耐火被覆の吹付け作業を自動化する「耐火被覆吹付けロボット」を開発

省人化と同時に作業効率と作業環境の改善を実現し、建設技能者不足の解消をめざします

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、建設技能者の不足が著しい耐火被覆工事において、吹付け作業を自動で行うことで省人化するとともに、作業効率と作業環境の改善も実現する耐火被覆吹付けロボットを開発しました。

鉄骨造の建築物では、火災による鉄骨への損傷を防止するために、鉄骨表面にロックウールなどで耐火被覆処理を施します。耐火被覆工事で主に採用される半乾式吹付けロックウール工法(※1)(以下、耐火被覆工事)では、吹付けたロックウールが大量に飛散するため、夏場でも防護服を着用する必要があり、大きな負担を強いられることが建設技能者不足の主な要因になっています。耐火被覆工事は、建設技能者が確保できない場合、後続する仕上げ工事の遅延にもつながりかねないことから、建設技能者不足の解消が喫緊の課題となっていました。

そこで大林組は、耐火被覆工事における建設技能者不足の解消をめざし、耐火被覆吹付け作業を自動化するロボットを開発しました。今回開発した耐火被覆吹付けロボットは、走行装置、昇降装置、横行装置、産業用ロボットアームで構成されています。あらかじめ登録した作業データに従って現場内を走行し、半日もしくは1日単位の吹付け作業を自動化することで、省人化を実現します。

また、横行装置によって、移動せずに吹付けられる最大幅が建設技能者と比較して約2倍となるため、作業効率が3割程度向上します。さらに、専用の粉じん飛散防止ノズルを開発したことで、ロックウールの飛散量を約7割低減できることから、ロボットと協働する建設技能者の作業環境も改善します。

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耐火被覆吹付けロボットの構成

大阪府内の工事現場で実証実験を行った結果、大梁2本、小梁2本(いずれも2時間耐火仕様、被覆厚さの規定値45mm)を建設技能者と同等の品質(※2)で施工できることを確認しました。

   

耐火被覆吹付けロボットの特長は以下のとおりです。    

耐火被覆を自動で吹付けることで省人化を実現

従来工法では、吹付け・コテ押さえ・材料投入のそれぞれを担当する建設技能者3人を1班として作業を行いますが、耐火被覆吹付けロボットを適用した場合、吹付けを担当する建設技能者1人を削減することが可能です。吹付け作業の指示は、BIMモデルを利用して専用シミュレーター上で作成した吹付け作業ファイルと平面図上の座標を基に作成した走行ルートを組み合わせた作業データを登録するだけです。半日もしくは1日単位の長時間の作業でも作業指示に従って移動と吹付けを繰り返し実行できます。

耐火被覆吹付けロボットは、階高5m、梁せい1.5mまでの梁部材の吹付けに対応可能で、吹付け対象がH形の鉄骨梁であっても、下フランジ・ウェブ・上フランジのすべての部位に自動で吹付けます。また、吹付け対象部材が柱の場合、床面から1.5m以上の領域であれば吹付け可能です。走行装置は、自動運転以外にリモコンでの遠隔操作も可能で、2.5t以上の工事用エレベーターに積載して他の階へ移動できます。

耐火被覆吹付けロボットでの施工システム

最大吹付け幅の拡幅により作業効率が向上

従来の梁の吹付けでは、建設技能者が高所作業車に乗って吹付け場所に移動し、作業台を上昇させて吹付け作業を行いますが、1ヵ所の最大吹付け幅は、建設技能者が作業台上で手を伸ばせる2m程度の範囲に限られており、次の吹付け場所へは、安全上の理由から、作業台を最下部まで下げて移動させた後に再度上昇させる必要があるため時間がかかり、作業効率の低下を招いていました。耐火被覆吹付けロボットは、横行装置で梁の材軸方向にロボットアームをスライドさせることで、1ヵ所の最大吹付け幅が建設技能者の約2倍の3.8mとしました。鉄骨造建物で一般的な柱の間隔7.2m程度の場合、梁の表側と裏側を吹付けると従来工法では6~8回の移動が必要だったところ、4回の移動で吹付けを完了でき、作業効率が大幅に向上します。

 

  • 吹付け施工範囲の比較

    建設技能者による施工(従来)

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    本ロボットでの施工

実験の結果、建設技能者では1日当たりの吹付け面積(2時間耐火仕様)が150m²程度だったのに対し、耐火被覆吹付けロボットでは200m²程度の吹付けが可能になり、作業効率が約3割向上することを確認しました。

1日当たりの吹付け面積の比較

協働する建設技能者は快適・安全に作業可能

従来使用していたホース先端に取り付ける吹付けノズルでは、吐出したロックウール材料が養生シートなどで囲った作業区画内に大量に飛散・浮遊するため、建設技能者は通気性の悪い防護服を着用することが必須で、特に夏場は負担の大きい作業となっていました。

また、ロボットにとっても浮遊する微細なロックウールは、装置のジョイントや精密部品などに侵入し故障の原因となる危険性があります。

今回開発した専用の粉じん飛散防止ノズルは、吐出したロックウールをミスト状の水で包み込むことで飛散量を約7割削減でき、協働する建設技能者の作業環境を改善するとともにロボットの安定的な稼働に寄与します。

また、安全対策として、自動走行中や吹付け作業中に耐火被覆吹付けロボットの近傍に侵入した建設技能者や障害物を、複数のセンサーで認識し、自動的に減速して停止する機能を備えています。

粉じん飛散防止ノズル

大林組は、今回開発した耐火被覆吹付けロボットを2020年度に建築現場へ実適用することとしています。今後は、ロボットの高機能化を進め、より多くの現場に適用しやすい技術としていくことで、深刻化している建設技能者不足の解消に貢献していきます。

東日本ロボティクスセンターで行った耐火被覆吹付けロボットのデモの様子を動画でご覧いただけます

(動画再生時間:3分)

  • ※1 半乾式吹付けロックウール工法
    ロックウールとセメントスラリーを吹付けノズル先端部で混合しながら鉄骨面に吹付ける耐火被覆工法
  • ※2 建設技能者と同等の品質
    被覆厚さが規定値以上、被覆の比重がロックウール工業会の施工管理基準値の0.28以上

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室広報第一課
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