株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、JXエネルギー株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役:杉森務)と共同で、シールド工法で使用する新しいテールシール充てん材「シールノックCR」を開発しました。
近年のシールド工事は、大深度、大断面、長距離化するとともに、海底直下や河川横断などの高水圧下での施工が増えています。このような条件下でシールドマシンを掘進させる際には、トンネル内の作業員に対する安全性や作業の施工性を確保するため、トンネル内に地下水や土砂が入らないようシールドマシンの後方部(テール部)に設置されている装置、テールシールでの確実な止水が求められます。一般的には、柔軟性を有するワイヤブラシを複数段配置して、ブラシ内およびブラシ間に給脂ポンプで継続的に圧送される充てん材(以下テールグリース)を充てんし、テールシール部とセグメントの隙間を止水します。
しかし、このテールシール内に裏込め注入材(※1)が入り込み、ブラシ内およびブラシ間で注入材が混入したテールグリースが固結すると、テールブラシの柔軟性が失われて止水性能が低下したり、さらには、固結したブラシとセグメントの過大な接触圧により、セグメントが損傷したりする場合がありました。
そこで、大林組とJXエネルギーは、裏込め注入材が混入しても固結しにくく、従来品よりも優れた止水性とポンプ圧送性を有するテールグリース「シールノックCR」を共同開発しました。
「シールノックCR」の特長は以下のとおりです。
- 高い止水性の確保とセグメントの損傷を防止します
「シールノックCR」は、裏込め注入材が混入しても、給脂ポンプで圧送可能な軟らかさ(ちょう度)を、混入後、従来の約2倍である24時間程度保持します。そのため、裏込め注入材が混入しても、給脂ポンプを継続的に圧送することで、固くなる前にテールシール外へ押し出すことができ、ブラシ内およびブラシ間での固結を防止することができます。また、従来品では、裏込め注入材混入直後に一時的に急激な軟化が発生し、裏込め注入材がテールシール内へ浸入しやすくなるという課題がありましたが、シールノックCRではそのような現象は発生しません。
結果、掘進時のテールシールの柔軟性を保持することで、高い止水性を確保し、シールドトンネル内での作業性が向上します。現場実証試験では、従来品に比べ、シールドマシン内への漏水量を約2割低減できることを確認しました。
また、ブラシ内およびブラシ間で固結しにくいため、セグメントに過大な接触圧が加わることがなくなり、セグメントの損傷を防止します。
- ポンプ圧送性に優れます
テールグリースは、シールドマシンの後方の台車に設置された給脂ポンプにより、テールシールに配管を通じて圧送されます。圧送距離は大断面シールドでは100m近くなる場合もあり、必要な圧送圧を確保するため、高粘度液専用の大型給脂ポンプが採用されています。
「シールノックCR」は、従来品に比べて比重が軽く、テールグリースの圧送圧を低減し、所定の流量を確保するためのポンプ圧力負荷を軽減できます。現場実証試験では従来品に比べ、テールグリース圧送時のポンプ負荷(テールグリース圧送圧)を約2割低減できることを確認しました。
大林組は、今後さらなる難条件でのシールド工事に対応するため「シールノックCR」を広く展開することにより、トンネル工事の品質確保と、安全性および施工性の向上に貢献していきます。
- ※1 裏込め注入材
セグメントはシールドマシンの中で組み立てるため、セグメント外径はシールドマシンの掘削外径よりも小さくなります。裏込め注入材は、この外径の差によって生じる隙間を埋めるために注入するセメント系材料です。シールドマシン掘進後の地山の緩みを防ぐとともに、セグメントを地山内に固定するため、一般的に掘進時にセグメントに空けた孔(あな)から注入されます
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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