洋上風力発電に関する着床式・浮体式2つの建設技術を確立しました

着床式において実大規模のスカートサクション®の設置、撤去を実証

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、このたび着床式および浮体式の2つの形式で洋上風車建設に関わる技術を確立しました。

2019年4月に再エネ海域利用法(※1)が施行されたこともあり、洋上風力発電の整備計画が各地で相次ぐなど、今後洋上風車の建設需要が本格化することが予想されます。風車の構造形式は、風車の支柱が海底まで到達している着床式と、風車自体が海洋に浮いている浮体式とに分別され、着床式は比較的水深が浅い場合に、浮体式は水深が深い場合に適しています。

大林組では、それぞれの形式に適応した洋上風車の建設技術の開発を進めており、着床式では、実大規模の「スカートサクション(※2)」を実際に洋上に設置および撤去することで、洋上風車基礎としての適合性を実証しました。また、浮体式では、コンクリート製浮体を海底地盤に緊張係留する「テンションレグプラットフォーム型 浮体式洋上風力発電施設」を考案し、一般財団法人日本海事協会(Class NK)からの設計基本承認を取得しました。

  • スカートサクションによる洋上風車基礎

  • テンションレグプラットフォーム型の浮体式洋上風力発電施設

国内初となる実大規模のサクション基礎の設置および撤去を実証

洋上でのスカートサクション設置

今回設置および撤去を行ったスカートサクションは、全高33m、スカート長さ8m、スカート径12mであり、水深13mの海中に設置しました。設置後約2週間、基礎に作用する波力、基礎の応力や変位・傾斜角などを計測し、計測終了後はスカート内への注水により基礎を完全撤去することで、スカートサクションの洋上風車基礎としての適合性を実証しました。水圧を利用して海底地盤に貫入させる基礎(サクション基礎)の施工例はこれまでもありますが、洋上風車の基礎になり得る実大規模で、実際の波浪を受ける洋上に設置し、撤去まで実施したのは国内初です。なお、当該技術は、一般財団法人沿岸技術研究センターから、港湾関連民間技術の確認審査技術評価証を取得しています。

注水撤去状況

スカートサクションを採用した浮体式洋上風力発電施設の設計基本承認を取得

浮体を係留させるためのテンションレグプラットフォーム型は、浮体とそれを海底地盤に緊張係留(浮体構造物の余剰浮力により生じる緊張力を利用して海底地盤に固定)するためのテンションレグと、テンションレグを海底地盤に固定するアンカーから構成されます。カテナリー形式(※3)に比べて海域の占有面積が小さく済むため、生物への影響を抑えられるとともに、係留材が少量で済む、また、洋上風車の動揺が小さいため発電効率が高くなるなどのメリットがあります。

大林組では、アンカーにスカートサクションを採用した「テンションレグプラットフォーム型 浮体式洋上風力発電施設」を考案しており、このたび、一般財団法人日本海事協会から、一定の条件を規定することで当該施設の設計が可能であることを承認するAIP(設計基本承認)を取得しました。AIPを取得したことで、テンションレグプラットフォーム型の浮体式洋上風車は、これまでの机上での検討段階から実現に向けた一歩を踏み出しました。

大林組は、これら技術の確立により高性能かつ低コストな洋上風車の建設を実現し、これを通じて持続可能な社会の実現に貢献していきます。

  • ※1 再エネ海域利用法
    「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(平成三十年法律第八十九号)」の略称

  • ※2 スカートサクション
    頂版および頂版から下方に伸びた円筒形の鉛直壁(スカート)で構成されており、スカート内からの排水によって発生するサクション(スカート内が静水圧以下になること)を利用して海底地盤に貫入させる。着床式であるモノパイルやジャケットの杭を打設する際に用いる大型の機械が不要となるため、無振動・無騒音で基礎の施工が可能

  • ※3 カテナリー形式
    浮体に長い鎖を取り付け、鎖の自重によって富士山の稜線(りょうせん)状に湾曲した形状により浮体を保持する形式。一般に、鎖が三方あるいは四方に広がるように設置されるため、海底面の広い範囲を占有することになる

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室広報第一課
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