構造物基礎を補強する「ハイスペックマイクロパイル工法」の適用範囲を拡大しました

杭径の拡大、岩盤への適用、土留め杭タイプの開発により適用実績が増加

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、当社開発の構造物基礎を補強する高性能小口径杭工法「ハイスペックマイクロパイル工法」を改良し、適用範囲を拡大しました。適用可能な杭径の拡大や岩盤への適用を可能としたことに加え、土留め杭タイプの開発を行ったことで、近年適用実績が増加しています。

ハイスペックマイクロパイル工法を高速道路などに近接した土留め杭として適用

高度経済成長期に建設された橋やトンネルの老朽化は社会的に大きな課題となっており、これらの既設構造物に対して、できるだけ交通規制を伴わず、経済的かつ短い工期で実施可能な補強対策が求められています。

一方、構造物基礎を通常の杭で補強する場合、大型重機を使用する必要があるため、これまで、交通量の多い都市部では道路占有に伴う交通規制をせざるを得ず、また、道幅が狭く傾斜のある山間部では搬入経路や施工スペースが確保できないなどの課題がありました。

道路橋基礎などを補強する高性能小口径杭「ハイスペックマイクロパイル工法」

大林組が開発し、展開しているハイスペックマイクロパイル工法は、大型重機を使用しづらい施工環境に対応した小口径杭工法です。本工法は、削孔専用の2本の鋼管で二重管削孔(※1)した地盤に杭として利用する鋼管を挿入し、鋼管の内部と周囲をセメント系材料で固め強化させます。

同時に、杭先端部に特殊冶具を使用してセメント成分を行き渡らせた後に鋼管を持ち上げて杭頭部材と連結することで、杭にかかる荷重をしっかりと支える強固な支持力を確保します。コンパクトで軽量な機械で施工できることから、狭いスペースや3.5m程度の高さ空間の場所、工事用足場の上での施工が可能です。

(左)ハイスペックマイクロパイル工法の概要図、(右)ハイスペックマイクロパイル工法の施工手順

これまで交通規制を最小限に抑えられるといった特長を活かして本工法を展開してきましたが、大きな構造物を補強する場合には施工箇所当たりの杭の本数が増加することから、工期が長くなりコストも増大してしまうケースがありました。また、これまでは砂、粘土、砂利のような地盤を対象としていたため、硬い岩盤には適用できないとういう問題がありました。

今回大林組は、適用可能な杭径を拡大することで施工箇所当たりの杭の本数を削減し、また、硬い岩盤への適用のほか、低コストな土留め杭としての利用もできるよう本工法を改良しました。

   

改良したハイスペックマイクロパイル工法の特長は以下のとおりです。

杭径を拡大し、杭の本数を削減することで、工期短縮とコスト低減を実現

従来、適用可能な鋼管径は直径165.2mmと190.7mmの2種類でしたが、工法と付属設備の改良を行ったことで、コンパクトで軽量な機械本体を活かしたまま直径267.4mmの鋼管でも設計・施工できるようになりました。大きな構造物に適用する場合、杭径を拡大することで1本当たりの補強性能が増大し、施工箇所当たりの杭本数を削減できるため、工期は約3割短縮し、コストも約1割低減できます。

硬い岩盤でも施工可能に

従来の打ち込みや回転させながら押し込んで構築する鋼管杭工法は硬い岩盤では施工できませんでした。今回、コンパクトで軽量な機械本体はそのままで、ダウンザホールハンマー(※2)を活用できるよう改良したことで、硬い岩盤でも杭の構築が可能になりました。日本全国ほとんどの岩盤で施工でき、適用エリアは従来の約2倍に拡大しました。山間部など硬い岩盤が出現する箇所でも施工実績があります。

工程や施工設備のスリム化で土留め杭としても適用可能に

斜面などに施工する土留め杭は、杭の上から大きな荷重がかかることはないため、従来のハイスペックマイクロパイル工法の仕様のうち特殊冶具で先端部を強固にする工程や鋼管を持ち上げて杭頭部材と連結する工程を省略し、低コストな土留め杭としての適用を可能としました。

盛土上の道路脇など作業スペースを確保しにくい施工環境においては、従来の大型の杭打ち機械を用いた土留め杭施工では大規模な工事用足場が必要となり工費も工期も増大します。本工法はコンパクトで軽量な機械を使用するため、工事用足場を小型化でき、組み立て・解体にかかる工期を最大約4割短縮し、使用する部材も最大約2割削減できます。

【盛土上の道路の車線拡幅に伴う土留め杭の適用イメージ】

乾式削孔方法(※3)の開発により、排出土砂の処分費も低減

通常、構造物基礎の補強杭では地盤の地下水位よりも深く杭を構築するので、削孔時に地下水が湧出し、削孔で発生した土砂と混ざり泥水となります。この場合、地上から削孔鋼管内に送水し泥水を循環させることで土砂を地上に排出しますが、水分を含んだ軟弱な排出土砂が多く発生します。

このたび、盛土上の道路脇など地下水位より浅く杭を構築する場合でも土砂排出を可能とするため、空気の圧送と少量の泥水を用いる乾式削孔方法を開発しました。軟弱な土砂の処分費を削減でき、さらにコストを約1割低減することが可能になりました。

大林組は、今後増加が見込まれる構造物基礎の補強工事や高速道路および鉄道に近接した狭いスペースでの土留め杭工事に本工法を積極的に適用していく予定です。また、さらなる適用市場の拡大を図るとともに、安全かつ高品質な杭の構築に努めてまいります。

累積適用実績
 
  • ※1 二重管削孔
    外側と内側の二重の独立した削孔管で削孔する方法。削孔後に孔壁が自立しない(落盤する)弱い地盤においても、外側の管が地盤を押さえるため崩れてくることなく削孔できる

  • ※2 ダウンザホールハンマー
    岩盤などの硬質地盤を対象とした杭打ち施工に適用するもので、重機先端のハンマーを上下運動させ、衝撃力で岩盤を砕いて掘削する方法

  • ※3 乾式削孔
    内側の削孔用鋼管に送った大量の空気と少量の水により、目詰まりすることなく空気圧を利用し、掘った土砂を排出して掘削する方法

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室広報第一課
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