AIによる構造物の振動制御技術を開発

強化学習を用いることで従来手法を上回る制振効果を確認

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、株式会社Laboro.AI(本社:東京都中央区、代表取締役CEO:椎橋徹夫)と共同で、AI技術の一つである強化学習(※1)をアクティブ・マスダンパー(AMD)(※2)に適用する手法を開発し、大林組技術研究所本館内のブリッジに設置されているAMDに試験適用して高い制振効果が得られることを確認しました。

(左)技術研究所本館内のブリッジ、(右)AMDの外観

ブリッジ中央部に設置しているAMDは、人の歩行による揺れを感知した際に、重りに上下方向の力を与えることでブリッジの揺れを抑える装置です。重りに与える力の大きさは、ブリッジの揺れ方に応じて最も揺れを抑えられるように、コンピューターが時々刻々センサーの値を用いて計算する制御則と呼ばれる計算方法で決定されます。従来は理論に基づき、制御則のパラメーターや制御手法を決定していましたが、現実には装置の能力やさまざまな揺れのパターンなどに合わせることができる最適な制御手法が明確になっていませんでした。

ブリッジに設置したAMDの模式図

今回、大林組はLaboro.AIと共同で、業界に先駆けてブリッジのAMDに強化学習を適用することで、装置の能力や実際の環境などに合わせて振動を制御することを可能としました。強化学習は従来の理論に基づく方法とは異なり、試行錯誤を重ねることで力の出し方を学習します。始めはランダムな力を出しますが、その中でブリッジの揺れが抑えられた場合の力の出し方を学習していくことで、徐々にブリッジの揺れを抑えることが可能となります。この試行錯誤はコンピューターで実際のブリッジの揺れをシミュレーションすることにより行いますが、シミュレーションの段階で装置の能力や実際の環境などを組み込んだうえで学習します。そのため、従来の理論に基づく方法を適用した場合よりも、より実際の環境に適応した力を出すことができるようになり、その結果、高い制振効果を得ることが可能となりました。

重りに与える力とブリッジの揺れ (左)学習前、(右)学習後

AMDなしの場合・従来の理論の場合・強化学習の場合それぞれについて、ブリッジの中央部で踵を持ち上げて下ろす踵加振と、ブリッジの端から端までを人が歩いて往復する歩行加振を行い、グラフにより比較した結果、踵加振・歩行加振いずれの場合においても、強化学習の結果が従来の理論による結果を上回ることを確認しました。

実験結果のグラフによる比較 (左)踵加振、(右)歩行加振

AMDは、建物の頂部に設置した重りを水平方向に力を与えて動かすことで、地震や風による高層建物の揺れを抑えることもできます。大林組は、今後、建物頂部のAMDに強化学習を適用するための開発も進めていき、将来の実用化をめざします。

 
  • ※1 強化学習
    理論によらず試行錯誤により最適な行動を学習することができる手法。囲碁や将棋などのゲームにおいて人間を上回る成績を出しているものも多く出てきているが、発展途上の分野であり、建設業界のみならず産業界における実用例はほとんどない
  • ※2 アクティブ・マスダンパー(AMD)
    対象構造物に取り付けた重りを能動的に動かすことで対象構造物の振動を低減する技術

以上

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