地下水による漏水を短工期で未然に防ぐインナーシャット®工法を開発

技術・ソリューション

大林組はハセガワシート株式会社と共同で、短工期、省人化を実現しながら、地下水由来の湧水の浸入を確実に防ぐ、地下コンクリート躯体の防水工法「インナーシャット工法」を開発しました。

建設物の地下コンクリート躯体は、建設物を支える構造的な機能と同時に、外部から水の浸入を防ぐことが求められます。従来の防水対策では「地下外壁防水先やり工法(※1)」が一般的ですが、防水層の施工時の作業性が悪いことや、防水工事後に防水層が損傷しやすいことが課題となっていました。

さらに、汚水層などの耐薬品性を要する水槽を地下に設置する場合、水槽内をエポキシ樹脂などで厚くコーティングする必要があり、この施工は工程数が多く、工期・コストが高くなるほか、地下コンクリート躯体に浸入した地下水の水圧(背面水圧)や湿気により、膨れやはく離を生じやすいという問題がありました。

そこで、片面側に特殊な立体繊維を一体化させたエチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)系の防水シートにより、地下コンクリート躯体内側から専用のセメント系張り付け材で接着するインナーシャット工法を開発しました。

インナーシャット工法による防水層のイメージ

インナーシャット工法の特長は以下のとおりです。

背面水圧を受ける環境でも防水シートの膨れや剥がれが生じない

防水シートに一体化させた立体繊維がセメント系張り付け材へ絡みついて下地面に強固に接着することで、背面水圧による防水シートの膨れ、剥がれを防止します。また、防水シートの優れた伸び性により、コンクリート躯体の挙動やひび割れに対して追従し、はく離、破断が生じません。コンクリート躯体の挙動に追従できる防水工法としては、業界で初めての背面水圧に対応できる工法です。(※2)

特殊立体繊維一体型防水シート「Hi-SAT(ハイサット)ライナー」

作業環境を確保し、短工期、省力化を実現

地下コンクリート躯体内側から施工できるため、安定した作業環境が確保できるとともに、建物供用後の点検や補修も容易に行えます。また、主な工程は防水シート一層の張り付けのみであり、防水性のみを要する場合、最短1日で工事が完了します。さらに、防水シートに防食性があるため、防食性能を要する場合でも防水シート張り付けとシート接合部処理のみの最短2日で施工可能です。また、湿潤面に施工できるため、コンクリート下地の養生や乾燥を待たずに施工でき、躯体構築から防水・防食工事完了までの工期を短縮できます。

【施工手順例】

  • プライマー塗布

  • セメント系張付け材塗布

  • シート張付けおよび転圧

  • 接合部処理(防食用途の場合)

汚水槽への適用例

大林組は、地下水の浸入を未然に防ぐ、インナーシャット工法を積極的に提案し、短工期で優れた地下コンクリート空間を構築することで、高品質な建設物の提供に貢献していきます。

  • ※1 地下外壁防水先やり工法
    地下コンクリート躯体構築前の山留め面に防水材を施工し、その後コンクリートを打ち込んで防水材と一体化させる工法。地下コンクリート躯体構築後の地下外壁面に防水材を施工する「地下外壁防水後やり工法」と比較し、敷地に余裕のない建設物でも施工できるため、採用例が多い
  • ※2 業界で初めて背面水圧に対応できる工法
    コンクリート躯体の挙動に追従できる防水工法のうち、一定の厚さがあり、伸び性能を持つ防水材により施工する防水工法が対象(自社調べ)