橋梁リニューアル統合管理システム「OBRIS™」を開発

道路橋リニューアルの生産性・施工品質向上を実現します

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、高速道路橋の大規模更新プロジェクトにおいて、既設構造物の出来形測量から新設構造物の設計、プレキャスト部材(床版と壁高欄)の製作、現場施工、維持管理までのデータを一元的に活用することで、各フェーズでの業務を効率化するクラウド型統合管理システム「OBRIS(オブリス)」(Obayashi Bridge Renewal Integrated System)を開発しました。

OBRIS全体概要図

国内の高速道路橋の約7割が建設から30年を経過しており、リニューアル工事が各地で進められています。今後、工事の増加に対応するためには、いかに安全と品質を確保しながら、手戻りなく早期に施工を実施していくかが課題となります。

今回開発した「OBRIS」は、設計段階で作成した3次元モデルをプレキャスト部材の製作、現場での施工、竣工後の維持管理に至るまで一気通貫で利用することで、データの受け渡しや作成過程での人為的ミスを排除し、システム上での連携により、業務を大幅に省力化・効率化する統合管理システムです。

OBRIS -D(Design:設計統合システム)、P(Production:製作統合システム)、C(Construction:施工統合システム)、M(Maintenance:維持管理統合システム)の4つのシステムで構成され、設計や施工に必要なデータが連携されることで、各フェーズにおける手作業の自動化による省力化や、デジタルツインを用いた施工シミュレーションの導入などを実現し、生産性の向上だけでなく不具合の未然防止や高品質の確保に寄与します。

「OBRIS」を構成する4つのシステムは以下のとおりです。

OBRIS-D:設計統合システム

既設橋梁の出来形を3次元レーザースキャナやUAVにより測量して点群データを取得し、基準となる3次元モデルを高精度に作成します。

この3次元モデルをベースに、道路線形データによる新設床版や壁高欄の割付け、既設床版のカット割付けを自動作成します。従来、手動で行っていた割付図の作成が割付条件を入力するだけで即座に完成するため、検討に要していた作業時間を約10分の1程度に短縮できます。

さらに、3次元モデルに各部材を設置し、部材同士の干渉の有無などを確認して、設計の不具合を回避します。

点群データ(左)から3次元モデル(右)を作成
自動作成した床版の割付図

OBRIS-P:製作統合システム

新設床版や壁高欄は、「OBRIS-D」で作成した割付図などの設計データから、部材の形状寸法を自動計算した製作図(3次元モデル)が作成され、それを工場に引き継ぐことでプレキャスト部材として製作されます。製作工程では、品質データをOBRISに記録するとともに、製作状況をカメラで監視・指導することで高品質を確保します。

製作したプレキャスト部材は、3次元レーザースキャナで形状・寸法を計測し、設計時の3次元モデルと比較することで誤差による合否判定を行います。

さらに、計測データを反映した各部材を3次元モデル上で設置し、施工シミュレーションを行うことで、設置座標を取得するとともに、製作した新設床版と既存構造物の干渉などを事前に回避できます。

床版取り替え工事において、BIM/CIMによる事前のバーチャル施工を行うデジタルツイン技術を活用するのは国内初の取り組みです。

床版製作の監視
製作した床版の点群データ

OBRIS-C:施工統合システム

施工シミュレーションで得た各部材の設置座標データをもとに、現場にて各部材を設置します。実際に設置した座標はOBRISに記録され、設置誤差を反映した修正シミュレーションを実施することで、施工にフィードバックします。床版設置における四隅の目標設置座標を高精度に検討できるため、現場での設置に掛かるタイムロスの削減や、施工箇所全体の線形確保もクラウド上で可能となります。

3次元モデルを用いた干渉確認

OBRIS-M:維持管理統合システム

測量から施工までの一連の全データは、クラウド上に格納されます。施工完了後の保守・点検時には、必要なデータ(設計・品質管理・出来形寸法・施工日など)をクラウド上から速やかに取得することができます。

クラウド上での設置座標確認

大林組は橋梁リニューアルにおいて、本システムを利用することで、生産性改善だけでなく、さまざまなリスク回避による安全な施工と高品質を実現し、既存インフラの長寿命化・機能強化に貢献していきます。

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室広報課
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