高精度に自動制御するアンダーピニング統合管理システムを実用化しました

多数のジャッキを同時に操作し、仮受け構造物の変位を最適・迅速にコントロール

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、アンダーピニング工法に多変量解析(※1)を利用した変位直接制御(※2)という調整機能を取り入れ、既設構造物の位置を自動制御するシステムを開発し、実用化しました。

アンダーピニング工法は、既設構造物の下に鉄道や道路などの構造物を新たに建設する場合に、既設構造物へ影響を与えないよう、地中に設置した柱と仮受け構造物、ジャッキなどにより一時的に既設構造物を支える工法です。

アンダーピニング工法のイメージ図
既存の地下鉄駅ホームの下に道路などをつくる場合、軌道や駅ホームを仮受け構造物とジャッキで支え、現況に支障がでないようにするもの

近年の鉄道や道路工事は、既存の地下鉄や新幹線、主要駅ビルといった重要な都市インフラを供用しながら仮受けをする場合が増えており、大規模かつ高度化しています。また、工事の進捗に伴いジャッキを支える仮受け構造物が沈下、隆起することがあり、既設構造物に重大な損傷を与える場合もあります。そのため、重要な構造物の安全性を確保するためには、複数のジャッキ一つひとつを10分の1mm~数mmの範囲で高さ(変位量)調整するといった膨大かつ繊細な作業が常に必要となります。

従来のアンダーピニング工法の制御システムは、無線機などを使って人から人へ指令を伝達し、大勢の人がポンプや制御油分岐器などを手動調整することにより変位量を制御していました。一方、大規模なアンダーピニング工法では、数十~数百のジャッキで既設構造物を仮受けし、一つのジャッキを動かせばその影響から近隣のジャッキまで動いてしまうという相関関係にあることから、すべてのジャッキを同時に調整することは実質的に不可能でした。そのため、小さなグループ(部分)に分割し、部分的な調整を試行錯誤することによって全体を調整していましたが、人力による作業に多大な時間がかかり、指令の伝達や操作ミスなど人的リスクの大きいことが課題となっていました。

そこで大林組は、手動による調整や試行錯誤による方法を改め、専用の制御装置によりすべてのジャッキを自動制御するアンダーピニング統合管理システムを開発しました。変位量の調整量算定に多変量解析を採用し、個々のジャッキの制御を100分の1mmまで精度を高めました。

従来システムとアンダーピニング統合管理システムとの比較

アンダーピニング統合管理システムの特長は以下のとおりです。

既設構造物の安全性が向上

同システムの適用により既設構造物の変位制御の精度を高めるとともに人的ミスのリスクが大幅に低減され、極めて慎重な操作を要する構造物の安全性が向上しました。

大規模でも迅速な変位調整を実現

大規模構造物において多数の油圧ジャッキを用いる場合でも、専用の制御装置によって同期させることで正確かつ同時に自動制御するため、一度に多数のジャッキの変位調整を数秒~数十秒で行うことが可能です。

大林組は、アンダーピニング統合管理システムを幅広く導入し、建物やインフラ構築時の安全性と生産性の向上に貢献していきます。

  • ※1 多変量解析
    互いに関連する複数の要因から成る問題を、それらの要因の相関関係を表す関係式を作成して解決する方法。ここでは、ジャッキ同士の相関関係を論理的に計算しています。
    具体的な例として、海の家で1日当たりのビールの売り上げを予想するときに、「気温」「湿度」「日照時間」「風速」「波の高さ」「曜日」「価格」など複数の要因について、売り上げに対する影響力の大きさ(相関関係)を考慮しながら関係式を作成して算出する、という手法が挙げられます
  • ※2 変位直接制御
    従来は、「ジャッキの圧力」を調整しながら「既設構造物の変位量」を調整するという間接的な変位調整方法を用いていましたが、開発したシステムでは、調整したい位置の変位量を入力すれば、個々のジャッキがそれぞれ指定の高さになるように「変位量を直接制御する方式」を採用しました

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室 広報課
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