オープンイノベーションにより次世代型の自動品質検査システムを開発しました

米国シリコンバレー技術開発拠点における将来に向けた取り組み

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、自社保有技術と社外の革新的な知識や技術を有機的に結び付けるオープンイノベーション手法を活用し、品質、安全性および生産性の向上などを目的とした技術開発を推進するため、「オープンイノベーション推進プロジェクト・チーム」を設置するとともに、世界の技術革新の中心である米国シリコンバレーに同チームのサテライトオフィス「シリコンバレー・ベンチャーズ&ラボラトリ(Silicon Valley Ventures & Laboratory)(※1)」を開設し、新たな技術の研究開発を進めています。今般、その初の成果として飛躍的に建設現場の生産性を向上させる次世代型の自動品質検査システムを開発し、建設現場の配筋検査作業への適用性を実証しました。

シリコンバレー・ベンチャーズ&ラボラトリ(シリコンバレー)

建設業では、国内の人口減少による労働力不足や働き方改革などに対する社会的なニーズの高まりを背景に、建設現場における生産性の飛躍的向上が喫緊の課題となっています。大林組は課題の解決に向け2017年3月に「オープンイノベーション推進プロジェクト・チーム」を設置し、新たな技術やアイデアを短期間で調査・集約し、革新的技術を保有する有望な研究機関・大学・スタートアップ企業などとオープンイノベーションの手法を活用して、飛躍的に生産性を向上させる次世代生産システムの構築に取り組んできました。

さらに、同年10月米国のスタートアップ企業や研究機関との協業によりプロジェクト・チームの活動を促進するための拠点として開設した「シリコンバレー・ベンチャーズ&ラボラトリ」には、創造活動を促進するコラボレーションオフィスに加えて実証実験を行うためのR&Dラボも備えています。シリコンバレーでの研究開発拠点の設置は、日本の建設会社としては大林組が初めてとなります。

今回開発した次世代型の自動品質検査システムは、SRI International(以下、SRI)(※2)と2017年3月から開発を開始したもので、プロジェクト・チームにおけるパイロットプロジェクトとなるものです。加えてプロジェクト・チームでは、2017年12月に"建設業が解決すべき4つの課題(※3)"を提示し、現地スタートアップ企業や研究機関からソリューションを募集するシードセレクションイベント"Obayashi Challenge 2017"を実施しており、事前審査を通過した13チームによるプレゼンテーションを受けました。大林組や米国子会社のトップマネジメントや技術者がそれぞれの提案を評価した結果、現在は複数の提案者と共に、次世代型生産システムを構築する他の共同開発プロジェクトを進めています。

次世代型の自動品質検査システムは、「現場監督の目」に代わるデジタル技術をコンセプトに開発したもので、高度な自己位置推定技術をベースに、点群データ生成機能、BIM(Building Information Modeling)との連携機能、MR(Mixed Reality:複合現実)技術などを組み合わせることで、品質検査の画期的な効率化を実現しました。2018年5月には、品質検査の中でも特に複雑で時間のかかる配筋検査業務において、本システムが適用可能なことを国内の建設現場にて実証しました。

開発した次世代型の自動品質検査システムの特長は次のとおりです。

施工管理者の熟練度によらず効率的な品質検査が可能

配筋検査業務では、膨大な鉄筋のすべての箇所について、本数・間隔(ピッチ)・径・長さ・材質といった項目を、設計図面通りに組み立てられているかを確認する必要があります。これまでの一般的な2次元の設計図面ではすべての鉄筋の配置を表記することは難しく、細かい仕様については標準配筋図を参照する必要がありました。そのため施工管理者は、標準配筋図をあらかじめ詳細に把握したうえで、作業現場を見て不具合箇所に気付く感性が要求されました。

また、配筋はコンクリート打設後には確認できないため、万が一のミスも許されず、注意深い目で二重三重の確認が必要となり、施工管理者は、工事の進捗に合わせながら一日中移動を繰り返し、対象部位の図面を探しては検査するという作業に多大な労力と時間を費やしていました。

本システムでは、施工管理者が携帯もしくは装着する機器に付いている複数のカメラからの映像を基にVisual SLAM技術(※4)を用います。鉄筋の配置まで表現されているBIMモデルと重ね合わせることで、Wi-Fi・GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用できない屋外・屋内環境であっても、現在の位置と見ている鉄筋が図面上のどこの箇所のものかを自動で認識できます。

そのため、施工管理者は図面を持ち歩くことなく、見ている部位のBIMモデル(あるべき姿)と現実の鉄筋とを重ね合わせたMRの映像を確認するだけで、今の状況が正しいかを瞬時に判別することが可能です。また、本システムでは複数のカメラを用いて、特定した部位の配筋状況を3Dの点群データとして分析し、配筋の本数・間隔(ピッチ)・径・長さ・材質を判別することができます。

まさに「現場監督の目」として機能するうえ、ヒューマンエラーの発生を防ぐことが可能です。本システムは、施工管理者がより効率的に業務を進めながら、配筋検査の品質も高めることができる画期的なシステムです。

news20180720_1_04.png
  • タブレット端末でBIMモデルと配筋の重なりを確認

  • 配筋間隔(ピッチ)の計測状況

高い生産性向上効果と優れた汎用性

2018年5月に国内の建設現場において、システムの各機能の有効性について実証実験を行い、要求性能を十分満たしていることを確認しました。今回の結果から、配筋検査業務について25%以上の生産性向上が可能であると考えており、深刻化する労働力不足の解消に有力な手段として2019年度の本格導入をめざします。

今後は、実務に適用するための耐久性や精度検証などを進めるとともに、大林組がこれまで開発した配筋検査システムとの連携を図るなど、現場へ展開するための検証を行っていきます。さらに、本システムは現状とBIMモデル(あるべき姿)とを高精度に比較することが可能であるため、配筋検査以外の品質管理や工事の進捗管理など、幅広い業務への適用が見込まれます。飛躍的に生産性を向上させる次世代生産システムの構築に向け、他の業務への適用についても検証を行っていきます。

news_20180720_1_05.jpg
建設現場での実証実験風景
建設現場での実証実験風景

大林組グループは、BIMを中核とするデジタルツインをベースにした次世代建設プロセスの構築「Obayashi Construction 4.0」をめざしています。建設プロセスから人が行わねばならない作業は決してなくなりませんが、「Obayashi Construction 4.0」が生み出すのは、状況を的確に判断して人をサポートし、時には取って代わることで、より高度・正確かつ効率的な作業を加速させる建設支援システムです。

建設分野で培った高い技術力とノウハウをもって、先進的な技術を保有するスタートアップ企業や研究機関と協業することで、世界最高水準の技術力と生産性を備えたリーディングカンパニーをめざしていきます。

  • ※2 SRI International

本部 Menlo Park, CA, USA
売上高 年間US$450M超
従業員数 約1700人
拠点 20拠点
組織概要 世界で最も大きな非営利独立研究機関の一つ。1946年にスタンフォード大学により地域の経済発展を支援する目的で設置された。1970年に完全に大学から独立し、米国の非営利科学研究組織となる。科学技術の発見・応用を通じて、知識・経済・平和・繁栄に貢献することを目的としている。これまで数々のイノベーションを生み出しているため、米国ビジネス誌『Business Week』では"The Soul of Silicon Valley"と評されている。現在では政府関連から民間まで幅広い顧客と協力して最先端のR&Dの結果を実用化・商用化しており、高付加価値とイノベーションを実現することに注力している
SRIが開発した主なイノベーション例
  • 世界初のコンピューターマウスやHypertext、リアルタイムテキスト変換、遠隔地におけるスクリーン共有や協働技術の開発といったインタラクティブなコンピューター利用技術
  • インターネットの原型であるARPANETを計画・実施(UCLA-SRI-Utah)
  • 世界初の外科手術用ロボット(Da Vinci)開発
  • Siriの開発(スピンオフ後にAppleが買収)
SRIからスピンオフした企業 Siri、Intuitive Surgical、Nuance、Superflex (Seismic) など
主な取引先 政府機関(アメリカ国防研究局(DARPA)、アメリカ航空宇宙局(NASA)、 アメリカ国立科学財団(NSF))、企業(Google、Apple)など
主な研究分野 生命医学、科学、情報処理、宇宙、経済、環境、セキュリティなど
ホームページ https://www.sri.com/sectors
  • ※3 建設業が解決すべき4つの課題
    1:AIを活用した自律(自動)設計、2:労働人口減少を背景にした現場場内搬送の自動化、3:IoT、AIを活用した建物居住者への付加価値、4:IoT、AIを活用した現場知識・ノウハウの伝承・ナビゲーション、の4つを提案テーマとした
  • ※4 Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)
    カメラで撮影された映像から自己位置を推定する技術と、周辺の物の配置やどこに壁があるかなどの環境地図の生成を同時に行う技術。本技術を利用することで、GNSS信号の届かない状況でのロボットの自律走行などが実現可能となる

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
TEL 03-5769-1014

プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。