ハイブリッド地下工法
早く効率的に建てる
タワー足元には、出発ロビーや店舗となる周辺低層棟、駐車場と機械室が入る地下階が敷地一杯にあります。これらの地下階、周辺低層棟はいつ、どのように造られるのでしょうか?

【世界一のタワーを効率的につくるため2つの方法をドッキング】順打ち、逆打ち混合の「ハイブリッド地下工法」
通常、鉄筋コンクリート造が主体となる地下躯体の施工法は、その施工手順によって順打ち工法と逆打ち工法の2種類に大別されます。タワーの工事では地下階全体を逆打ち工法で行いながら、タワーの塔体は順打ち工法で優先的につくります。
地下部分は約100m×90mと掘削面積が大きく、タワー構築の作業床として1階床を使用できる逆打ち工法が適しています。しかし、それによってタワーの足元(鼎)部分の工事を止めるわけにいきません。やはり、一番時間のかかる足元(鼎)部分の施工を最優先する必要があります。

また、タワーの足元(鼎)は複数の杭で1本の大きな鋼管柱を支えており、その接続部分は地盤面から10m以上掘り下げたところにあります。そのため、タワーの柱を逆打ち支柱としてあらかじめ地中に埋込んでおくことは難しく、タワーの三本足(鼎)は順打ち工法とせざるを得ません。

そこで、タワー足元部分は両工法の長所を組み合わせた効率的な方法として、タワーの三本足(鼎)を「順打ち工法」で、合間をぬって周辺低層棟を「逆打ち工法」で構築する混合工法「ハイブリッド地下工法」で構築しています。
さらに組み立て基地「重層ヤード」で一工夫
通常、高層建物に付属する周辺の低層棟は高層棟ができてから構築します。なぜなら高層棟の構築には、 タワークレーンで吊り上げる材料を準備する作業スペース(荷さばきヤード)が高層棟周囲の地上部分に必要になるからで、そこに低層棟をつくってしまうと邪魔になるからです。
ところが今回は逆転の発想で、限られた敷地を有効に使うため周辺低層部を先に造り、1階は車両通路や地下工事の作業スペースとして、4階は1階から運んだ資材を組み立てる地上工事用の荷さばきヤードとして活用します。
この周辺低層棟の「重層ヤード」を基地にして、タワーの工事は上へ上へと、そして地下は下へ下へと、同時並行でつくることにより東京スカイツリーを効果的に早くつくることができるのです。

施工順序
3つの工法を組み合わせて効率的に施工
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① タワーを支えるナックル・ウォールや連壁杭を構築
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② 低層棟の場所打ち杭を構築しながら、逆打ちのために逆打支柱を埋込む
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③ 掘削のための山留壁を地下外周部と順打ちするタワーの3本足(鼎)の周りに構築
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④ 鼎の順打ち用の掘削開始
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⑤ 鼎の作業の邪魔にならないように、逆打ちで周辺低層部の1階床を構築
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⑥ 構築された1階床上から鼎の工事を継続
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⑦ 鼎の作業の邪魔にならないように、周辺低層部を4階まで細分化して構築
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⑧ 中央部鉄骨の5階上にタワークレーンを設置
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⑨ 4階床、1階床のヤードを整備し、タワー塔体の地上部を繰返し積み上げる
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⑩ 並行して、地下1階全面を逆打ちで下へ下へと進め、全体として効率的な手順を実現
本ページの内容は、2012年に完成した
東京スカイツリー建設中に公開した情報です。