株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、山岳トンネルの高速掘進と覆工コンクリートの高品質化を両立させる「連続ベルコン通過型テレスコピック式セントル(※1)」を開発し、新名神高速道路 野登トンネル西工事(三重県亀山市、トンネル掘削延長:上り線2,355m、下り線2,378m、発注者:中日本高速道路株式会社)に、国内で初めて適用しました。
社会インフラの耐久性向上が求められている中、山岳トンネルにおける覆工コンクリートの品質向上の重要性が高まっています。従来、掘削中の切羽後方で施工するアーチ部の覆工コンクリートは、一組のフォーム(※2)を搭載したセントルで2日に1回打設するため、打設完了から脱型までの養生時間は16~18時間程度と短く、7日間程度養生する通常のコンクリート構造物に比べ、乾燥収縮などによるひび割れが発生しやすい状況にありました。
また、山岳トンネル工事では一般的に掘削ずり(※3)の坑内運搬をダンプトラックで行いますが、運搬距離の延伸に伴うトラック台数の増加や、トラックの頻繁な通行による路盤の損傷や接触災害の発生、排気ガスによる坑内作業環境の悪化といった問題が生じていました。
大林組は、これらの課題を解決するため、二組のフォームを使用することで長期養生時間を確保するテレスコピック式セントルと、トラックを使わずに掘削ずりを坑外へ連続的に運搬できるベルトコンベヤーを併用した「連続ベルコン通過型テレスコピック式セントル」を開発しました。
連続ベルトコンベヤーとテレスコピック式セントルの組み合わせは、トンネル断面の制約によりこれまで難しいとされていましたが、使用機材の形状の変更などを工夫し、国内で初めて実工事に適用しました。
品質や安全性の向上だけでなく、国土強靭化政策などに伴うインフラ整備工事増加によって、トンネル作業員が不足する現状の解消に向けた省人化効果も確認しました。
連続ベルコン通過型テレスコピック式セントルの特長は以下のとおりです。
- 覆工コンクリートの品質を向上できます
コンクリート打設後のフォームを自立させた状態で、その内側を小さく折り畳んだ別のフォームがくぐり抜けるテレスコ方式により、後方で養生しながら前方で次の打設作業を進めることができます。このため、2日に1回の標準打設サイクルを変えることなく、フォームの存置期間を60時間以上確保する長期養生が可能となり、コンクリート強度を増進させます。
加えて、一組のフォームを使用する従来の方式では、フォームの据え付け時に、後端部を脱型直後のコンクリートへオーバーラップさせるため、過度な押し付けによりひび割れが発生しやすいという課題がありましたが、テレスコ方式では、二組のフォーム同士をつなぎ合わせながら据え付けることでオーバーラップが不要となり、ひび割れのリスクを解消しました。
- 連続ベルトコンベヤーの採用により省人化、安全性・作業環境の向上を図れます
ダンプトラックの代わりに連続ベルトコンベヤーで機械的にずり運搬を行うことで、切羽作業員を最大25%程度削減できます。また、これまでトラックの往来によって発生していた路盤の損傷の修復などの手間や時間が削減できるとともに、坑内作業員とトラックとの接触事故などトラブルの回避、トラック走行時の排気ガスや巻き上げ粉じんの減少による作業環境の改善などが図れます。
今後は、同工事にてフォーム三組によるテレスコ方式を試行し、覆工品質を確保しつつ急速覆工の可能性を追求する予定です。
大林組は、長大な山岳トンネル工事の高速掘進と覆工コンクリートの高品質化、省人化、安全性・作業環境の向上に向けて「連続ベルコン通過型テレスコピック式セントル」を積極的に提案、採用していきます。
- ※1 テレスコピック式セントル
覆工コンクリートを打設する際のアーチ部の型枠一式をセントルという。テレスコピック式とは、養生中の既設の型枠の下をもう一組の型枠が折り畳まれてくぐり抜け、養生中に次の箇所の打設ができる構造をいう
- ※2 フォーム
セントルの内、特にアーチ部を打設する型枠部分のこと(図参照)
- ※3 掘削ずり
トンネル工事で掘り出される岩石、土砂
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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