地熱発電およびグリーン水素製造の実証プラントが完成、地産地消に向けて出荷を開始

脱炭素社会の実現に向けてグリーン水素の製造から供給までの日本初となる実証

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、大分県玖珠郡九重町において、地熱発電およびその発電電力を利用してグリーン水素(※1)を製造する実証プラントを建設し、出荷を開始しました。地熱発電電力を活用したグリーン水素を、複数の需要先へ供給するまでの一連のプロセスを実証する日本初の試みです。

2050年のカーボンニュートラルによる脱炭素社会を実現するにあたり、利用段階でCO2が排出されない水素は次世代エネルギーとして期待されています。特にグリーン水素は製造過程でも炭素を発生させず、再生可能エネルギーへの転換を加速させる相乗効果も見込まれています。

大林組では、2014年から水素の可能性に着目し、将来の水素社会において建設業で培った技術やマネジメント力を活かすため、神戸ポートアイランドにおける「水素コジェネレーションシステム」の実証実験や、ニュージーランドにおいて同国内で初となるメガワット級の地熱発電由来のグリーン水素製造・供給施設の稼働など、さまざまな取り組みを実施してきました。

本実証は、大林組が日本国内においてグリーン水素の製造と供給を実証する第一弾として、大分県の資源である地熱を活用して製造したグリーン水素を九州各地に搬送します。また、トヨタ自動車株式会社が当該水素を水素エンジン車両の燃料として利用するなど、業界の枠を超えた供給先各社の協力のもと、グリーン水素の地産地消を通じて、地域住民をはじめとした多くの方々に再生可能エネルギーの利用や水素社会の到来を身近に体感いただくことをめざします。

このたび、大分地熱開発株式会社の協力を得て、地熱発電とその発電電力を利用してグリーン水素を製造する実証プラントが竣工し、開所式を執り行うとともにヤンマーパワーテクノロジー株式会社が実施する船舶用燃料電池システムの実証試験用燃料として出荷しました。

地熱発電電力を活用したグリーン水素製造実証プラント
地熱発電能力:125kW(家庭用消費電力約150世帯分)
グリーン水素製造量:10Nm³/h(※)(FCV30~40台分、FCフォークリフト4~5台分)
※発電電力のうち50~60KWの使用を想定
開所式におけるテープカット (左から)九重町議会 菅原議長、大分県 広瀬知事、大分県議会 小川議員、大林組九州支店長 引田

今後、大林組が開発した複数の運転モード(※2)を備えた水素製造プラント向けエネルギーマネジメントシステム(EMS)(※3)を用いて、バイナリー発電機(※4)により発電した地熱発電電力を利用して、さまざまなグリーン水素製造パターンの検証を行います。EMSには、水素搬送車両に装着したGPS端末から搬送状況を把握し、車両の発着スケジュールに合わせてプラントを停止せずに効率よく連続運転できる制御機能を備えています。車両の搬送状況も監視しながら、効率よく水素を製造することで、水素をエネルギーキャリアとして活用するためのビジネス環境やインフラを整備、拡充していきます。

大林組は、再生可能エネルギーによるグリーン水素の製造、輸送、貯蔵および供給のサプライチェーン全体で取り組むことにより、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

主な供給先

トヨタ自動車株式会社/トヨタ自動車九州株式会社

トヨタ自動車
グリーン水素を水素エンジン車両の燃料として利用
トヨタ自動車九州
同社が構内に導入している「水素ステーション」のFCフォークリフト用燃料として、また、同社PR館の電力供給に用いている定置燃料電池用の燃料として供給予定

ヤンマーパワーテクノロジー株式会社

同社が、トヨタ自動車製MIRAI用燃料電池ユニットなどを組み合わせて開発している船舶用燃料電池システムを搭載した実証試験艇の燃料として供給予定

公益財団法人水素エネルギー製品研究試験センター(HyTReC)

同法人が実施する水素エネルギー関連製品の製品試験用ガスとして供給予定

福岡酸素株式会社

同社が運用する「水素ステーション久留米」のFCV用燃料として供給予定

大分EBL水素ステーション株式会社

江藤酸素株式会社と江藤産業株式会社が共同で運営する大分県唯一の水素ステーション「大分EBL水素ステーション」のFCV用燃料として供給予定

  • ※1 グリーン水素
    低炭素でクリーンな水素は、以下の3種類に分類される。
    ・グリーン水素:再生可能エネルギーを利用して製造した水素
    ・ブルー水素:化石燃料を利用して水素を製造し、製造の際に発生する二酸化炭素の回収・利用・貯留(CCUS)と組み合わせることで、低炭素な水素として取り扱うもの
    ・グレー水素:化石燃料を利用して製造した水素
  • ※2 複数の運転モード
    ・水素最大製造モード
    年間水素製造量が最も多くなる運転モード(水素製造装置を負荷率および稼働率ともに100%で運転するモード)
    ・水素製造単価最安モード
    水素の製造単価が最も安くなる運転モード(周辺機器を含めた水素製造装置の効率が最大となる運転点で運転するモード)
    ・グリーン電力優先モード
    水素製造のための電力のうち地熱発電電力の割合が高くなる運転モード(できるだけ周辺機器動力+水素製造電力=地熱発電電力となるよう運転することで、系統電力からの買電電力を極力少なくする運転モード)
  • ※3 エネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)
    ビルや工場などで省エネを図るため、ITを活用してエネルギーを最適制御するシステムのこと
  • ※4 バイナリー発電機
    沸点の低い媒体を加熱・蒸発させてその蒸気でタービンを回す装置。蒸気が比較的、低温あるいは低圧の地熱においても多くの発電量を得ることができる

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室 広報課
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