連装ガラスパーティションとして初めて「10分間防火設備」の大臣認定を取得

避難安全性と意匠性を両立しながら排煙設備や内装制限の緩和によるコストダウンを実現します

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、コクヨ株式会社(本社:東京都港区、社長:黒田英邦)と共同で、10分間の防火性能を有する連装ガラスパーティションを開発しました。

開発品(連装ガラスパーティション)

建物火災時の避難安全設計では、出火室から炎や煙が避難経路となる廊下などへ多量に漏れ出ることを防ぐ必要があります。そのため、これまでは排煙設備を設置して内装材を不燃化する対策(内装制限)が多く採用されていました。

しかし、近年の火災シミュレーション技術の向上により、居室と廊下の間の開口部(扉やガラスパーティション)を防火設備(※1)とする方が、低コストで廊下への漏煙量を低減できることが分かりました。

一方でオフィス空間の会議室などを中心に明るさや開放感を求めるため、ガラスの間に鋼製枠のない連装ガラスパーティションが好まれます。しかし、連装ガラスパーティションを防火設備とするには、加熱による面外変形を防止するために鋼製枠を1m~2m間隔で設置する必要があり、意匠性が劣り閉鎖的になるという課題がありました。

従来品(鋼製枠あり)

今回、開発した連装ガラスパーティションは、日本で初めて10分間防火設備(※2)の大臣認定(番号:EBN010-0001)(※3)を取得しました。直径約30mmの面外変形防止金具をガラス目地に1点ずつ設置することにより、避難安全性と意匠性を保ちつつ、避難安全検証法(※4)の適用により排煙設備や内装制限を緩和できます。また、鋼製枠取り付けやシーリング工事の削減にもつながるため、排煙設備や内装制限の対策を実施する場合に比べて、建築工事費の1~2%程度コストダウンを図ることができます。

従来品の加熱状況(面外方向へ変形し炎噴出)
開発品の加熱状況(変形なし)と変形防止金具

10分間の防火性能を有する連装ガラスパーティションの特長は以下のとおりです。

高い意匠性

ガラス間に鋼製の縦枠がないため、壁一面がガラスのような開放感を与えます。さらにガラス間目地のシーリングに高透明性の材料を使用することで、よりガラス面の連続性を高めることが可能です。

また、ガラス表面にドット柄やストライプ柄などのガラスフィルムを貼ることで、デザイン性が向上するとともに視線を柔らかく遮り、一般執務エリアから応接・役員エリアまで幅広く使用できます。

高い防火性能

直径約30mmの面外変形防止金具により、火炎が噴出する隙間の発生を抑止します。無対策では、300℃を超えると隙間が発生し始め、600℃の火炎にさらされると90mmほどの隙間が発生しますが、本開発品は600℃の火炎にさらされても隙間が発生しません。(図1)

高温の加熱に曝された場合の面外方向への隙間幅の測定結果

高い汎用性

厚さ70mm~130mmのコクヨ製不燃スチールパーティションと連結できるため、通常のオフィスレイアウトの中で自由に配置することが可能です。

大林組は今後、開発した連装ガラスパーティションを積極的に提案し、避難安全性と意匠性を兼ね備えた空間を提供していきます。また、防音性などの価値を付加した仕様の開発も進めていく予定です。

  • ※1 防火設備
    火災が起こった際に炎や煙が拡散することを防ぎ、避難経路を確保することを目的として建築基準法に規定された設備。防火扉や防火シャッター、耐火スクリーンなどが該当
  • ※2 10分間防火設備
    周囲で発生した火災に対して、10分間は加熱面以外の面に火炎を出さない性能を有しているものとして政令で定める技術的基準に適合するもの
  • ※3 10分間防火設備の大臣認定(番号:EBN010-0001)
    開口サイズ:幅1332mm~4450mm、高さ300mm~3200mm、ガラス枚数:4または5連装の仕様にて取得
  • ※4 避難安全検証法
    避難安全検証法とは、建物火災時の避難行動および煙・ガスの性状を予測し、避難経路の各部分において在館者の避難が終了するまでに煙やガスにより危険な状態にならないかを確認する手法。なお、10分間防火設備は、ルートB1では使うことができません
避難安全検証法の概要と10分間防火設備の適用可能範囲

―:制限なし
*1:現在の建築基準法のもとでの設計ルートは大きく3つに分けられる
ルートA:法規の仕様規定に従う方法
ルートB:告示に定められた方法に従って避難安全性に係る検討を行い、建築基準法の一部の規定の適用を緩和する方法。2021年5月の告示改正によりルートBに新しい検証方法が追加された。従来の煙の降下時間と在館者の避難時間を比較するルートB1、煙層の高さで判定するルートB2がある
ルートC:告示以外の独自な検証・予測手法で避難安全性に係る検討を行い、大臣認定を取得することで建築基準法の一部の規定の適用を緩和する方法
*2:病院などより高い安全性が求められる場合に設置可能
*3:大臣認定の取得が必要

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室 広報課
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