広報誌『季刊大林』53号(特集:タワー)を発行

地球と宇宙をつなぐ10万kmのタワー「宇宙エレベーター」建設構想を発表

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、このたび、広報誌『季刊大林』53号「タワー」を発行しました。

季刊大林 53号(特集:タワー)

『季刊大林』では、建設という視点を通して、現代の社会における問題や現象をひもといていきます。本号では「タワー」をテーマとし、ヒトが天空をめざすようになった根源を探るとともに、タワーの持つ潜在力をあらゆる角度から紹介しています。

加えて、大林組の技術陣による誌上構想「大林組プロジェクト」においては、天まで届くタワー「宇宙エレベーター」の建設計画に挑戦しています。

大林組では今後とも、建設にまつわる文化を考察する『季刊大林』の発行を社会貢献活動の一環と位置付け、環境、情報、防災など現代社会において重要なテーマを積極的に取り上げていく予定です。

『季刊大林』と「大林組プロジェクト」について

『季刊大林』は、1978年6月発刊の創刊号「ピラミッド」から現在に至るまで、建設という視点を通して人類が築き上げた文明、文化を考証し、また未来社会のあり方を模索する広報誌をめざしてきました。
その間、国内外の数多くの研究者、専門家の方々にご参加いただき、ほかに例のない学術的広報誌として高い評価をいただくことができました。

『季刊大林』の大きな特徴となっているのは、社内で編成したプロジェクトチームが歴史的建造物の復元や検証、未来社会に寄与する建造物や街の構想などに挑戦し、そのプロセスと成果を誌上で発表する「大林組プロジェクト」です。

代表的な例としては、「伝説となっていた巨大な古代出雲大社の復元」「光源氏の邸宅・六条院の想定復元」「アーカイヴズの原像・アレクサンドリア図書館の復元」「日本と大陸をつなぐ海底トンネル道路の建設構想」「火星への居住計画構想」「都市全体を免震化するゼリー免震構想」などがあります。これらは、大林組の技術水準を示すばかりでなく、建設の面白さ、奥深さを垣間見せ、建設文化への理解を深める格好の機会として社会的にも話題となりました。

季刊大林 ホームページ

『季刊大林』 53号  「タワー」 概要

タワーはすごい。見上げていると人は元気になり、上にあがると知らずに笑顔がこぼれてきます。東京スカイツリー®の建設は、私たちにタワーの持つ潜在力を見直させてくれました。
人はなぜ高みをめざすのでしょうか。タワーとは何なのでしょうか。

本号では、大林組プロジェクトとして、宇宙へ届くタワー「宇宙エレベーター」建設を発表するとともに、あらゆる角度からタワーの意味を考えています。

<主な内容>

  1. グラビア 「ウルトラ・タワー」

    選・文 五十嵐太郎 (東北大学教授、建築史・建築批評家)
    経済合理性では説明できない究極的に純粋な「概念」だけで出来上がった塔-ウルトラ・タワー。アニメから実プロジェクトまで、さまざまなウルトラ・タワーを例に、塔をつくる意味と魅力を問う。

  2. 「塔と人間 エッフェルからの眺め」

    樺山紘一 (東京大学名誉教授、印刷博物館館長)
    1889年のパリ万国博覧会に向けて建設されたエッフェル塔。塔と人間のせめぎ合いの歴史はエッフェル塔から始まった。本誌の序章というべき一文。

  3. 「バベルの塔 コミュニケーションの神話」

    中沢新一 (人類学者、明治大学野生の科学研究所所長)
    人類の意識に「塔」のイメージが初めて浮かんだ頃、塔は「天」と「地」を結ぶものとして思考されていた。コミュニケーションを阻害するもののない「天」とつながりたいという欲望。コミュニケーションのために存在する塔。現代の塔が高みをめざすのは何のためなのか。

  4. 塔の「ニッポン」

    橋爪紳也 (大阪府立大学21世紀科学研究機構教授、大阪府立大学観光産業戦略研究所所長)
    塔と呼ばれる建築類型にはモスクの建物に付随する「ミナレット」、仏教における「ストゥーパ」などが存在する。ニッポン固有の典型といえば木造の層塔だが、実はそれだけではない。ほかに類を見ない「ニッポン固有の塔」を紹介する。

  5. 「宇宙エレベーター 人類最大の建造物」

    青木義男 (日本大学理工学部教授、宇宙エレベーター協会副会長)
    宇宙開発の恩恵によって私たちの生活は格段に便利になった。この便利さを継続していくためには、より有用な技術革新が必要だ。その中でキーとなる「宇宙への大量物資輸送」の手段として期待される宇宙エレベーターの今を紹介する。

  6. 大林組プロジェクト
    「宇宙エレベーター」 建設構想:地球と宇宙をつなぐ10万キロメートルのタワー

    大林組プロジェクトチーム、監修:青木義男
    「高みを極めたい」という人間の衝動は飽くことがない。しかし地球上に構築する限り、自重によって壊れる限界がある。この先私たちは、どこまで高さを求めていくことができるのだろうか。

    理論的には可能といわれている、上空10万km(地球と月の距離の約4分の1)まで人とモノを運ぶ「宇宙エレベーター」。果たして建設は可能なのか。宇宙ならではの構造による空間とは。宇宙への旅立ちの港はどのようなものなのか。
    本構想では、従来の建設技術の限界のその先にある、<天まで届く>新しいタワーの姿を考えてみた。
    【大林組プロジェクトチーム】
    技術本部:石川洋二 田村達一 大塚清敏
    設計本部:堀池隆弥 岩岡丈夫
    土木本部:増井直樹 浜地克也

  7. シリーズ 藤森照信の 『建築の原点』(5)大湯環状列石

    藤森照信 (工学院大学教授、東京大学名誉教授、建築史家・建築家)
    建築史家にして斬新な設計者としても知られる藤森照信氏が、建設物を独自の視点で捉えるシリーズ。第5回は、立石を中心に環状に石を配置した遺跡「大湯環状列石」(秋田県鹿角市)を紹介する。太陽を信仰するようになるとともに、木や石の柱を建てるようになった人類。私たちの天空をめざす志は太陽信仰に始まっている。

<仕様等>

  • 書名    季刊大林 53号「タワー」

  • 仕様    B5判、4C、本文68頁

  • 発行・企画 株式会社大林組CSR室

  • ISSNコード 0389-3707

  • 発行日   2012年2月20日

大林組プロジェクト 「宇宙エレベーター建設構想」

半世紀にわたる宇宙開発の進展により、人類が宇宙へ進出する目的は多様化しました。しかしその可能性をさらに広げていくためには、人や物資の経済的かつ大量の搬送が不可欠です。
もし地球と宇宙の間をケーブルでつなぎ、電車で行くように気軽に宇宙へ行き来が可能な「宇宙エレベーター」が実現すれば、宇宙太陽光発電、宇宙資源の探査や活用、宇宙環境旅行など、さまざまな分野での可能性が広がっていくことでしょう。

地球上に構築する限り、建設物は自重によって壊れる限界点があります。しかし、96,000kmかなたの宇宙へと伸びるタワー「宇宙エレベーター」は、理論的には実現可能といわれています。

私たちは建設の視点から、「宇宙エレベーター」の持つ未来への可能性を探求してみました。

上空36,000kmの静止軌道ステーションと宇宙太陽光発電パネル 

上空36,000kmの静止軌道ステーションと宇宙太陽光発電パネル

建設計画のポイント:ケーブル

ケーブルの長さは96,000km。これだけの長さがあると、クライマー(乗り物)を取り付けただけで、ケーブルは100km以上も伸びてしまいます。また、風などの影響で地球側の末端は10km単位で揺れ動きます。しかも、絶妙なバランスで宇宙空間に「立って」いるケーブルのバランスが崩れると、地球側に落下もしくは宇宙の果てまで飛び去ってしまいます。このような条件のもと、どのようにすれば安全を確保しながら施工できるのでしょうか。

アース・ポートの主要部は海上に浮かびます

 アース・ポートの主要部は海上に浮かびます

施設計画のポイント:アース・ポート

私たちは建設の視点から、「宇宙エレベーター」の持つ未来への可能性を探求してみました。

地球側のステーション、アース・ポートは私たちが宇宙との間を往復するための発着場です。宇宙への旅立ちというロマンチックな場所でありながら、宇宙まで届くケーブルを地上に固定し、エレベーターを安全に制御するためにケーブルの張力を調整する重要な拠点でもあります。意外な張力調整とはどのようなものでしょうか。

静止軌道ステーションは宇宙で膨張するユニットで構成されます

静止軌道ステーションは宇宙で膨張するユニットで構成されます

施設計画のポイント:静止軌道ステーション

宇宙空間での施設建設には、宇宙空間に運べるものの大きさの限界、人間が作業できる限界など、地球上では考えられない問題点が山積みです。宇宙の環境を活かし、施工しやすさを考慮したデザインとはどのようなものでしょうか。

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 本社CSR室
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プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。