株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、首都圏などで多く発生する自然由来のヒ素含有土丹(どたん)(※1)塊を浄化する工法を開発しました。
近年、大都市圏では、鉄道・道路・共同溝を大深度地下に建設する工事が増えています。大深度の地層には、自然由来のヒ素が含まれる場合があるため、このような土壌からの掘削発生土は、人や環境に影響を及ぼす恐れがあります。そのため、汚染土壌からの掘削土は、専用の許可施設などで適正に処分することが定められていますが、処分に多額の費用がかかることや、施設の受け入れ能力不足により工事が遅延する可能性があることが課題でした。
大林組は、2013年に、業界で初めて、泥水式シールド工法で発生するヒ素汚染泥水を省スペースで大量に浄化できる工法を開発しました。汚染泥水に鉄粉を混ぜ、ヒ素を吸着させて取り除くことで確実に浄化する工法です。
本工法は、泥水式シールド工法のみならず、土圧式シールド工法で掘削した発生土でも、水を加え泥水化することで適用可能です。しかし、首都圏の大深度には、土丹と呼ばれる硬質粘土層を含む地層があり、この固い土丹塊は水を加えても泥水化できないため、鉄粉によるヒ素の吸着浄化工法が適用できず、土丹塊にも対応できる浄化技術が求められていました。
そこで大林組は、従来の装置に改良を加え、土丹塊を対象とした浄化技術を開発しました。硬い土丹塊を確実に破砕、粉砕することで泥水化を可能にし、ヒ素を吸着する特殊鉄粉により浄化する工法です。
今回開発したヒ素含有土丹塊の浄化技術の特長は以下のとおりです。
- 硬い土丹塊を確実に破砕し、含まれるヒ素を除去
掘削時に発生する粒径300mm程度の土丹塊を粗破砕装置により10mm以下に粗破砕し、その後2mm以下に粉砕する2段階破砕システムにより、硬い土丹塊を効率的に破砕して、内部に含まれているヒ素を確実に洗浄水に溶出させて鉄粉に吸着できます。
- 汚染土の処分費を低減
土壌溶出量基準値以下の汚泥として搬出することで、専用施設での処理が不要となり、処理費用が大幅に低減できます。試算では、対象土量5万m³の場合に、15%のコスト削減が可能です。
- 鉄粉のヒ素吸着率が向上、大量の汚染土にも対応
吸着槽内の攪伴(かくはん)方法を改善することにより、従来より鉄粉とヒ素との接触効率を高めました。また、従来は一つの吸着槽と遠心分離装置のみで、「泥水の受け入れ、鉄粉吸着、鉄粉分離、回収鉄粉受け入れ」の一連の処理工程を繰り返し行っておりましたが、装置を複数に増強し、自動的に連続処理が行えるよう配管ラインやレイアウトを工夫したことにより、効率よく大量の汚染土が処理できるようになりました。
大林組は、自然由来のヒ素汚染土壌処理を必要とするトンネル工事をはじめ、大深度地下建設工事などに、今回開発したヒ素浄化工法を積極的に提案していきます。
- ※1 土丹(どたん)
新第三紀から更新世(約2千万年前から1万年前まで)の粘土層が堆積し長年圧縮されて硬化し泥岩化したもの。水中攪伴しても崩れない硬さで、機械などで粉砕する必要がある
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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