免震基礎コンクリートの充填率を計測するAIを開発しました

ディープラーニングを画像解析に応用し専門技術者の目視検査を補完・効率化

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、免震基礎コンクリートの試験施工において、撮影した写真画像によるコンクリートの空隙判定にAI技術を用いることで充填(じゅうてん)率を自動計測し、試験の合否判定にかかる期間を大幅に短縮できるシステムを開発しました。

近年、建物の特定の階層に積層ゴムなどの免震装置を取り付けることで地震の揺れを建物に伝わりにくくする免震構造建物のニーズが高まっています。免震装置は免震基礎コンクリートの上に設置したベースプレートと呼ばれる鋼板の上に取り付けられますが、ベースプレートとコンクリートを一体化させるため、組み立てられた免震基礎上部の鉄筋にベースプレートを設置し、コンクリートの打設によりこれらを密着させる必要があります。

この際、ベースプレートの下部に打設したコンクリートが密実に充填されていることを確認することができないため、実際の工事に先立って実物大試験を実施し、ベースプレートを取り除いてベースプレート下面のコンクリートの空隙を計測することで充填率が基準を満たしていることを確認します。

免震基礎断面図

  • ベースプレート下面へのコンクリート打設状況

  • ベースプレート取り外し後

従来は、空隙部分をペンやマーカーなどで着色したコンクリート面の写真画像をパソコンに取り込み、台形補正や検査範囲の切り出しなどの画像処理をしたうえで、さらに画像編集ソフト上で所定の寸法以上の空隙を抽出して着色し、空隙の合計面積を算出するという一連の検査における判定処理をすべて手作業で行っていました。

免震基礎コンクリートとベースプレートの接触面全体について検査する場合、撮影する写真は試験体1体につき25~100枚程度に上り(接触面全体についての検査は設計者から要望があった場合に実施。大林組の基準では試験体1体につき所定の箇所からの抜き取り検査を行う)、基礎の形状ごとに実物大試験をする必要がある場合には処理する写真がさらに増えることから、判定結果の算出に1週間以上の期間を要することもありました。

今回大林組は、AI技術の一つであるディープラーニング(※1)を画像解析に応用し、コンクリート面の空隙の特徴をコンピュータに学習させることで、空隙部分を自動で検出・着色し、充填率を算出できるシステムを開発しました。併せて従来の画像解析技術を利用し、写真の台形補正などの画像処理も自動化することで大幅な検査期間の短縮を実現しています。


通常の作業と本システムを用いた場合の所要日数比較
(検査対象が試験体1体(撮影写真約80枚)の場合)

本システムの特長は以下のとおりです。

AI技術により空隙検出作業を削減し、生産性を大幅に向上

本システムは、ディープラーニングを用いてさまざまな空隙の特徴を学習し、指定した寸法以上の空隙を自動で検出して着色します。自動検出の範囲から除外したい部分がある場合は、あらかじめその部分を指定しておくことでより高い精度で検出することを可能とします。

従来の判定結果と本システムでの判定結果を比較したところ、空隙判定箇所の間違いの少なさを意味する精度(Precision)が約84%、空隙の見落としの少なさを意味する再現率(Recall)が約95%という結果を得ました。システムが検出した結果を最終的に人間が確認して着色漏れを是正することで、従来と同等の検査精度を確保するとともに大幅に生産性が向上します。試験体1体で80枚の写真を検査する場合で検証した結果、従来1人で約5日~1週間以上かかっていた作業を約2~3日で完了できることを確認しました。


  • 自動検出した所定寸法以上の空隙(赤色)

    検出前


  • 検出後

周辺作業を自動化して検査期間を短縮

写真の台形補正や切り出しなどの画像処理ならびに検出した空隙の合計面積を算出する判定処理を、画像解析技術により自動化します。また、AIが検出した空隙の最長径や面積なども数値で表示できます。

現在、さまざまな現場で合否判定作業時の写真サンプルを採取し、空隙検出精度の向上に取り組んでいる段階です。今後、建設現場での検証を重ね、品質確保に十分な精度および再現率を確認したうえで、検査業務の効率化を進めていきます。

また、本システムは、今回対象とした検査以外にも、さまざまな目視検査に応用することが可能です。大林組は今後、目視検査業務を代替・軽減すべくAIの適用範囲をさらに拡大することで、技術者の能力差によって結果にバラツキが生じる判定、人的要因による見落とし、技術者不足などの課題を解決し、さらなる施工品質と生産性の向上をめざしていきます。

  • ※1 ディープラーニング(深層学習)
    システムがデータの特徴を学習して事象の認識や分類を行う「機械学習」の技術。ニューラルネットワークと呼ばれる、人間の複雑な脳の構造を模した数学モデルを多層化することで、システムが多量のデータから特徴や類似性を学習し、新たなデータを分類・判定する

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 CSR室広報部広報第一課
TEL 03-5769-1014

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