モルタル吹付けに適用可能な低炭素型モルタルを開発

脱炭素社会に対応し、CO2排出量を大幅に削減する環境配慮型吹付け技術を実現

技術・ソリューション

大林組は、日特建設と共同で、のり面工事などで用いられるモルタル吹付け工法に適用可能な低炭素型モルタルを開発しました。本技術は、材料の一部に産業副産物である高炉スラグ微粉末を使用することで、製造時のCO2排出量を大幅に削減しながら、従来と同等の性能や施工性を確保しています。環境負荷の低減と施工品質の両立を可能とするもので、土木分野での幅広い活用が期待されます。

黒い容器上に山状に積まれた白色の粉末
セメントの置き換えに使用する高炉スラグ微粉末
吹付作業により斜面へモルタルを施工する作業員
のり面へのモルタル吹付け状況

開発の背景

2050年カーボンニュートラルの実現に向け、建設分野においてもCO2排出量削減への対応が急務となっています。中でもモルタルの材料として用いられるセメントは、製造時に大量のCO2を排出し、建設工事全体の環境負荷低減に向けた大きな課題となっています。

一方、モルタルおよびコンクリートの吹付けは、土工事などで広く用いられている汎用性の高い工法であり、品質や性能、製造方法に関する基準が確立されていることから低炭素材料の適用や評価がしやすいという特徴があります。大林組は、こうした背景を踏まえ、セメント使用量を大幅に削減しつつ、従来と同等の性能を確保できる低炭素型吹付けモルタルを開発しました。

低炭素型モルタル吹付け工法の特長

セメント使用量の大幅削減によるCO2排出量低減

本技術では、モルタル吹付け工法に使用する普通ポルトランドセメントのうち75%を、産業副産物である高炉スラグ微粉末に置換しました。製造時に多くのCO2を排出するセメントを、産業副産物に置き換えることで、モルタル製造に伴うCO2排出量を約96.3kg/m³に抑え、従来比で約71%の削減を実現しました。

従来モルタル(1立方メートル当たり323.9kg)と低炭素型モルタル(1立方メートル当たり94.8kg)のCO2排出量比較。低炭素型モルタルは従来比で約71%削減している。
従来のモルタルと低炭素型モルタルのCO2排出量比較

従来と同等の性能を確保

高炉スラグ微粉末を高置換率で使用した場合、初期強度発現(必要な強度)が遅れ、吹付け工法への適用は難しくなるという課題があります。本技術では、特殊混和材の利用と配合の工夫により、現場練り方式および工場出荷方式のいずれにおいても、安定した品質を確保しました。さらに、吹付け施工に必要なワーカビリティ(施工時の扱いやすさ)を確保し、従来の吹付けモルタルと同等の強度・耐久性・施工性を実現しています。

■工場出荷方式において、プラント出荷から吹付けまでの時間を60分と想定した場合の流動性の実験結果

【テーブルフロー経時変化】

練混ぜ後の経過時間とテーブルフローの関係を示すグラフ。テーブルフローは練混ぜ直後の約165mmから60分後の約125mmまで低下し、60分後に吹付けに適したフロー値範囲に達している。

【室内試験テーブルフロー試験】

モルタルのフロー試験結果。円形に広がった試料の直径を定規で測定している様子
練り混ぜ直後(165×165mm)
円筒状のモルタル試料が形状を保った状態で置かれ、定規で大きさを測定している様子
練り混ぜ1時間後(124×125mm)

環境負荷低減に大きく貢献

モルタルおよびコンクリートによる吹付け工法は、年間約440万m²(平成13年度時点)施工されており、平均厚さ10cmとすると、年間約44万m³のモルタルが使用されています。仮にこれらをすべてを低炭素型モルタルに置き換えた場合、年間約7万t規模のCO2削減が可能となり、社会全体の環境負荷低減に大きく貢献します。

今後の展望

大林組は、2026年度内の実工事への適用を進めるとともに、発注者への積極的な提案を行っていきます。今後も、建設分野における脱炭素化を推進し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。