城郭石垣の崩落を防止する補強材「グリグリッド®」を開発しました
大規模地震時における耐震性の向上を検証し、熊本城天守閣石垣に適用
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プレスリリース
株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、城郭石垣の背面に積まれる栗石(ぐりいし)層に敷設して大規模地震時の石垣の崩壊を防止する補強材「グリグリッド」を開発しました。本技術は、熊本城天守閣石垣の一部で補強工法として採用されています。
近年発生した大規模地震の影響により過大な変形や崩壊が発生した城郭石垣は、一旦解体し、積み直すことで復旧されますが、文化財的価値を保全するために、構築当時と同じ材料と手法を用いて施工する必要があります。石垣前面に積まれる築石(つきいし)は、元の位置に戻し、背面に積まれる栗石は、伝統的手法と同様の人力で噛み合わせていきます。
石垣の前を人が通行する箇所では、従来、安定性を向上させる目的で栗石層にジオグリッド(※1)を敷設する補強方法が採用されていましたが、粒径200~300mm程度の栗石を従来のジオグリッドで補強する場合、格子間隔が50mm×50mm程度と狭いため栗石層の噛み合わせが阻害され、伝統的手法を適用できなくなることがありました。また、従来品は、ポリエチレン製の芯材をポリプロピレンで被覆した帯材で構成されているため柔らかく、地震時の栗石層の流動に追従して変形してしまうといった課題もありました。
今回大林組が開発したグリグリッドは、伝統的石積み手法を阻害せずに、地震時の耐震性を向上させる補強材です。
【従来のジオグリッドを敷設した場合の補強イメージ】
【グリグリッドを敷設した場合の補強イメージ】
グリグリッドの特長は以下のとおりです。
伝統的手法との両立により石垣の文化財的価値を保全します
グリグリッドは、従来品と同じ帯材とステンレス鋼をワッシャーを用いて格子状に接合したシート材です。従来品は、格子交点部を熱溶着で固定していますが、グリグリッドは、格子交点部にワッシャーを用いることで、格子間隔を容易に調整できます。石垣によって栗石は粒径が異なりますが、それぞれの石垣の栗石の粒径に合わせて格子間隔を調整することで、栗石の噛み合わせを重要視する伝統的手法と両立させることができるため、文化財的価値を保全しながら敷設することが可能です。
石材の変形を拘束することで大規模地震時の崩壊を防止します
地震を受けた石垣は、背面の栗石が築石側に流動することで変形し、その変形が蓄積された結果、崩壊に至ります。グリグリッドを栗石層に敷設することで、栗石の流動方向に対し直交する向きにステンレス鋼が配置されるため、ステンレス鋼の剛性によって栗石の流動を拘束し、崩壊を防ぐことが可能となります。
グリグリッドで補強した実物の5分の1スケールの模型石垣に地震動を作用させた結果、従来品で補強した模型石垣に対し、1.25倍耐震性が向上することを検証しました。
大林組は、今後もグリグリッドを全国の城郭石垣の復元や積み直しに積極的に提案し、文化財の保護と施設利用者の安全確保に貢献していきます。
- ※1 ジオグリッド
直交する二方向の帯材を交点で結合した格子状構造のシート材。盛土の補強に用いられる
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室 広報第一課
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