認定取得後もレイアウト変更できる避難安全の設計手法を開発

申請にかかる費用を半減。豊富なバリエーションで大阪ステーションシティに適用

技術・ソリューション

大林組は、超高層オフィスビルや大規模商業施設を対象に、設計時の大臣認定取得後も柔軟に室内のレイアウトを変更できる避難安全設計手法を開発し、適用件数を伸ばしています。

工事中の設計変更や完成後のレイアウト変更などを想定し、いくつかのバリエーションを「あらかじめの検討(※1)」に基づき大臣認定取得しておくことで、テナントへの柔軟な対応が可能になるとともに、変更による再認定が不要になります。

建物は建築基準法により、火災時の避難安全性を確保するために、階段までの歩行距離や出口幅、防火区画などの制限が用途や規模別に設けられています。

従来、超高層オフィスビルや大規模商業施設は、実際の空間の床面積や天井高さ、可燃物量などに基づいて避難安全性の評価を行い、大臣認定を取得します。
そのため、取得後に間仕切りなどの設計変更や改修が生じた場合は、再度大臣認定の取得が必要でした。

「あらかじめの検討」を行う本設計手法の適用により、設計変更の自由度が向上するとともに、再取得にかかる費用を50%、申請期間を60%削減できます。

今回、変更できるバリエーションを増やし、大阪ステーションシティ ノースゲートビルディングにおいて、頻繁な間仕切り変更が予想される部分の避難安全性の評価に適用しています。

大阪ステーションシティ ノースゲートビルディング

大阪ステーションシティ ノースゲートビルディングでは、将来の用途変更を想定し複数のバリエーションで大臣認定を取得しました
※写真クリックで詳細表示

本設計手法の特長は以下のとおりです。

  1. 大臣認定取得後も間仕切り壁や用途の変更に柔軟に対応できます
    • 間仕切り壁や用途の変更に伴う法不適合リスクやテナントの流動性を阻害する要因を事前に評価、確認できます。

    • バリエーションを増やすことで、より幅広い変更に対応できます。

    • テナントなどへの事前の説明が可能です。

    一つの大臣認定で対応が可能となるレイアウト変更例(オフィスビル)

    本設計手法の適用により一つの大臣認定で対応が可能となるレイアウト変更例(オフィスビル)


  2. 独自の設計式に基づく避難安全性評価です
    • 室形状や火災報知設備の設置状況を考慮して避難開始時間を予測します。

    • 避難開始の遅れが問題となる居室や商業施設の計画が可能です。

    • 大林組独自の設計式を用いて各種予測、評価を行います。

    • 他社設計案件にも対応可能です。

    煙流動シミュレーションの一例(ロ型の空間)

    煙流動シミュレーションの一例(ロ型の空間)


  3. 大臣認定取得に伴う費用を50%、期間を60%削減できます
    • 従来の設計手法を適用した場合、建物1棟当たりの認定取得回数は3回(全国平均3.3回/棟)と想定すると、検証費用は900万円(300万円/回とした場合)必要となります。
      それに対して、本設計手法を適用して認定再取得が不要となった場合、初期の検証費用は1.5倍の450万円、期間は1.2倍となりますが、認定取得は1回(初回のみ)となるため、費用、期間ともに大幅に削減されます。

    従来手法と本設計手法適用時の手続きの流れ

    従来手法と本設計手法適用時の手続きの流れ

大林組は、超高層オフィスビルや大規模商業施設を利用する人々の安全を守るとともに、建物所有者の多様なニーズにもお応えし資産価値を向上させる設計・施工技術を今後も提案していきます。

※1 あらかじめの検討
工学的手法に基づき、安全性が確かめられた空間形態を設計ルール(室用途、床面積、歩行距離、出口幅、内装の種類など)として示すことが可能