「熊本城天守閣」と「弘前れんが倉庫美術館」が第32回BELCA賞を受賞しました

サステナビリティ

ロングライフビル推進協会が主催する第32回BELCA賞において、大林組が改修を手がけた「熊本城天守閣」と「弘前れんが倉庫美術館」がベストリフォーム部門の受賞建築物に選ばれました。

BELCA賞は、長期にわたる適切な維持保全や優れた改修を実施した建築物を表彰する制度で、わが国のビルのロングライフ化に寄与することを目的としています。ベストリフォーム部門では、社会的・物理的な状況の変化に対応して長期使用のビジョンを持って蘇生させた、あるいは飛躍的な価値向上を図った建築物が表彰されます。

熊本城天守閣

2021年3月に復旧整備工事を終えた熊本城天守閣(左:大天守、右:小天守)

熊本城の現在の天守閣は、1960(昭和35)年に外観復元されたもので、2016年4月に起きた熊本地震で大きな被害を受けました。瓦が崩落するなど内外部が被災しましたが、熊本のシンボルであり早期復旧が望まれる中、2021年に震災前の姿を取り戻しました。

耐震改修では、多様な制震、耐震技術を駆使して杭への負担を軽減しました。特に被害が大きかった小天守は、建築物と石垣を分離する跳ね出し架構を構築。瓦屋根は湿式工法の土葺(ぶ)きから乾式工法の瓦桟木にして軽量化しました。

さらに、防火シャッターの設置や、スロープ、エレベーター、多目的トイレ、触地図の設置など、安全性向上とバリアフリー化を実現。

外国語の音声案内を全てのトイレに設置するインバウンド対応や、快適に見学できるよう空調エリアを拡大しながら設備は各階の機械室内に設置するなど、外観に配慮した改修も施しました。

完全な修復には今後30年を要するとされる中、熊本城内全体の復興を待たずに見学できるようになった天守閣は、末長く親しまれることを期待され、今回の受賞に至りました。

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2016年に起きた熊本地震からの復興を伝える映像パネル
所在地 熊本県熊本市中央区本丸
竣工 1960(昭和35)年
改修 2021(令和3)年
建物所有 熊本市
改修設計 大林組
改修施工 大林組

弘前れんが倉庫美術館

煉瓦敷のミュージアムロードから望む、美術館の夕景

明治時代に実業家福島藤助が建設し、その後シードル(りんご酒)工場として活用された築約100年の煉瓦倉庫を、美術館にコンバージョンしました。

スタジオ、市民ギャラリー、ライブラリーを併設した開かれた美術館で、エントランスには新たに煉瓦アーチトンネルを構築。既存の開口部を巧みに活かすことで、自然光が入る明るい共用空間をつくり出しました。

煉瓦壁の補強では、美観を損ねない工法を採用しました。吹き抜け空間の煉瓦壁には密にPC鋼棒を配置し、頂部には鉄骨梁を流し面外方向への補強を実施。耐震性能を担保しながら、煉瓦壁でつくられた内外観を実現しました。

煉瓦壁以外の木造小屋組、鉄骨部材、床コンクリートなどの既存部材も、経年による劣化や腐食の程度によって「残置」「再利用」「転用」することで、活用しました。

今回の受賞では、新たに手を加えた部分と既存部位を巧みに調和させ、変化に富んだ魅力的な美術館としたことや、収蔵庫の温湿度管理グレードを適切に設定するなど美術館ならではの創意工夫を随所に施したことが評価されました。

エントランスのアーチトンネル。煉瓦壁を大きくくり抜いて新設した
2階ワークラウンジ。木造間仕切り壁は既存壁を化粧として再利用した
所在地 青森県弘前市吉野町
竣工 1923(大正12)年
改修 2020(令和2)年
建物所有 弘前市、弘前芸術創造(建築主)
改修設計 Atelier Tsuyoshi Tane Architects(建築設計)、NTTファシリティーズ(設計統括)、NTTファシリティーズ東北(設計統括)、大林組(構造設計)、スターツCAM(構造設計)、森村設計(設備設計)
改修施工 スターツCAM(建築)、大林組(建築)、南建設(建築)、ユアテック(設備)、リケ(煉瓦工事)、高山煉瓦建築デザイン(煉瓦工事)