宇宙ビジネスアイデアコンテストS-Booster2017の最終選考会が開催

慶應義塾大学、大林組などによるチームが審査員特別賞を受賞しました

最新情報

審査員特別賞を受賞した「力触覚技術を適用したロボットアームによる宇宙での作業の高機能化」

審査員特別賞を受賞した「力触覚技術を適用したロボットアームによる宇宙での作業の高機能化」

10月30日、内閣府と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が企画し、大林組や他の民間企業が協賛、協力している宇宙ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster 2017」(エス・ブースター 2017)の最終選考会が東京・六本木で開催され、慶應義塾大学助教である野崎貴裕氏と大林組職員などが共同で応募したアイデアが審査員特別賞を受賞しました。

また、協賛企業各社が選出するスポンサー賞のうち大林組が選出する大林賞については、日本大学教授である青木義男氏を代表とするチームが受賞しました。

祝辞を述べる松山内閣府特命担当大臣(宇宙政策担当)。宇宙飛行士の山崎直子氏(右端)が特別審査員として参加しました

祝辞を述べる松山内閣府特命担当大臣(宇宙政策担当)。宇宙飛行士の山崎直子氏(右端)が特別審査員として参加しました

最終選考会に出場した15件のアイデアの代表者と審査員、関係者

最終選考会に出場した15件のアイデアの代表者と審査員、関係者

「S-Booster 2017」は、宇宙に関する資産(通信、地球観測、有人宇宙活動、宇宙輸送などの技術やそこで取得したデータ、運用ノウハウなど)を利用したビジネスアイデアを発掘するコンテストです。

宇宙領域の開拓、資源探査といった宇宙開発にとどまらず、産業基盤や技術開発基盤を強化、拡大する目的も有しています。

アイデアの募集は2017年5月から7月まで行われ、大学教授や会社員、学生など幅広い層、分野から約300件の応募がありました。

応募の中から実現性、収益性、革新性、発展性のすべてが優れていると評価された15件が一次選考を突破。その後、15件の応募者は、研究者や企業経営者などの専門家から助言や指導などを受けながら、約3ヵ月にわたりアイデアをブラッシュアップしました。

最終選考会では各人が与えられた持ち時間の中でプレゼンテーションを行い、審査員8人による厳正な審査を経て、大賞1件、スポンサー賞4件、審査員特別賞2件が選出されました。

【審査員特別賞】
「力触覚技術を適用したロボットアームによる宇宙での作業の高機能化」
提案者:慶應義塾大学 野崎貴裕氏、大林組職員ほか

ロボットアームは、移動探査ロボットによる天体の地表調査や、宇宙ステーションと輸送船のドッキングなど、その活躍は多岐にわたります

ロボットアームは、移動探査ロボットによる天体の地表調査や、宇宙ステーションと輸送船のドッキングなど、その活躍は多岐にわたります

宇宙開発では、人が宇宙空間に出ることなく宇宙ステーションなどの船内から作業できるロボットアームが重要な役割を果たします。しかし、従来のロボットアームは力加減が難しく、接触時の衝撃から重大な事故を招く恐れがあります。

本事業は、離れた場所にある対象物にロボットアームが触った感覚(力触覚)を操縦者に伝達し、あたかも自分が触ったように感じる技術を利用します。

対象物の形状や硬さ、重さなどが操縦者に伝わることで、従来の技術ではできなかった複雑で高度な作業が可能となり、作業効率の向上や事故発生リスクの低減に貢献します。

【大林賞】
「宇宙テザー技術を使った宇宙環境計測と軌道遷移技術の開発」
提案者:日本大学 青木義男氏ほか

テザーに電流を流すことでデブリ(宇宙ゴミ)を引き寄せることができるため、デブリの回収システムとして活用することもできます

テザーに電流を流すことでデブリを引き寄せることができるため、デブリの回収システムとして活用することも可能です

宇宙テザー技術とは、複数の超小型衛星をテザーと呼ばれるケーブルでつなぎ、宇宙空間にクモの巣状の大規模構造物を構築するものです。

電磁波や放射線を高精度に計測する機能を持たせて、磁気嵐などによる通信や衛星の障害などへの予防措置を講じることが可能になります。広範囲にわたる地球観測やデブリ(宇宙ごみ)監視も可能で、これらによって通信システムや測位システムの信頼性や安定性向上に貢献します。

最終選考会には、「サステナブルな資源開発に向けた月面基地建設」を提案した大林組職員のチームも出場しました。月表面にある土壌や砂れきを外殻に利用した強固な地下基地を建設し、月内部にある水資源からロケットなどの動力になる水素や酸素を生成するなど、月面における活動拠点と動力源を確保することで、宇宙開拓を継続的に進められるようにするものです。

今回のコンテストは応募者やその他関係者の最終目的地ではなく、宇宙ビジネスを実現するためのきっかけに過ぎません。応募されたアイデアが近い将来花開き、日本の宇宙開発や産業、技術の飛躍的な発展に結び付くことを期待し、大林組はこれからも応援していきます。