建設現場の熱中症対策に、施工済みダクトを活用した仮設空調システムを構築

空調稼働前の屋内作業環境を改善し、技能労働者を熱中症から守る

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:佐藤俊美)は、建物建設現場における熱中症対策の一環として、施工済みダクトに大型仮設空調機を接続させた仮設空調システム「建設現場"涼人™(りょうじん)"プロジェクト」(※1)を構築し、7月上旬に東京都中央区日本橋のオフィスビル新築工事に適用しました。技能労働者の作業環境改善を目的に、完成建物の空調稼働前に全館空調を行う取り組みは建設業界初(※2)の試みとなります。

取り組み背景

2025年6月に改正労働安全衛生規則が施行され、職場における熱中症の重篤化を防止するため「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が事業者に義務付けられ、高温環境下での熱中症対策の強化が求められるようになりました。

建物の新築工事において、構造部分が組み上がり、外壁などが取り付けられた建物内部の環境は、外気から遮断された状態で日射の影響を受け、夏場は高温・多湿となり、屋内作業の熱中症リスクが高まります。

大林組は従前より建設作業における熱中症から守るため、ファン付き作業服や深部体温の上昇を検知・警告を発するリストバンド型デバイスの装備を現場入場の条件とするなど独自の作業ルールを設け、重篤化を防ぐための環境改善に取り組んでいます。しかしながら昨今の気候変動による猛暑日の増加を受け、高温多湿な作業環境では追加対策が必要と判断し、建物全体を空調により冷却するプロジェクトの試行を開始しました。

建設現場「涼人」プロジェクト(以下、本プロジェクト)の概要・特長

仕組み

地上に大型の仮設空調機(高圧ファン型モービルクーラー)を設置し、竣工後空調に用いるダクトに接続して各階へつなぎます。各階に設けた電動ダンパーで一定時間ごとに冷風供給エリアを切り替え、作業工程やエリアに応じて冷却を行います。今回試行する都内のオフィスビル新築工事では、作業フロアの空調を4台の仮設空調機で行いますが、仮設空調機の増設により、さらに大規模な建物にも適用可能です。

「涼人」プロジェクトの仕組み

導入効果

大林組では、WBGT値(※3)25以上または気温31℃以上になる建設現場において、連続作業を最大50分までとし、10分間の休憩を義務付けています。本プロジェクトは、猛暑日でも作業エリアの室温が28℃程度にすることを目標とし、建設技能者の身体負荷や熱中症リスクを軽減することができます。また、作業エリアを適温に保つことで、猛暑日であっても通常時同様の休憩頻度で作業を継続することが可能になります。

現場外観
ダクトで冷気を各フロアに供給

今後の展望

今後、大林組の設計施工プロジェクト提案において、発注者の理解を得ながら基本設計段階で、夏場の工事に本プロジェクト導入を盛り込み、来期以降は順次対応現場を増やしていきます。

大林組は、本プロジェクトをはじめとした熱中症対策を通じて、今後も安全・安心な作業環境の構築に取り組んでいきます。

  • ※1 商標登録出願中
  • ※2 自社調べ(2025年3月、建設現場における「仮設全館空調」として)
  • ※3 WBGT値(暑さ指数)
    熱中症を予防することを目的として、人間の熱バランスに影響の大きい「気温」「湿度」「輻射熱」の3つを取り入れた温度の指標。WBGT値は乾球温度計、湿球温度計、黒球温度計を使って計算されている

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組コーポレート・コミュニケーション室広報課
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