「ブレーキダンパー」に2つの新型が加わり豊富なバリエーションによる建物制振システムを確立

長周期地震動などの揺れや建物耐震補強に対応する機能を加え、さらなる適用拡大へ

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、建物制振システムとして中小規模から大規模まで広範囲の揺れに対応する「二段階作動型」と、既存超高層建物の制振補強向けの「減衰力可変型」の2タイプのブレーキダンパーを新たに開発しました。これにより、自社開発のブレーキダンパーを用いた建物制振システムが確立され、建物用途や構造を問わず効果的な地震対策が可能になりました。

ブレーキダンパーは、自動車のブレーキを応用して、ステンレス板とそれを挟み込むブレーキ材を使用し、摩擦力によりエネルギーを吸収することで、地震時の建物の揺れを抑える制振システムです。大林組は、1990年代後半より開発に着手し、タイプ別に「2面摩擦型」や「4面摩擦型」など実用化を重ね、2010年には一般評定(※1)を取得しました。

また、非常に簡単な仕組みで高価な部材を使用せず、工業製品として量産化の体制ができているため、オイルダンパーなどと比較し、同等の性能でありながら約50%のコスト削減を実現しました。さらに、繰り返しの作動にも損傷がないメンテナンスフリーで、交換の必要がない建物制振システムです。

新築工事や耐震補強工事で、45件以上の実績があり、現在東京都港区で施工中の虎ノ門ヒルズにも採用されております。今後は、2種類の新型を加えた全4タイプのラインナップにより、2013年度にはさらに10件以上の適用をめざしています。

ブレーキダンパーの採用実績および予定

ブレーキダンパーの採用実績および予定

今回新たに開発したブレーキダンパーは、揺れの大小に伴って摩擦力が変化する機能を加えた「二段階作動型」と「減衰力可変型」の2タイプです。長周期地震動などの揺れや、既存建物への制振補強に効果的に対応する性能を持った新型が加わり、全4タイプのさまざまな組み合わせにより、あらゆる要求性能に応じた最適な地震対策が実現できます。

新型ブレーキダンパーの主な特長は以下のとおりです。

  1. 建物の安全に加え、居住者に安心を提供する「二段階作動型ブレーキダンパー」

    設定した一定の入力値にのみブレーキ性能が作動する従来型のブレーキダンパーでは、一般的に建物の安全性に関わる大きな揺れに対して最も高い制振効果を得られるように摩擦力を設計していました。

    今回開発の「二段階作動型ブレーキダンパー」は、摩擦力を二段階に設定できる機能があります。比較的小さな揺れから大きな揺れまで幅広い範囲でブレーキ性能を働かせる設計が可能となり、長周期地震動による超高層建物の長く続く大きな揺れを早く抑制し、建物の安全性を確保するだけでなく、居住者に安心感を提供します。

    この新型ブレーキダンパーは、2013年2月15日付で一般財団法人日本建築センターの一般評定を取得しました。また、計画中の自社施設(大林組技術研究所オープンラボ2)へ適用する予定です。

  2. 超高層建物の制振補強向けの「減衰力可変型ブレーキダンパー」

    既存建物の改修工事で、一般的に超高層建物を制振ダンパーで補強すると、大地震時に大きな揺れが生じた際に、取り付けた制振ダンパーが効果を発揮する一方で、柱や梁といった既存構造体にも大きな負荷がかかります。

    制振ダンパーを取り付けたことで既存構造体の強度が不足する場合は、構造体である柱や梁を補強するか、一つの制振ダンパーの効果を小さくして設置箇所を増やすといった対応が必要となり、改修工事の箇所数や工期、コストが増加するといった課題がありました。

    「減衰力可変型ブレーキダンパー」は、揺れによりダンパーの変形が所定値を超えると、ダンパーの変形の大きさに応じて摩擦力が低減する機能を持たせました。大地震時の既存構造体への負担が低減され、ダンパーの設置箇所を増やさず、既存構造体の補強を最小限にしながら最適な制振補強を実施することが可能となり、建物本来の利便性を維持したまま補強コストの削減も期待できます。

大林組は、今回2種類の新型を加えたブレーキダンパーを新築工事や耐震補強工事へ積極的に提案していくとともに、地震に対するお客様の安全・安心を追求していきます。

【ブレーキダンパーのシステム図】

従来型のブレーキダンパー(摩擦面が2つのタイプ)

従来型のブレーキダンパー(摩擦面が2つのタイプ)

二段階作動タイプ

二段階作動タイプ

減衰力可変タイプ

減衰力可変タイプ

【ブレーキダンパー採用例】

H形鉄骨の上下面に新型、側面に従来型の組み合わせ

H形鉄骨の上下面に新型、側面に従来型の組み合わせ

従来型の実施例

従来型の実施例

※1 一般評定
建築に関する新技術・新材料を普及させるため、一般財団法人日本建築センターなどの機関がその新技術・新材料の性能を第三者として評価しています。日本建築センターでは、この第三者評価を「評定」と呼んでいます。「評定」には、個別の建築などを対象とする「個別評定」と、一定の適用範囲を定めて用いられる構法などを対象とする「一般評定」があり、ブレーキダンパーは「一般評定」の取得により技術の普及をめざしました。「一般評定」を取得することで、個別物件ごとの性能評価(※2)審査において、技術内容に関する説明の簡素化や審査期間の短縮が期待されます。

※2 性能評価
新しく開発された材料、設備などや特殊な構造方法を用いた建築物の中には、建築基準法令に定められた一般的な基準ではなく、高度な方法を用いて性能を検証するものがあります。このような場合に対応するため、国土交通大臣がその性能を認定する制度が設けられています。この大臣の認定を受けるために必要な事前の審査として、指定性能評価機関による「性能評価」が建築基準法令により定められています。

【参考】

ブレーキダンパー

強風や地震で建物が揺れたとき、走行中の車がブレーキをかけるようにステンレス板とブレーキ材の間で摩擦力が発生し、揺れのエネルギーを吸収する制振システムです。超高層ビルの揺れ対策はもちろん、既存ビルの制振改修にも適用できます。

danpa.gif

ブレーキダンパーの仕組み

皿ばねを介してボルトでステンレス板とブレーキ材を締め込むので、安定した摩擦力が発生します

ブレース型

ブレース型

間柱型

間柱型

制振改修事例

制振改修事例

  1. 強風や地震による揺れを低減します

    強風や地震などによる大小さまざまな揺れを、6割から7割程度に抑えます。

  2. 新築から既存建物の改修まで幅広く適用できます

    新築建物だけでなく、既存建物の制振補強や仕上げ材の一部にも組み込めます。
    低層建物から超高層建物まで幅広く適用できます。

  3. メンテナンスや地震後の取り換えが不要です

    メンテナンスの必要がなく、大地震によって作動を繰り返しても損傷しないため、取り換える必要がありません。

  4. 高品質・低コストで提供します

    品質の確かな工業製品の量産化とシステムの標準化により、高品質・低コストを実現しています。

柱と梁の間に斜めにブレーキダンパーを設置して揺れを抑制します(約20秒)

伸び縮みを繰り返して揺れのエネルギーを吸収します(約20秒)

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。