天井と空調機の耐震性を同時に向上する「ロータリーダンパー天井制振システム」を開発し、建築技術性能証明を日本で初めて取得しました
天井裏のブレースをなくし設計と施工の自由度を大幅に向上
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プレスリリース
株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、天井と空調機双方の耐震性向上を合理的に実現する天井制振構法「ロータリーダンパー天井制振システム」を開発し、一般財団法人日本建築総合試験所(※1)から建築技術性能証明を取得しました。天井制振技術の建築技術性能証明は日本初です。
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耐震天井・制振天井(本システム)の施工時状況 耐震天井:天井ブレースあり
天井裏の設計的・施工的な制約が大きい
(機器類・配管・ラックなどの配置計画・設置工事が困難) -
制振天井(本システム):天井ブレースなし
天井裏の設計的・施工的な制約が小さい
(機器類・配管・ラックなどの配置計画・設置工事が容易)
2011年3月の東日本大震災では、天井自体が揺れたことによる落下などの被害に加えて、揺れ方の異なる天井と天井埋め込みカセット型室内機(以下 空調機)の衝突に起因する被害も多数発生しました。これらへの対策として、国土交通省は「特定天井及び特定天井の構造耐力上安全な構造方法を定める件(平成25年国土交通省告示第771号)」(以下 天井告示)を公布し、また、日本建築センターは「建築設備耐震設計・施工指針(2014年版)」(以下 設備指針)を改定発行しています。
天井告示では、耐震性の高い接合金物を天井裏全面に配置することや天井ブレースを多数設置することで、揺れない、衝突しない天井の構築を義務化しましたが、その結果として、天井裏に関して設計・施工上の制約が増大し、ひいては天井の施工コストが大幅にアップするという課題がありました。さらに、天井告示や設備指針に基づき天井と空調機の耐震性を別々に向上させても、両者の衝突回避が担保されるわけではないことも課題となっていました。
今回大林組が開発したロータリーダンパー天井制振システムは、ブレースのない天井とアングル(山形鋼)により補強した空調機とをダンパーで接続することで、天井と空調機双方の耐震性を同時に向上させるとともに、両者の衝突回避を実現します。また、天井ブレースがないため、天井裏の設計と施工の自由度が大幅に向上します。
ロータリーダンパー天井制振システムの特長は以下のとおりです。
ダンパーを用いて天井と空調機の耐震性を向上
地震による天井と空調機の衝突は、重さや硬さの違いにより両者の揺れ方が異なることにより起こります。本システムは両者の間にダンパーを設置し、地震時の揺れを吸収することで、天井と空調機双方の衝突を回避するとともに耐震性を向上する構法です。本システムにより天井の揺れが抑制されることから、天井周辺に設置されている壁などとの衝突も回避できます。また、ダンパーが揺れの力を吸収するため、耐震天井で用いられる天井ブレースを設置する必要はありません。なお、本システムは空調機がない場所の天井にも適用できます。
天井裏の設計・施工の自由度を大幅に向上させ、低コストで制振を実現
本システムは天井ブレースを用いない構法であることから、天井ブレースを用いる耐震天井と比較して、天井裏に取り付けられる機器類・配管・ラックなどの配置計画の自由度が向上し、設置工事も容易となります。また、地震時の揺れの大部分をダンパーが吸収するため、ダンパー周辺以外の天井用接合金物に耐震性の高い金物を用いる必要はありません。さらに、天井ブレースが不要であること、多くの接合部分で高耐震性の金物を用いる必要がないことから、耐震天井と比較してコストを約30%削減できます。
要求性能を実現する高い信頼性
本システムは日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得しています。今回、天井告示の「計算ルート(応答スペクトル法)」(※2)で規定されている天井面に作用する地震力に対して、天井面構成部材、空調機を含めた補強フレームおよびダンパーの損傷を防止できることが検証されました。さらに、本システムによって天井と空調機の間、天井と天井周辺に設置されている壁などとの間のクリアランスの確保が可能となり、天井と空調機の衝突、天井と周辺壁などの衝突をそれぞれ回避できることも検証されました。
大林組は、これまで培ってきた天井の耐震化技術や大規模地震時の天井落下防止技術「フェイルセーフシーリング」とともに、本システムの導入を積極的に提案していくことで、お客様の幅広いニーズにお応えし、安全・安心な社会づくりに貢献していきます。
- ※1 一般財団法人日本建築総合試験所 建築基準法に基づく指定性能評価機関および指定認定機関として、国土交通省から指定(登録)された第三者機関
- ※2 計算ルート(応答スペクトル法) 天井告示で定められている天井安全性確認の方法の一つで、当該天井が設置される構造躯体の地震に対する応答を求めたうえで、天井の安全性を検証する高度な計算方法
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室広報第一課
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