国内初、3Dプリンターで製作したプレキャスト部材を大型構造物で適用

砂浜を侵食から守る岩盤型潜水突堤の一部を3Dプリンターで製作しました

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、R3西湘海岸岩盤型潜水突堤整備工事(神奈川県中郡大磯町)において、新たに設置する潜水突堤の一部に、大型構造物としては国内で初めて、3Dプリンターで製作したプレキャスト(PCa)部材を適用(※1)しました。

3Dプリンターで製作したPCa部材の海中据え付け状況

神奈川県西部に位置する西湘海岸は、台風の影響で砂浜が大きく侵食し、護岸や擁壁の倒壊による近隣住宅地への影響が懸念されています。そのため、海岸保全施設整備事業として、安定的な砂浜の維持を目的とする潜水突堤の設置をR3西湘海岸岩盤型潜水突堤整備工事で行っています。

【潜水突堤完成イメージ図】

【3Dプリンターで製作したPCa部材】

  • 部材①

  • 部材②

  • 部材③

本工事において設置する潜水突堤は、幅約16m、長さ約42m、高さ約3~7mの大型構造物であり、その先端摺付部は3次元的に滑らかに変化する形状です。

先端摺付部は、既存の工法では多数のPCaパネルを必要とし、最大35.5tの超重量物となるため、施工の安全性や品質管理の面で課題がありました。

そこで、建設用3Dプリンターを用いて外殻をつくり、大林組が開発したスリムクリート(※2)を内部に充填(てん)する独自の工法によりPCaブロックを製作することで、施工の安全性と施工品質が向上しました。加えて、搬入や荷下ろし、組み立て作業の簡素化により、工期短縮と省人化も実現します。

潜水突堤の概要 出典:国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所HP
工法比較

本工事の特長は以下のとおりです。

先端部 PCaブロック 揚重時の重量を約50%削減し、安全性と施工品質の向上を実現

従来工法では1ブロックの最大重量が35.5tであったのに対し、本工法により1ブロックの最大重量は17.6tとなります。重量が約半分となることで、各ブロックの揚重は4点吊りが可能となり、既存の工法と比較して安全性と施工品質の向上を実現するとともに、隣接ブロックとの衝突による損傷リスクを低減します。

建設現場内での作業を削減することで、約60%の省人化と工期短縮を実現

既存の工法では、工場で製作したPCaパネルを搬入しますが、パーツが多く、搬入や荷下ろしに時間を要するうえ、海中への据え付け前に組み立て作業が必要となります。また、組み立て作業は天候に左右されるため、悪天候時には作業中断が発生します。

本工法は、工場で製作したPCaブロックを建設現場へ搬入し海中に据え付けるため、既存の工法と比較し、先端部ブロックの据え付けにかかる工期を15日から6日に短縮できます。その結果、作業人数が延べ96人から42人へ削減可能となり、工期短縮と省人化を実現します。

大林組は、複雑なデザインや強度・耐久性を備えた構造物を実現できるセメント系材料を用いた3Dプリンター建設の研究をさらに進め、今後も安全・安心なインフラの構築に貢献します。

  • ※1 国内初適用(自社調べ:2023年8月)
    「大型構造物(全長50m規模)への3Dプリンター製作部材の適用」として
  • ※2 スリムクリート
    大林組の保有技術である常温硬化型のモルタル材料で、圧縮強度180N/mm²、引張強度8.8N/mm²、曲げ強度32.6N/mm²を達成できる。さらに、引張強度や曲げ強度が高いだけでなく、高い引張靭性を有するため、単独でも構造体としての使用が可能な材料。スランプフローは260mm程度あり、自己充填性を有するため、3Dプリンター用特殊モルタルで製作した3次元曲面状の打ち込み型枠にも密実に充填できる

工事概要

工事名称 R3西湘海岸岩盤型潜水突堤整備工事
施工場所 神奈川県中郡大磯町国府新宿地先
発注者 国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所
設計者 株式会社建設技術研究所
工期 2021年10月15日~2024年3月29日

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室広報課
お問い合わせフォーム

プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。