逆打ち支柱に用いるダイアフラムが不要となる柱梁接合部構法「ダイアのん」を開発

逆打ち工法を適用する超高層建築物において地下部分の鉄骨製作を効率化します

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:白石達)は、新日鐵住金株式会社(本社:東京都千代田区、社長:進藤孝生)との共同研究により、逆打ち工法(さかうちこうほう)(※1)を適用する超高層建築物の施工において、逆打ち支柱に設置するダイアフラム(※2)が不要となる、柱梁接合部構法「ダイアのん」を開発しました。

逆打ち支柱と梁との接合部

逆打ち支柱と梁との接合部

都心の再開発事業などで建設する超高層建築物においては、工期を短縮するために地下と地上の工事を並行して進める逆打ち工法の適用が主流となっています。通常、逆打ち工法では工事が進む地上階を支えるために、逆打ち支柱と呼ばれる鉄骨の柱をあらかじめ地中深くに埋め込む必要があります。

これまで逆打ち支柱には、地下階の床を支える梁との溶接部を補強するため、製作段階で接合部にダイアフラムを設置することが一般的でした。そのため、逆打ち支柱を鉄骨製作会社に発注するには、ダイアフラムの設置位置を早期に決定する必要がありました。ダイアフラムの設置位置を決定するためには、施工者が設計図に基づいて施工図(※3)を作成し、ダイアフラムの位置や形状、梁との接合部などを詳細に検討・確認する必要がありますが、設計図と施工図との整合性の検討・確認には多大な時間を要することが多く、また、場合によっては元の設計図を修正する必要があるなど、逆打ち支柱の発注時期が遅くなってしまうことが課題でした。

今回開発したダイアのんは、逆打ち支柱の柱梁接合部において、ダイアフラムによる補強を不要とする工法です。ダイアフラムがなくなることで、設置位置を決定するための検討・確認作業が不要となるため逆打ち支柱の早期発注が可能となり、また施工中、設計変更などで床の仕様が変更となった場合でも柔軟な対応が可能となります。さらに柱梁接合部における鉄骨量と溶接量が減少することで鉄骨製作工程の短縮、コスト削減も可能となります。

大林組は実大実験とFEM解析によりダイアフラムを不要とする設計法を確立し、本構法について一般財団法人日本建築総合試験所の「建築技術性能証明(GBRC性能証明第16-12号)」を取得しました(※4)。

ダイアのんの特長は以下のとおりです。

  1. 逆打ち支柱の早期発注、製作工程の短縮および製作コストの削減

    従来は、設計図と施工図との整合性の検討・確認作業が完了するまでは、ダイアフラムの設置位置が確定せず、逆打ち支柱を発注することができませんでしたが、本構法ではダイアフラムを省略することにより検討・確認作業を省略できるため、早期に鉄骨を発注することが可能です。また、溶接量の減少による製作工程の短縮、鉄骨量と溶接量の減少によるコスト削減を実現します。

  2. 施工品質の確保および柔軟な工程管理

    従来は鋼材寸法の誤差などが原因で、まれにダイアフラムと梁の溶接位置が上下方向にわずかにずれ、補修溶接が必要となる場合がありましたが、本工法においては柱梁接合部にダイアフラムがないため、このような補修手間が生じません。また施工中、設計変更に伴う床レベルの変更があった場合でも、柔軟に対応することができます。

(仮称)新橋一丁目ビル新築工事

(仮称)新橋一丁目ビル新築工事

ダイアのんはその利点が評価され、東京都内に建設予定の高さ約135m、延床面積約3万6,000m²の事務所・ホテルを主用途とする「(仮称)新橋一丁目ビル新築工事(発注者:NTT都市開発株式会社、九州旅客鉄道株式会社)」への適用が決まっています。

今後、大林組は逆打ち工法を適用する超高層建築物に本構法を積極的に提案し、発注者のさまざまなニーズに柔軟に対応しながら、高い施工品質の確保、工程管理に努めていきます。

  • ※1 逆打ち工法(さかうちこうほう)
    地下と地上の工事を並行して行う工法。地下の工事については、先に地上1階の床を構築し、順次上層階から地下階の床を構築する。逆打ち支柱は、逆打ち工法において床を支える柱。床は構造的に柱、梁に支えられているため、床の構築には柱が必要となる。逆打ち工法では場所打ち杭のコンクリートの中に逆打ち支柱を建て込み、この支柱を掘り出して梁、床を構築する
  • ※2 ダイアフラム
    鉄骨の柱と梁の接合部分を補強するために用いる鉄骨のプレート。本プレートと鉄骨の梁を溶接し、柱と梁の曲げ応力を相互に伝達する
  • ※3 施工図
    建物の基本となる設計図をベースに、具体的に施工を進めるための詳細図面をいう。鉄骨製作図は施工図に基づき作成される
  • ※4 建築技術性能証明の取得について(補足)
    本工法は、柱梁接合部において鉄骨梁端部の耐力およびコンクリートのコーン状耐力・支圧耐力による曲げ抵抗を評価することで、ダイアフラムの省略を可能としている

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
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