武蔵野音楽大学ベートーヴェンホール、南座が耐震改修優秀建築・貢献者表彰を受賞

サステナビリティ

2月18日、東海大学校友会館(東京都千代田区)で日本建築防災協会が主催する「2019年度(第9回)耐震改修優秀建築・貢献者表彰」の表彰式が開催され、大林組が改修工事を行った武蔵野音楽大学ベートーヴェンホール(東京都練馬区)と南座(京都市東山区)がそれぞれ日本建築防災協会理事長賞、耐震改修優秀建築賞を受賞しました。

この表彰は、耐震改修を実施した建築物のうち、特に耐震性、防災・安全性、意匠などに優れた建築物や、耐震改修技術の発展などに顕著に貢献した個人・団体に贈られるものです。

日本建築防災協会理事長賞・耐震改修優秀建築賞

武蔵野音楽大学ベートーヴェンホール(ホール棟・ロビー棟)

江古田キャンパスにある地下1階、地上4階建てのモダニズム建築。建物を特徴付ける外壁プレキャストブロックを残すため外壁裏側に耐震壁を設置

武蔵野音楽大学ベートーヴェンホールは、国内初の本格的な音楽ホールで、大林組の設計施工により1960年に建設されました。創建以来、音楽教育や式典の場として多くの学校関係者に愛されてきました。

今回の改修では、1984年に建物外側に施した鉄筋コンクリート製フレームによる耐震補強の性能をさらに高めるため、新たに耐震壁を増設しました。また、既存天井には、音響効果を保持しながらも地震時の落下を防止するため、つりワイヤーとネットによる独自の耐震補強対策を実施。変わらぬ音の響きと姿を残しています。

今回の受賞では、音楽ホールとしての機能性、安全性、バリアフリー性なども向上させたことや、キャンパスの大規模再整備において、歴史と伝統を残して改修する音楽ホールを中心に据えて計画されている点が高く評価されました。

音響設計の世界的パイオニア、永田穂(みのる)氏の設計による音楽ホールは音響工学的な見地から検討された日本の草分け的な存在。既存のモルタル天井を残したまま落下防止対策を行うことで変わらぬ響きを確保
  

耐震改修優秀建築賞

南座

京都の歴史的景観に溶け込む桃山風破風(はふ)造の外観を保存・復元することで建物の付加価値を高めています

南座は江戸時代に官許(かんきょ)された7つの櫓(やぐら)の一つで、唯一その場所に現存する最古の劇場です。現在の建物は、1929年に建設されたもので、1991年、大林組により内外装や設備の大改修を行いました。1996年には国の登録有形文化財、京都市の歴史的意匠建造物に指定されています。

今回の耐震改修では、外観を変えることなく、約200枚の鉄筋コンクリート耐震壁を建物全体に配置しました。既存躯体と新設耐震壁の接合面は超高圧水で目粗しして接合部の強度を高める「3Q-Joint工法」を採用しています。

大屋根の補強には、鉄骨やトラス部材、水平ブレースなどを追加しました。補強部材の製作には、建物を事前に計測した点群データ(※1)を活用し、BIMモデルを用いています。内部は舞台と客席をフラット化して一体で利用できる多様なニーズにも対応しています。

今回の受賞では、耐震改修を行うことで、伝統ある劇場の建物と機能を継承するとともに、優れた意匠性の保存、再生に寄与したことが高く評価されました。

客席背面の壁には耐震壁を設置。1,082の客席は1階席部分を取り外しができ、舞台とフラット化することで観客参加型の演出も可能

大林組は、これからも建築物の耐震性の向上に寄与することで、歴史的価値の保存、継承に努めるとともに、安全で安心して暮らせる街づくりに貢献していきます。

  • ※1 点群データ
    建物の外観、内部などを3Dレーザースキャナーによって計測した無数の3D座標点