建設現場の資機材の運搬を省力化する「自動搬送システム」を開発・適用

水平搬送作業を3分の1に省力化し、生産性を向上

技術・ソリューション

大林組は、建設現場の資機材の搬送作業の省力化や物流を効率化する「自動搬送システム」を開発しました。

近年、建設業界では、作業員の労働環境の改善や、労働力の確保が課題となっており、作業の省力化・効率化による生産性の向上が必須となっています。特に、建設現場で資機材の運搬にかかる作業は、単純な繰り返し作業が主体にもかかわらず、多くの時間を占めるため、これらを自動化・省力化することは、生産性の向上に大きく貢献します。しかし、建設現場の搬送は日々、場所や物が変化するため、工場の生産ラインで実施されているようなライン化は望めません。

今回開発した自動搬送システムは、建設現場で使用する資機材に搬送先を明示したICタグ看板を置くだけで、潜り込み式AGV(Automated Guided Vehicle)台車が、自動で資機材を積み込み、目的位置に搬送します。搬送経路は磁気テープを床に貼り付けるだけで簡易に変更が可能です。

このたび東京都港区で建設中の環状第二号線新橋・虎ノ門地区第二種市街地再開発事業(東京都施行)Ⅲ街区において自動搬送システムを適用し、従来の搬送方式に比べ搬送作業を2分の1~3分の1程度に省力化できることを確認しました。

自動搬送システム構成イメージ

自動搬送システム構成イメージ

 

自動搬送システムの主な特長は以下のとおりです。

  1. 水平搬送作業を省力化

    自動搬送システムの搬送作業の様子
    (動画再生時間:48秒)

    従来の水平搬送では、作業員がチームを組み、台車を使って資機材の積み込み・移動・荷降ろしを行っていました。自動搬送システムは、これらの作業が自動化され、不要になります。AGV台車はオペレーター1人で操作可能であり、水平搬送作業を従来の2分の1~3分の1程度に省力化できます。

    また、移動機構には工場生産ラインで多数使用されている汎用AGVを採用しているため、作業効率の低下もせず、十分な安全性が確保されています。最高速度は毎分30mです。

  2. 建設現場の状況に合わせた柔軟な経路変更が可能

    タッチパネル(上) ICタグ看板を用いた制御(下)

    搬送経路は磁気テープを床に貼るだけで簡単に設定できるため、フレキシブルな運用が可能になります。また、台車本体のタッチパネルで、ICタグと搬送エリアの関連付けをするだけで、搬送先の設定が行えます。設定変更が容易に行えるため、当日の搬入内容により即座に搬送先のエリアの分け方を変更できます。

    また、自動搬送システムは、3通りの運転が可能です。(1)ICタグ看板による搬送先を指定する荷取り運転、(2)搬送先エリア内の資機材の移動・整理を完全自動で行う仕分け・整理運転、(3)電動パレットトラックとして磁気テープがない所で運転する手動運転です。用途によって、容易に使い分けが可能なため、建設現場の状況に応じて幅広く適用できます。

  3. 従来の作業環境でシステム導入が可能

    潜り込み式AGV台車の構成

    潜り込み式AGV台車の構成

    開発した潜り込み式AGV台車は、低床型ジャッキシステムを搭載しており、従来資材を置くために下地に敷き込む枕木をそのまま使えます。枕木に置いた資機材を、AGV台車から伸びたジャッキシステムによりフォークリフトの要領で持ち上げ、その下に台車が潜り込みます。

    潜り込み式としたことで、重量物の積載時もカウンターウエイトが不要で、本体重量を350kgと軽量化できました。このため、上層階でも床の補強なしに運用が可能で、汎用性の高いシステムです。積載荷重は1tであり、けん引時は2tの資機材まで対応できます。

今後は自動搬送システムを、繰り返し揚重が多い超高層建物の建設現場に加え、水平搬送距離が長くなる商業施設や工場に展開するとともに、エレベーターからの荷取りや狭い通路での小分け作業など機能追加による適用範囲の拡大を検討していきます。

大林組は、建設現場の生産性の向上およびコスト低減に向けた方策の一つとして、自動搬送システムの利用を推進していくともに、お客様の多様なニーズに応えることができる施工技術を追及してまいります。