香川県庁舎東館が国土交通大臣賞 耐震改修優秀建築賞を受賞

ザ・ホテル青龍 京都清水、弘前れんが倉庫美術館も耐震改修優秀建築賞を受賞しました

サステナビリティ

日本建築防災協会が主催する「2020年度(第10回)耐震改修優秀建築・貢献者表彰」において、大林組が改修工事を行った香川県庁舎東館(香川県高松市)が国土交通大臣賞 耐震改修優秀建築賞を、ザ・ホテル青龍 京都清水(京都市東山区)と弘前れんが倉庫美術館(青森県弘前市)が耐震改修優秀建築賞を受賞しました。

この表彰は、耐震改修を実施した建築物のうち、特に耐震性、防災・安全性、意匠などに優れた建築物や、耐震改修技術の発展などに顕著に貢献した個人・団体に贈られるものです。

国土交通大臣賞 耐震改修優秀建築賞

香川県庁舎東館

香川県庁舎東館は、1958年に完成した戦後モダニズム建築を象徴する建物で、建築家・丹下健三氏の初期の代表作です。9階建ての高層棟と3階建ての低層棟の2棟で構成されています。

県民に開かれたオープンスペース、コンクリートによる伝統的木造建築物を想起させる表現、県産のあじ⽯を使用した地域性豊かな南庭を有しており、文化的価値の高い建物として「文化遺産としてのモダニズム建築(DOCOMOMO japan)」にも選ばれています。

文化的価値を損なうことなく、防災拠点施設としての十分な耐震性を確保するために、改修工事では高層棟・低層棟の地下を一体化した基礎下に免震層を設ける免震レトロフィット工法(※1)を採用しました。

良好な保存状態の地上部建物を丸ごと保存し、外構部分にも細心の保存修復技術を投入した今回の工事は、戦後モダニズム建築の歴史的価値への見極めとそれに即した理想的な補強方法を採用した好事例として、高く評価されました。

  • ※1 免震レトロフィット工法
    上部の建物に耐震部材を加えることなく、建物と地盤との間に免震装置を挟み込むことで建物の揺れを抑える
香川県庁舎東館全景(左:高層棟、右:低層棟)。南庭は免震層構築のためいったん取り壊し、建設当初の設計意図を反映して修復を行った
  

耐震改修優秀建築賞

ザ・ホテル青龍 京都清水

昭和初期(1933年)に建設され、2011年に閉校された鉄筋コンクリート造4階建ての小学校を高級感あふれるホテルへと改修・増築しました。

地盤の高低差などを考慮して、コの字形の建物を4つのゾーンに分けて耐震補強を計画しました。耐震壁の増設・増厚や開口部の閉鎖、床下へのコンクリート増し打ちによる剛床化などの耐震補強を行い、高い耐震性能を実現しました。

「京都市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」に基づき、既存校舎の内外装のデザインを最大限に活かすさまざまな工夫を行うとともに、防火安全性や周辺環境への影響、地域住民による活用などにも配慮したことが評価されました。

2019年に完成したホテル全景。工事では天井部材の補強や間柱の設置、躯体の劣化部分の撤去・補修なども実施(撮影:Forward Stroke)

耐震改修優秀建築賞

弘前れんが倉庫美術館

1923年、青森県弘前市に酒造工場として建設され、1965年以降は米備蓄倉庫などに利用されていたれんが倉庫を2020年、地域住民の交流機能を備えた美術館に改修しました。

改修工事では、レンガ壁の内部に高強度のPC鋼棒を挿入し緊張することで耐震性と耐久性を向上させるとともに、内外のレンガ壁の美観を保持しました 。屋根の骨組みには既存部材を再利用して倉庫らしさを残しつつ、RC(鉄筋コンクリート)や耐震ブレース付き鉄骨を配置したり、剛床を構築したりすることで大空間の展示室や吹き抜けを創出。倉庫から美術館への機能の転換を図っています。

今回の受賞は、耐震改修により長年活用され続けた建築の価値を共有し、官民一体で地域の拠点をもたらした好事例として高く評価されました。

レンガつくりの2棟がL字型に連結された弘前れんが倉庫美術館。国内外の先進的なアートや弘前・東北地域の歴史、文化に関する作品が展示されている

大林組は、建築物の耐震性の向上に寄与することで、歴史的価値の保存と継承、安心して暮らせる街づくりに貢献していきます。