既存トンネルの覆工背面空隙を低価格で修復する「スペースパック工法」の長距離圧送性能を実証

一液性可塑状グラウトで500mの圧送を確実に行います

プレスリリース

大林組は、既存トンネルの覆工背面空隙を低価格で補修する「スペースパック工法」で、粘性が高いため従来長距離の圧送が困難と予想されていた1液性可塑状グラウトの高い圧送性能を実証しました。500mの圧送を確実に行うことが確認できたことで、トンネル内の長距離にわたる補修工事に積極的に提案していきます。

トンネルの補修では、覆工背面に空隙がある場合に注入材料を充填することで、覆工に局部的に不均等な荷重がかかることを防ぎ、覆工コンクリートの変状と地山の安定を確保する工法が用いられます。トンネル覆工コンクリートの背面空隙や地下空洞等の裏込めに従来用いられてきた発泡モルタルは、流動性が高いため地山や目地へ材料が漏洩することがあり、水に対する分離抵抗性が高くありません。また、湧水下で使用される有機系発泡材料は材料費が高価なため、最近では、水に希釈されにくく、圧送を停止すると自立する特性があり、所定の範囲に限定的に注入可能な可塑状グラウトの使用が増えています。
可塑状グラウトは非常に粘性が高くポンプ圧送が困難なため、長距離でも圧送できるようにセメント系材料と可塑材を別々にポンプ圧送し、圧送管先端で混合する2液方式が多く採用されていますが、圧送等の機械が2セットと先端には混合ユニットが必要なため、コスト面で課題がありました。大林組が開発した「スペースパック工法」は、全材料を練り混ぜた1液性グラウトを1台のポンプで圧送する裏込め注入工法です。本工法は、モルタルを運搬してきたトラックアジテータ車に特殊増粘材スラリーを投入・混合することにより容易に注入材を製造し、材料および機械の数が少なく、高価な材料や特殊機械を使用しない低価格注入工法です。しかし、1液性グラウトのため品質管理が容易である反面、ポンプ圧送の信頼性に課題がありました。

大林組では、東京機械工場で圧送実証実験を行い、500mの圧送が確実に行えることを実証しました。トンネル覆工コンクリート等の注入では、通常2インチの注入管を使用しますが、本実験では、2インチよりも圧送抵抗の小さい3インチの圧送管で500m圧送し、先端部で2インチとする圧送方式としました。また、硬練り・軟練りの2種類の配合について実験を行いました。その結果、500mの長距離でも圧送による材料の性状変化が小さく、充分な性能を確保することを確認しました。
これまでの圧送実績は200mで、トンネル延長が長い場合や注入範囲が広い場合には、プラントを設置できる場所に制限がありましたが、今回の実験により、長距離の圧送性能が確認できたので、注入箇所から離れたトンネルの外などの場所にプラントを設置することが可能となりました。トンネル内の機械数を減らしたり、圧送設備の準備や撤去に要する時間を短縮することができるだけでなく、道路トンネルでは、車線規制長の短縮にもなります。さらに、狭隘や急勾配なため、車両が進入・設置できない場所の地下空洞の注入も可能です。

「スペースパック工法」の特長は次のとおりです。
  1. 特殊な材料を一切使用しない(セメント、砂、特殊増粘材、遅延剤のみ)ため低コストです。
     
  2. 生コン工場から出荷されたモルタルに特殊増粘材を投入し、トラックアジテータ車により混合する場所を選ばないシンプルな製造システムなので、製造後の注入材の運搬も容易です。
    また、現地での注入材の製造も可能です。
     
  3. 道路トンネルの場合では、トラックアジテータ車により注入箇所まで運搬可能で、注入現場の主な施工設備は、一般のモルタルポンプと高所作業車だけです。
     
  4. 鉄道トンネルの場合でも長時間の運搬あるいは長距離圧送が可能で、トンネル坑口付近や坑内の施工設備を最小限にすることができます。500mまでの圧送は、今回の実験により施工性と品質を実証しました。
     
  5. 注入材料の物性は、密度が1.3~1.5ton/m³程度で、モルタルフロー値が180mm(流動性保持時間は遅延剤により長時間も可能)、材齢28日の圧縮強度が2N/mm²以上です。
     
  6. 夏期の使用でも、遅延剤を使用することにより性状の保持が可能で、遅延剤の増量による品質の低下はありません。

今後、大林組は、今回得られた実験データをベースに、様々な施工条件に対応できることを積極的に提案していきます。トンネルのリニューアル工事に採用することで、構造物の耐久性・安定性の向上を図っていきます。

以上

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大林組 東京本社 広報室企画課
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