塩害農地などへの簡易な除塩技術「木材チップ塩成土壌改良工法」を開発・実証しました

津波による塩害農地で東北大学と共同で検証

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、東日本大震災の津波で被災した塩害農地において、被災木材のチップ材などを活用して土壌改良と雨水による除塩を促進する「木材チップ塩成土壌改良工法」を開発しました。

また、2012年4月~9月に宮城県岩沼市で実証試験を行い、東北大学と共同でその効果を確認しました。

2011年3月11日の東日本大震災では、巨大地震とともに発生した大津波の影響で広大な農地が被害を受けました。震災以降、津波で被災した農地では、塩害から復旧するために、除塩事業が進められています。通常作業では、除塩用水を用地へ大量に引き込み、土の塩類を洗い流しています。そのため、水田の除塩には適していますが、排水不良の畑の除塩が難しく、加えて水の引き込みを必要とする稲の生育期間や、地盤が沈下して排水が不十分な状態の地域では、除塩が困難でした。

大林組では、20年前からアラブの湾岸地域の塩分を含む油汚染土の浄化や緑化を行うため、塩害対策技術の開発と適用実績を積み重ねてきました。国内の工事現場でも、海面埋め立て地の塩分濃度が高い掘削土を雨水で除塩して、緑地造成を行った実績があります。

津波による塩害地は、塩分濃度が高く泥状化する土で、これまで大林組が培った国内外の塩害地を緑化する対策技術が活用できます。

特に今回の開発では、農地に対応するため、木材チップと土壌改良材を農業機械のトラクターで混合し、雨水の透水性を高めて塩分の排水を促す工法を考案しました。実証試験では、5ヵ月で塩分が基準値以下まで低下し、十分な効果があったことが検証されました。

当実証試験で得た知見は、津波で被害を受けた塩害地に加え、気候変動の影響などで大型化するハリケーン、人口増に伴い進展する沿岸開発やデルタ地帯などの塩害リスク対応として活用できると考えています。

工法概念図「木材チップ利用の場合」

工法概念図「木材チップ利用の場合」

木材チップ塩成土壌改良工法の概念図

木材チップ塩成土壌改良工法の概念図

 

「木材チップ塩成土壌改良工法」の特長は以下のとおりです。

  1. 用水の供給が不要

    主に木材チップと土壌改良材の混合による透水性向上と、雨水による洗浄という除塩工程で、用水の供給が不要となるため、用水施設の復旧を待たずに工事を開始できます。また、稲の栽培期間中も工事が可能で、水田だけでなく畑の除塩にも適しています。
    さらに、用地に水をためないため、塩分を含む排水が大量に発生しません。

  2. 塩害主成分のナトリウムを大幅に削減

    実証試験で木材チップにカルシウムを含む土壌改良材を混ぜた結果、イオン交換の働きで塩害の主成分であるナトリウム飽和度(ESP)が2~3%を示し、試験の着手前のものに比べて最大10分の1の値になりました。この値は、塩害が発生する指標のESP15%より大幅に低く、ナトリウムによる塩害は発生しないレベルです。

  3. 特殊な工事設備が不要

    トラクターなどの一般的な農業機械を利用するため、大規模な土木工事の機械を使用しません。また、農家の方ご自身も除塩作業に参加可能です。

  4. 被災木材や間伐材を有効活用

    使用する木材チップは、被災木材や間伐材を有効活用します。また、木材チップの腐熟化により、土壌の肥沃(ひよく)性を高めます。

大林組は、農地再生や街づくりの中で「木材チップ塩成土壌改良工法」を積極的に提案し、安全・安心な暮らしを営む空間の創出に寄与するとともに、次世代に豊かな生態系を残し持続可能な社会の実現をめざします。

【参考】

土壌調査

土壌調査

開渠(きょ)の設置作業

開渠(きょ)の設置作業

試験工事前の様子

試験工事前の様子

土壌改良作業

土壌改良作業

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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