病院の改修・解体工事におけるカビ感染症対策技術「アスペルバスター™」を開発

工事着手前に除菌してアスペルギルス菌飛散リスクを大幅に低減させます

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、病院の改修・解体工事の着手前に、天井裏に生息しカビ感染症の原因となるアスペルギルス菌を低コストかつ短時間で除菌し、工事範囲外への飛散リスクを大幅に低減させる技術「アスペルバスター」を開発しました。

アスペルギルス菌は、もともとは土壌などの環境中に広く生息するカビですが、たくさんの胞子を放出するため、埃(ほこり)などを媒介して空気中にも浮遊しています。健康な人がアスペルギルス菌を吸い込んでも問題になることはほとんどありませんが、免疫力の低下した人が吸い込むと、アスペルギルス症(※1)という重篤な肺炎を発症することがあります。

特に、建物の改修・解体工事では大量の粉じんが発生するため、病気などにより免疫力の低下した人が多く利用する病院では、患者がアスペルギルス症を発症しないよう適切な対策が必要となります。従来から、改修・解体箇所を密閉し、陰圧制御するなどして工事範囲外へ粉じんが飛散しないよう管理していますが、近年、さらなる飛散リスクの低減を求められる場合があります。

大林組は、他社に先駆けてDNA解析技術を導入してアスペルギルス菌の所在調査を行い、これまで詳細な生息場所を把握できていなかったアスペルギルス菌が、天井裏に蓄積している埃に多く含まれていることを突き止めました。アスペルバスターは、病院の改修・解体工事の着手前に天井裏を除菌することで工事範囲外へのアスペルギルス菌の飛散リスクを大幅に低減させる業界初のアスペルギルス症対策技術です。

すでに藤田保健衛生大学病院の改修工事に本技術を適用し、高い評価を得ています。

アスペルバスターの特長は以下のとおりです。

アスペルギルス菌の飛散リスクを大幅に低減させます

アスペルバスターは、改修・解体工事の着手前に天井裏に薬剤を噴霧することでアスペルギルス菌を90%以上除菌でき、改修などに伴う同菌の飛散リスクを大幅に低減させます。従来の密閉・陰圧制御などによる粉じんの飛散抑制手法と併用することで、さらに高い効果を発揮します。

マルチミスト®を使い最小限のコストで安全に天井裏を除菌します

マルチミストは、微細な薬剤ミストを噴射し、表面を濡らすことなく設備の背面まで薬剤を拡散させて除菌する大林組の開発技術で、アスペルバスターにも本技術を活用しています。

天井裏を最小限の噴霧量でくまなく除菌できるうえ、薬剤には食品添加物として指定されている次亜塩素酸水溶液を適切な管理のもと使用しているため、病院利用者だけでなく工事作業者にとっても安全です。

アスペルバスターの設備は、薬液タンク、コンプレッサー、噴霧ノズルといった小型なものだけで、可搬型カートと一体化しているため、施設内での移動や対策準備が容易です。カートを固定して伸縮・旋回が可能な噴霧ノズルを天井裏まで伸ばし、暗視カメラで天井裏の障害物を確認しながらノズルの高さや噴霧方向を遠隔操作できるため、安全かつ短時間(1室当たり噴霧時間:15分~45分)で効率的に除菌できます。

除菌費用は、建物の条件によりますが、1m²当たり100円から数百円と低コストです。事前に天井裏の埃のサンプルを採取して調査し、アスペルギルス菌の生息場所に応じて除菌範囲を絞り込むことで、さらなるコストダウンも可能です。

アスペルバスターの施工状況
天井裏での噴霧ノズル設置状況

病院建設プロジェクトでは、既存建物の改修・解体工事を伴う場合が多く、免疫力の低下した患者を感染から守るために、発注者からの要求事項としてアスペルギルス症への対策を求められることが、今後増えると予想されます。大林組は、今後病院の改修・解体工事においてアスペルバスターを積極的に提案して、病院関係者の安全・安心へのニーズに応えてまいります。

また、米国では病院工事における感染管理リスクアセスメント(ICRA:Infection Control Risk Assessment)(※2)の普及が進んでおり、日本においてもICRAへの関心が高まりつつあります。ICRAを実施する病院に対し、感染制御対策を支援する技術としてアスペルバスターを提案し、感染リスクの低減に貢献してまいります。

  • ※1 アスペルギルス症
    健康な人がアスペルギルス菌の胞子を吸い込んでも繊毛運動などで排出されるか、生体に備わった防御機構で処理されるが、免疫力の低下した人が吸い込むと、胞子が発芽して肺内に菌糸を伸ばし、肺炎をはじめとした深部臓器感染症を引き起こし、時には致死性感染症に至ることがある
  • ※2 病院工事における感染管理リスクアセスメント(ICRA:Infection Control Risk Assessment)
    工事の内容とその規模から4段階の建設作業に分類するとともに、患者の重症度に応じて4段階のリスクグループに分類。工事内容と患者のリスクの関係性から感染リスクの大きさを評価し、その評価に基づいた感染制御対策を実施する

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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