広報誌『季刊大林』61号(特集:デジタルツイン)を発行
みんなでつくるまち『OWNTOWN(オウンタウン)』構想
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プレスリリース
株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、このたび、広報誌『季刊大林』61号を発行しました。
『季刊大林』では1978年の創刊以来、「わたしたち人間は、かつて何を建設してきたのか、そして未来に何を建設できるのか」ということを、時代や文化と共に考察してきました。
デジタル空間上に現実世界の双子(ツイン)を再現し、デジタル空間でのシミュレーションなどを現実世界にフィードバックするデジタルツイン。製造分野においてはすでに取り組まれていたその仕組みが、建設業にも浸透を始めています。本号では、デジタルツインの今と未来、そして人間の想像力などに与える可能性について論考しています。
また、大林組技術陣による誌上構想「大林組プロジェクト」では、デジタル空間上に現実のまちを再現し、実際に住む人たちがそれぞれ自由に快適な暮らしを描く新しいまちづくりとして、みんなでつくるまち『OWNTOWN(オウンタウン)』 構想に挑戦しています。
大林組では今後とも、建設にまつわる文化を考察する『季刊大林』の発行を社会文化活動の一環と位置付け、環境・情報・防災など現代社会において重要なテーマを積極的に取り上げていく予定です。
『季刊大林』と「大林組プロジェクト」について
『季刊大林』は、1978年発刊の創刊号「ピラミッド」から現在に至るまで、建設という視点を通して人類が築き上げた文明、文化を考証し、また未来社会のあり方を模索する広報誌をめざしてきました。その間、国内外の数多くの研究者・専門家の方々にご参加いただき、他に例のない学術的広報誌として高い評価を頂いています。
『季刊大林』の大きな特徴となっているのは、社内で編成したプロジェクトチームが歴史的建造物の復元や検証、未来社会に寄与する建造物や街の構想などに挑戦し、そのプロセスと成果を誌上で発表する「大林組プロジェクト」です。
復元の例としては、「古代出雲大社本殿」「光源氏の邸宅・六条院(寝殿造り)」「古代アレクサンドリア図書館」「豊臣秀吉が建立した大仏殿」、未来構想の例としては、「火星居住計画構想」「都市全体を免震化するゼリー免震構想」「宇宙エレベーター建設構想」「スマート・ウォーター・シティ東京建設構想」「森林と共に生きる街『LOOP50(ループ50)』建設構想」「テクノロジーでつくる循環型農業『COMPACT AGRICULTURE(コンパクト アグリカルチャー)』などがあります。これらは、大林組の技術水準を示すだけでなく、建設の面白さ、奥深さを垣間見せ、建設文化への理解を深める格好の機会として社会的にも話題となりました。
『季刊大林』61号「デジタルツイン」概要
「デジタルツイン(Digital Twin)」は、現実の世界にあるさまざまな情報をセンサーやカメラを使い、デジタル空間上に双子(ツイン)のようなコピーを再現するしくみのことです。
製造分野においては早くからこの仕組みを活用し、デジタル空間で事前のシミュレーション・分析・最適化を行い、それを現実空間にフィードバックする試みが行われてきました。現在では、IoTやAI、画像解析などの技術の進化により、建設業界をはじめ、さまざまな分野にその活用が広がりつつあります。
本号では、デジタルツインの全体像をとらえるとともに、今後の可能性を紹介します。また、大林組技術陣による誌上構想「大林組プロジェクト」では、デジタルツインを活用した新たな「まちづくり」の在り方を描いてみました。
都市のデジタルツインの今と将来への期待
葉村真樹(東京都市大学総合研究所未来都市研究機構 機構長・教授)
デジタルツインとは、単にデジタル空間上での表現ではなく、連動する現実空間へのフィードバックがあるという。何がそれを可能にしたのか、どのように活用されているのか。都市における活用を中心にデジタルツインの今を紹介する。
デジタルツインが育む「未来の建築」
茂木健一郎(脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所 上席研究員)
ヒトの脳にとって「現実」に対する「仮想」は常に大きな意味をもっており、未来の建築は仮想が豊かに現実を照射するデジタルツインの中でこそ生まれる。脳科学者の立場で、デジタルツインを考察する。
クローン人格
田丸雅智(ショートショート作家)
短い中に不思議なアイデアや印象的な結末が描かれ、「短くて不思議な小説」と定義されることもあるショートショート。現代ショートショートの第一人者である田丸雅智氏が描く、デジタルツインが発達した未来世界とは。
もうひとつの世界
藪前知子(キュレーター、東京都現代美術館 学芸員)
古代から私たちは、アートを通して「もうひとつの世界」こそが現実なのだという感覚に気付いていたのかもしれない。アート作品という向こう側の世界をグラビアで紹介し、「もうひとつの世界」が人間に与えてきた想像力と創造性について解説する。
シリーズ 藤森照信の「建築の原点」⑫ シャボロフカのラジオ・タワー
藤森照信(東京大学 名誉教授、東京都江戸東京博物館 館長、建築史家・建築家)
建築史家にして斬新な設計者としても知られる藤森照信氏が、建設物を独自の視点でとらえるシリーズ。今回は、情報化というイメージを建築上で最初に表現したのは誰でどのようなものか、という課題に向き合った。
<仕様等>
- 書名 季刊大林 61号「デジタルツイン」
- 仕様 B5判、4C、本文50頁
- 発行・企画 株式会社大林組コーポレート・コミュニケーション室
- ISSNコード 0389-3707
- 発行日 2021年12月20日
大林組プロジェクト
みんなでつくるまち『OWNTOWN(オウンタウン)』構想
あなたが暮らしている街とまったく同じ街がスマホやデジタル端末の中にあって、自由自在にそこでの暮らしを試すことができたら何をするだろう。まるでゲームのように手軽に都市の再開発や街づくりのシミュレーションができたら、きっとたくさんの人が、街が快適になるアイデアを考えるにちがいない。
「OWNTOWN」構想はデジタルツインを基盤に、国や自治体ではなく、住む人の手によってみんなが快適に暮らせる環境を築き上げる、まったく新しいアプローチによる街づくりの試みだ。
"みんなでつくる"と正解に近づく
街づくりの理想は、住む人の街や未来への思いを可能な限り活かすことだが、それは容易ではない。しかし、デジタルツインを活用することで、住む人のさまざまな思いやアイデアをデジタル空間で具体化し、シミュレーションを重ね、皆が納得する案に仕上げ、その最終形をリアルな街に反映していくことが可能だ。
OWNTOWNは、みんなの集合知によって街がつくりあげられる。
街を"考える"ための仕組み
情報を活用するためには、あらゆる分野の情報の中から必要なものを一つにまとめ、誰でも利用できるかたちにして提供するための土台となるプラットフォームが必要だ。OWNTOWNでは、まちづくりや暮らしに必要な情報を使いやすくまとめた「建築プラットフォーム」を用意する。
また、デジタル技術や建設の専門家でなくても簡単に利用できるツールが「建設アプリ」だ。アプリと対話するだけで、住む街(場所)選びから施工計画づくりまで実施することが可能だ。
街を"つくる"ための仕組み
デジタルツインで簡単に街づくりができても、実際に住み始めるまでに時間がかかってしまえば、デジタル上での計画と実空間が同調せず、意味がない。そこで、OWNTOWNでは、インフラや住まい、街を構成する施設すべてをユニット化する。玩具のようにユニットを組み立てたり組み替えたりすることで多様な街をつくることが可能で、デジタルの計画速度と現実の街の変容速度のスケールが近づき、建設プラットフォーム上で誰もが街づくりを考えやすくなる。
ただし、これまでのユニット建築はコンテナ状を組み合わせるようにして空間をつくり出していたが、OWNTOWNでは、部材・部品をモジュール化しそれらを組み合わせてユニットをつくる。従来のユニット建築ではサイズや色を選べる程度だったのが、デザイン・機能の自由度が飛躍的に高まり、多くのニーズへの対応も可能だ。
以上
この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室 広報課
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プレスリリースに記載している情報は、発表時のものです。