洋上風車の基礎およびアンカーに適用する「スカートサクション」を開発

これから本格化する洋上風車の建設にコスト・工期で貢献します

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、洋上風車の基礎およびアンカーに適用する海洋構造物「スカートサクション」を開発しました。

洋上風力発電は、2014年度から固定価格買い取り制度(FIT)にて買い取り価格が新規設定されたことを契機に、今後、普及拡大が見込まれています。洋上風力発電に使用する風車の構造形式は、風車の支柱が海底まで到達している着床式と風車自体が海洋に浮いている浮体式とに分別され、着床式は比較的水深が浅い場合に適しており、浮体式は水深が深い場合に適しています。

着床式にはモノパイル、ジャケット、重力式などさまざまな方式の基礎が用いられていますが、洋上風車の大型化や設置場所の水深が深くなるにつれ、基礎が大型化しコストがかかることが課題です。一方、浮体式にはセミサブ型、スパー型、TLP(テンション・レグ・プラットフォーム)型などさまざまな型式があり、急に水深が深くなる海域が多い日本において、今後の導入が予測されていますが、現段階では着床式に比べ設置コストが高くなると見込まれています。

着床式と浮体式の例

そこで大林組は、着床式の基礎や浮体式のアンカーを、従来に比べ高性能かつ低コストで実現するスカートサクションを開発しました。スカートサクションは、頂版および頂版から下方に伸びた円筒形の鉛直壁(スカート)で構成されており、スカートを海底地盤に貫入させることで、従来の基礎やアンカーに比べ洋上風車を強固に固定します。また、海底地盤への設置の際、大型の機械などは不要で、従来に比べ大幅な工期短縮を可能にします。

スカートサクションを適用した洋上風車の主な特長は以下のとおりです。

  1. 従来の基礎に比べ、約3倍の引き抜き抵抗がある(海域の実験で実証)

    洋上風車の基礎やアンカーには、風や波浪によって大きな引き抜き荷重が作用するため、海底地盤から十分な引き抜き抵抗を得る必要があります。スカートサクションは引き抜き荷重が作用した際、受働サクション(スカート内への水の流入が遅いためスカート内が静水圧(※1)以下となること)によって引き抜き抵抗が増大します。この引き抜き抵抗の増大は、粘土地盤では既に実証されていましたが、日本の周辺海域に多い砂地盤では未解明であったため、大林組は砂地盤の海域で形状の異なる2種類の実大試験体で実験を行いました。その結果、暴風時など荒天下で作用する引き抜き荷重に対しても受働サクションが発生し、自重と摩擦抵抗で抵抗する通常の基礎(着床式)に対しては約3倍、自重だけで抵抗するアンカー(浮体式)に対しては約5~8倍の引き抜き抵抗があることを実証しました。

    スカートサクションの貫入時、引き抜き荷重作用時の挙動

    スカートサクションの貫入時、引き抜き荷重作用時の挙動


  2. 大型の杭打ち機を使わないため、着床式洋上風車の基礎工事のコストを大幅に低減

    海底へのスカートサクションの設置は、打設(打ち込み)ではなく、スカート内からの排水によって発生するサクション(スカート内が静水圧以下になること)を利用して貫入させます。着床式であるモノパイルやジャケットの杭を打設する際に用いる大型の機械が不要となるため、無振動・無騒音で基礎の施工が可能になり、着床式洋上風車の基礎工事のコストを約20%削減できます。また、工期も約40%短縮できます。


  3. 浮体式洋上風車のコストを低減

    浮体式洋上風車のアンカーにスカートサクションを適用することで設置コストを削減することが可能です。特に、TLP型は、洋上風車を垂直に緊張係留(浮体構造物を余剰浮力により生じる緊張力を利用して海底地盤に固定)しているので、他の型式に比べて海域の専有面積が小さく、(1)海域の生物への影響を抑えられる、(2)係留材が少量ですむ、(3)洋上風車の動揺が小さいので発電効率が高くなるなどのメリットがある反面、他の型式に比べて大型のアンカーが必要となり、設置コストが増大するというデメリットがあります。TLP型にスカートサクションを適用すれば、従来のアンカー(コンクリート製の重力式アンカー)に比べて使用材料が減ることから、洋上風車本体のコストを約20%削減できると同時に洋上風車の基礎工事にかかるコストも約30%削減でき、最小のコストで、高効率かつ環境負荷の少ない洋上風力発電を実現することが可能です。また、アンカー設置時の資機材運搬が容易になるというメリットもあり、工期を従来の半分に短縮できます。

    スカートサクションを適用した洋上風車の事例

    スカートサクションを適用した洋上風車の事例

大林組は、これから本格化する洋上風車の建設において、スカートサクションの適用を積極的に提案し、コストと工期の両面で貢献していきます。

実験に用いた実物大のスカートサクション試験体

実験に用いた実物大のスカートサクション試験体

  • ※1 静水圧
    静止している水の中で働く圧力。スカートサクションは、引き抜き荷重が作用した際にスカート内外の水圧差で抵抗します

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
TEL 03-5769-1014

プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。