石垣修復工事に関する様々なデータをWeb-GISで管理する新システムを開発、実用化

事前調査から施工、維持管理までの情報を一元管理し、文化財保護に貢献します

プレスリリース

大林組は、貴重な文化財である石垣の修復工事において、事前調査の段階から、計画、施工、その後の維持管理までの情報を一元管理できる「石垣保全情報管理システム」を開発し、初めて実用化しました。Web-GIS(地理情報システム)を活用しているので、平面図や立面図とリンクさせてわかりやすく情報を管理できます。
このシステムは、特別史跡である旧江戸城(皇居)内の梅林坂~汐見坂間石垣修復工事に適用し、築造から約350年が経過した石垣の情報管理に役立てています。

通常、文化財である城郭などの石垣を修復するには、修復前の状況や、施工中の状況を記録し保存することが求められるため、調査・計画段階から施工に至るまでの情報や、膨大な量の石材のデータ管理が必要になります。現状では、目視で点検したり、台帳を作成して管理する方法が主流となっているため、膨大な数の石材のデータや石垣の情報を効率的にわかりやすく記録する方法が求められていました。
また、重要な文化遺産である石垣を適正に管理していくため、修復の際に作成したデータを施工後の維持管理にも活用することが必要とされており、システムに入力した様々な情報を、修復工事の段階だけでなく維持管理にまで活用できるシステムの開発が求められていました。

このたび開発した「石垣保全情報管理システム」は、Web-GISを用いて石垣の情報を管理する初めてのシステムです。これまでは、石垣の立面図と個々の石材の情報とは別途に作成しており、これらを見比べながら作業を行っていましたが、このシステムでは、Web-GISを活用しているので、パソコンの画面に表示した平面図や立面図と石垣や石材の情報を関連付けて記録することができます。また、平面図や立面図と石材の情報がリンクしているので、登録したデータをビジュアルでわかりやすく編集、閲覧、検索が可能で、このデータを維持管理の段階にも活用できます。さらに、システムを活用するために専用のアプリケーションソフトを導入する必要はなく、発注者、設計者、施工者などの関係者は、インターネットを利用できる環境にあれば、ユーザー名とパスワードを入力するだけで、どこにいても利用することができます。

今回開発した「石垣保全情報管理システム」の特長は以下の通りです。
  1. 膨大な石垣の情報をわかりやすく管理

    Web-GISを活用しているので、数千にものぼる石材の情報等を、平面図や立面図とリンクさせてわかりやすく管理することができます。


  2. 修復工事の初期段階から一元管理

    石垣の修復工事の調査、計画段階から施工中の情報まで一元管理できるシステムです。
    調査〈光波測量、レーザースキャナ測量、写真測量、地質調査、地中レーダー探査など〉、診断〈安定度調査表、地震時応答解析〉、設計〈設計検討、設計図書〉、施工〈施工時の調査〉、施工図、施工状況写真、維持管理などの情報を入力することができます。
    また、修復工事が広域にわたって点在する場合、エリア内の修復工事ごとに情報の登録・管理ができます。GISの活用により保全管理エリア全域図上で視覚的に一元管理が可能で、施工後にもこの情報を活用できるため、重要な文化遺産の維持管理に有効です。


  3. 関係者間での情報共有と関係者はどこからでも利用可能

    専用のアプリケーションソフトを必要とせず、インターネットを使用できる状況であれば、Web上からユーザー名とパスワードを入力するだけで、どこにいてもこのシステムを利用することが可能です。したがって、発注者、設計者、施工者、協力会社などの関係者間での情報の共有化に有効です。

今後大林組は、貴重な文化遺産である石垣などを保全するため、城郭石垣の修復保全に関する情報を一元管理できるこのシステムを積極的に提案していきます。
大林組ではこのシステムを、皇居内にある梅林坂~汐見坂間の石垣修復工事で初めて適用しています。旧江戸城の石垣は、国の「特別史跡」に指定されており、多くの人々が見学に訪れる貴重な文化遺産です。今回修復している石垣は、江戸時代初期に築かれたもので、約350年が経過し老朽化しているため解体したうえで積み直します。石垣の石は約5000個あります。このうち3200個以上の石を取り外しており、これらの石の大きさ、形状、加工度、ノミ加工・刻印・墨・朱書の有無、などの情報はすべてこのシステムに記録しています。

【工事概要】
  工事名称 :皇居内梅林坂・汐見坂間 石垣修復工事
  場  所 :東京都千代田区
  発注・監理:宮内庁管理部工務課
  工事概要 :石垣全面修復および石垣上部樹木修景
         /延長約130m、地上高さ約10m
  工  期 :2002年7月~2005年3月

以上

■この件に関するお問い合わせ先
大林組 東京本社 広報室 企画・報道・IRグループ
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