる費用を削減し、より安価に導入できる地震発生後の建物安全性判定支援システム「ポケレポ」を開発しました。

「ポケレポ」は、加速度データを無線通信でクラウドへ送信することで、クラウド内で構造上の安全性判定支援情報を作成します。それらの情報は地震発生から直ちに建物管理者へ通知されるとともに、クラウド上でいつでも確認、利用することができます。また、配線工事が不要のため、新築建物に限らず既存建物への導入も容易です。

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無線加速度計

「ポケレポ」の特長は以下のとおりです。

配線工事が不要となり、初期導入コストを30%抑制

従来の観測システムでは各階に設置する加速度計とデータ処理用PCとのデータ通信環境構築のための配線工事が必要です。「ポケレポ」は無線加速度計とクラウドで構成されるため、配線工事やPCの設置が不要となり、初期導入コストを30階建て相当の超高層建物で約30%低減できます。

既存建物への導入が容易

従来の観測システムを導入する場合には配線工事が必要となり、既存建物内では設備の回避や仮撤去を伴うため、30階建て相当の超高層建物で2週間程度の作業時間を要します。一方、「ポケレポ」の導入にあたっては、新築・既存を問わず無線加速度計を設置し、通信状態を確認するだけで済むため、いずれでも1~2日で設置作業が完了します。

複数建物の一括管理が可能

「ポケレポ」は、地震直後に加速度データを無線通信によりクラウドへアップロードし、層間変形角を算出のうえ、安全段階ごとの基準値と比較することで安全性判定支援情報を作成します。建物管理者はこれらの情報をメールで受け取ることに加え、スマートフォンなどの端末でどこからでも情報を取得し利用することが可能です。そのため、建物管理者は、遠方にいても複数の建物の情報を一括で把握することができます。さらに、建物ごとの過去の地震観測記録がクラウド上に蓄積されるため、長期間にわたる当該建物の構造安全性を定量的に確認することが可能です。

層間変形角および建物安全性判定支援情報の結果確認画面

「ポケレポ」についてはシステム開発および基本性能の確認が完了し、2018年11月から東京都内の30階建て超高層建物と名古屋市内の10階建て免震建物において実証実験を開始しました。今回の実証実験では、無線加速度計を一定期間設置し、地震データを欠損なく、良好な精度で取得できるかを検証します。また、無線通信の安定性、利用者向け情報の有効性とシステムの操作性などの運用上の機能を確認し、2019年度中を目標に実用化をめざします。

大林組と中電シーティーアイは、実証実験により信頼性と実用性をより一層高めたうえで、「ポケレポ」を多くの建物へ積極的に提案し、安全安心な暮らしに貢献してまいります。

  • ※1 無線加速度計
    「ポケレポ」には、LORD社(本社:ノースカロライナ州)の無線加速度計を採用。販売代理店:東海エレクトロニクス株式会社
  • ※2 層間変形角
    建物各層に生じた変形量の差から算出される層間変位を当該層の高さで除した値。層間変位1cm、階高400cmであれば層間変形角は1/400

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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