耐火性能検証とBIMをデータ連携し、一元化する設計システム「SHAREDTIK™」を開発

デジタライゼーション技術を駆使して7割以上の業務削減効果

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、建築物における合理的で自由度の高い性能設計を実現するための工学的な検証の一つである耐火性能検証法とBIMを相互連携し、データを一元的に利用する設計システム「SHAREDTIK™(シェアードティック)」を開発しました。

本システムは、デジタライゼーションを活用した新しい技術を駆使してサービスを提供し、建物の価値の向上を図るとともに設計業務の変革に寄与する業界初の取り組みです。

従前のフローとSHAREDTIK™のフローとの比較

従来、高層建築物に対して構造耐力上の安全性に高度な計算を適用するとともに、耐火性能検証法(※1)に関する性能規定(※2)を適用し、安全安心な施設を提供してきました。しかし、従来の耐火性能検証方法は、2Dの建築図や構造図、構造計算書から検証に必要な情報を読み取り、火災継続や保有耐火の時間をプログラムに入力し、その計算結果を検証し耐火性能を判定していました。そのため、BIMで作成した設計図と耐火性能検証に添付する2D図書などとの整合性確認に手間がかかるうえ、入力ミスが発生する恐れもありました。そして、正確な計算結果を求めるためには、情報入力や抽出、計算のたびに確認作業を行う必要があり、多大な時間が必要でした。

今回開発したシステムは、耐火性能検証法に必要な情報や計算および判定を、BIM上でデータ抽出と自動計算を実行し、結果を帳票や図面として出力するため、正確かつ合理的でスピーディーな検証と書類作成が可能となりました。

大林組のBIM業務基準であるSBS(Smart BIM Standard)の場合、BIMのデータは建築情報と構造情報をワンモデルワンファイルで保持しているため、耐火性能検証の計算に必要な情報は、BIMに保有された情報から自動的に計算式に代入され、計算結果が算出されます。転記や計算ミスが発生せず、BIMから出力された設計図と耐火性能検証計算書の記載内容が整合します。さらに、耐火性能検証の計算情報が反映されたBIMのデータをそのまま設計から施工、運用に活用できるので、設計から施工への情報伝達漏れや施工不備を未然に防止でき、竣工後にもデータを利用した改修計画が可能となります。

SHAREDTIK™は、ソフト開発ベンダー(※3)の協力を得て、耐火性能検証とBIMのデータ連携に必要な情報の選定やデータの自動抽出、計算と判定、そして帳票出力を実現しました。また、検証作業者(※4)が耐火性能検証を実際に適用した案件でBIMへの付加機能が正常に機動することを実証し、従来の性能評価と同じ結果を得ることができました。

SHAREDTIK™の特長は以下のとおりです。

検証にかかる工程数や時間および費用を大幅削減

BIMのデータを用いて、耐火性能検証に必要な情報を自動計算処理するプログラムをBIM機能に搭載しました。データが自動的に活用されるため、転記ミスは発生せず、計算の手間が省略できます。また、自動計算を行うことで整合性の確認作業がなくなり、検証作業時間の削減や性能評価および大臣認定での検証内容の審査の向上と時間短縮が図れるため、従来に比べ7割以上の大幅な業務削減効果が期待できます。さらに、少ない作業者での検証が可能となるため労務費の低減効果も図れ、耐火性能検証の適用案件数が増えた場合にも対応できます。

整合性が確保された建築と構造情報を重層的多面的に一元管理

火災継続時間の算定に必要な材料などの建築情報と、保有耐火時間の算定に必要な構造情報は、同一モデルからデータを抽出し、自動計算により火災継続時間と保有耐火時間の比較が機能的に処理できるため、作業性も格段に向上します。また、NGの判定が出た場合は、システム上に不備な箇所が明示されるので、BIMのデータの修正や更新、再計算することで容易に是正ができ、同時にBIMへ是正部分のフィードバックも行えるため、正確性がより向上します。

BIM連携確認申請(※5)やSmartHAK™と親和性が高く整合性が飛躍的に向上

本システムはBIM上で情報を一元化するため、各検証で使用する面積や天井高さや仕上などの情報は同一であり、また、構造部材は高層構造性能評価と避難安全検証と同一データを使用するため、従前に比べより親和性が高く整合性の向上が図れます。そのため、作成時期と過程が異なることによる内容の漏れや齟齬(そご)、評価や検証の違いによる不整合が発生する可能性もなくなりました。さらに確認済証の受領後は、そのまま施工時にも検証情報や入力されたデータが活用されるので、施工精度の向上が図れます。そして、竣工後の維持管理時にもデータの活用ができ、伝達ミスを防止し確実な品質管理に役立てることができます。

SHAREDTIK™の情報一元化フロー

大林組は、今回の取り組みを通じて得たデジタライゼーションによる技術と知見を活かし、より分かりやすく簡便な方法で高度な設計システムを活用します。今後も指定性能評価機関と合理的かつ効果的な審査の連携を取りながら、性能評価や確認申請の正確性向上を図る設計システムの活用を推進します。また、クライアントからの要望に対しては、デジタルを駆使した最適なサービスを提供していくとともに、生産から維持管理までの一連のプロセスをSBSと連携し、生産性の向上および労務環境の改善を図ります。

  • ※1 耐火性能検証法
    建物の特性(用途、計画、構造形式)に応じた合理的な耐火設計を行うこと。火災安全性能の性能規定
  • ※2 性能規定
    建築物において建物全体で求められている安全上、防火上、衛生上重要である性能を確認する方法。寸法や形など、建物の部位ごとに細かく規定が設けられた仕様規定よりも柔軟な設計が可能となる
  • ※3 ソフト開発ベンダー
    株式会社イズミシステム設計。本システムに必要な、BIMに耐火性能検証の自動計算をする付加機能を新規に開発した
  • ※4 検証作業者
    株式会社大林デザインパートナーズ。大林組の設計関連のグループ会社として2009年10月に設立。高品質な建築図面作成、CG製作、提案書の製作および印刷などを提供
  • ※5 BIM連携確認申請
    国土交通省 建築BIM推進会議内 部会3「BIMを活用した建築確認検査の実施検討部会」
    建築確認におけるBIM活用推進協議会にて2019、2020年に検討・発表された成果に準じた、大林組独自のBIM連携による建築確認申請の設計システム

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室 広報課
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