特別仕様タワークレーン
タワー塔体の鉄骨組立に絶対欠かせないのがクレーン。機械技術の進歩からコンパクトでパワフルなクレーンが生まれ、それをベースにカスタマイズすることで、作業に1番適したクレーンをオーダーメイドして効率を高めます。クレーンはまさにタワー建設の命です。
公開!これが特別使用のクレーン

どれだけの吊能力を、何基、どのように置くのかが決め手
自分で組上げた塔体に自らよじ登るフロアークライミングで、常に最上部に位置するクレーン。クレーンは真っ直ぐにしか登ることができないので、高くなるにしたがって細くなるタワー塔体では、中心部を貫き太さが最後まで変わらないエレベーターシャフトのすぐ外側にしか、クレーンを配置することができません。
吊能力
1回に30t以上を吊り上げる能力→720tm(※1)級以上のクレーン
断面が大きく重量の大きい塔体鉄骨は、道路運搬の規制上、1ピース約30t程度で搬入されるため、これをそのまま吊り上げる能力が必要です。
- ※1 ジブの作業半径×荷重。32tを吊る場合は22.5mの作業半径となる。
何基
できるだけ多く→3基
高さが高くなると揚重に時間がかかります(吊荷30tの場合の巻き上げ速度は約30m/分で、300m以上吊上げるには、10分以上の時間が必要)。揚重回数がそのまま、塔体組立ての効率となるため、最低でも3基設置が必要です。
どのように
クレーンが旋回できる間隔をあける→コンパクトな新型クレーン(JCC-V720)
3基設置の場合、クレーン同士の間隔を最大としても、旋回芯間隔で約20mの距離しかとれません。旧来型のクレーンでは、後部旋回半径が12m弱あり、20mの間隔では、クレーンが回転したときに後部同士が衝突してしまいます。一方、新型クレーン(JCC-V720)は後部旋回半径が8.1mなので、クレーンとクレーンの間にクリアランスがあり配置が可能です


今までのクレーンでは作業ヤードに届かない
第一展望台(357m)まで→高揚程にチューンアップ
今まで日本には300mを超えるビルは存在しなかったため、現行の仕様の機種では、300m分を吊り上げるワイヤーしか装備していませんでした。


巻上ワイヤーの巻上装置、ドラムを特殊仕様とし、420mの揚程にチューンアップ。375mの第1展望台までの建て方に対応できるようにしました。
- 第一展望台まで・・・
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- 3基のクレーンで荷揚げと組み立て
- フロアークライミング方式
- 作業ヤードは地上
第一展望台から上部(375m以上)→クレーン中継作戦
- 一台のクレーンで長い距離を吊り上げるのは時間がかかり非効率
- 第一展望台より上部は、塔体が更にすぼまり、クレーンを載せるスペースがない
- 第一展望台から上部
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- 荷上げ専用機と建て方専用機のペアで中継作戦
- クレーンを一基追加しペアを2セット
- 全てのクレーンを張出した展望台の上に組み直す
- 建て方専用機はマストクライミング方式
- 作業ヤードは第一展望台屋上

未知の高さに備える安全対策
暴風や地震など、未知の環境でのクレーンの安全対策を検討し、11項目の特別仕様を搭載しています。
地震・暴風への対応→マストの強度を25%アップ
労働安全衛生法に基づくクレーン構造規格により、クレーンの暴風や地震に対する強度が定められています。しかし、最上部に搭載したクレーンは、法で定められた以上の力がかかることが考えられます。そこで解析により検証を行いました。
地震応答解析(シミュレーション)
タワー塔体とクレーンをモデル化した連成解析モデルに地震動波形を入力して検討

風洞実験
クレーンの様々な姿勢に、様々な風向きを組み合わせてクレーンに作用する力を把握しました。

結果、マストの強度を25%アップすることとしました。

その他安全対策
上記の他にも、落雷時の精密機器のバックアップシステム、巻上げワイヤー電磁ブレーキ故障に対する二重バックアップブレーキシステムなどの安全対策を実施しています。
本ページの内容は、2012年に完成した
東京スカイツリー建設中に公開した情報です。