広報誌『季刊大林』62号(特集:中世の湊町)を発行

中世日本の北の玄関口 幻の湊まち・十三湊の復元

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、このたび、広報誌『季刊大林』62号を発行しました。

『季刊大林』では1978年の創刊以来、「わたしたち人間は、かつて何を建設してきたのか、そして未来に何を建設できるのか」ということを、時代や文化と共に考察してきました。本号では中世という時代に注目しました。

日本史における「中世」は、「古代(大和朝廷から平安朝まで)」と「近世(江戸時代以降)」の間にある、武家の台頭による混迷の時代です。その一方で、海を介しての流通が盛んになり、全国各地にローカルな経済活動が進み、無数の小規模な湊、宿、市が形成された、と言われています。しかし、その時代の建築や都市については、まだよく分からない点が多いのが実情です。

本号では、当時はまだ辺境の地と位置付けられていた東北エリアを中心に、中世日本の姿をひもときます。また、大林組技術陣による「大林組プロジェクト」では、北の玄関口と位置付けられた湊町「十三湊(とさみなと)」の想定復元に挑戦しました。

大林組では今後とも、建設にまつわる文化を考察する『季刊大林』の発行を社会文化活動の一環と位置付け、環境・情報・防災など現代社会において重要なテーマを積極的に取り上げていく予定です。

『季刊大林』と「大林組プロジェクト」について

『季刊大林』は、1978年発刊の創刊号「ピラミッド」から現在に至るまで、建設という視点を通して人類が築き上げた文明、文化を考証し、また未来社会のあり方を模索する広報誌をめざしてきました。その間、国内外の数多くの研究者・専門家の方々にご参加いただき、他に例のない学術的広報誌として高い評価を頂いています。

『季刊大林』の大きな特徴となっているのは、社内で編成したプロジェクトチームが歴史的建造物の復元や検証、未来社会に寄与する建造物や街の構想などに挑戦し、そのプロセスと成果を誌上で発表する「大林組プロジェクト」です。

復元の例としては、「古代出雲大社本殿」「光源氏の邸宅・六条院(寝殿造り)」「古代アレクサンドリア図書館」「豊臣秀吉が建立した大仏殿」、未来構想の例としては、「火星居住計画構想」「都市全体を免震化するゼリー免震構想」「宇宙エレベーター建設構想」「スマート・ウォーター・シティ東京建設構想」「森林と共に生きる街『LOOP50(ループ50)』建設構想」「テクノロジーでつくる循環型農業『COMPACT AGRICULTURE(コンパクト アグリカルチャー)』などがあります。これらは、大林組の技術水準を示すだけでなく、建設の面白さ、奥深さを垣間見せ、建設文化への理解を深める格好の機会として社会的にも話題となりました。

『季刊大林』62号「中世の湊町」概要

日本史における「中世」は、「古代(大和朝廷から平安朝まで)」と「近世(江戸時代以降)」の間にある、武家の台頭による混迷の時代です。その一方で、海を介しての流通が盛んになり、全国各地にローカルな経済活動が進み、無数の小規模な湊、宿、市が形成された、と言われています。

本号では、当時はまだ辺境の地と位置付けられていた東北エリアを中心に、中世日本の姿をひもときます。大林組プロジェクトでは、北の玄関口と位置付けられた湊町「十三湊(とさみなと)」の想定復元に挑戦しました。

都市の中世―その原型と謎

伊藤毅(青山学院大学総合文化政策学部客員教授、東京大学名誉教授)

中世はさまざまなタイプの「都市的な場」が生まれた時代だ。都市史の類型から中世の位置付けを示すとともに、当時の代表的な都市類型ともいえる「湊(港)町」の魅力を紹介する。

中世の北"海"道―船・湊・航路

村井章介(東京大学名誉教授)

中世の日本海沿岸をたどる海の道は、太平洋側のそれを凌駕する表通りだった。当時はどのような営みが行われていたのか。

平泉モノがたり

柳原敏明(東北大学大学院文学研究科教授)

奥羽は京都などのみやこびとには未知の世界であるとともに、憧憬(しょうけい)の対象でもあった。その地の中心地であり地方文化を花開かせた平泉と奥羽とを、モノという切り口から概観する。

日本の南と北の船

安達裕之(日本海事史学会会長、東京大学名誉教授)

木造船は、地域が違えば船体構造も艤装(ぎそう)も全く異なる。単材の木を刳(く)りぬいただけの「刳船(くりぶね)」から、和船はどのように大型化していったのか。和船の第一人者が解説する。

グラビア:絵図に見る和船

中世の船の材料は再利用されていたため、遺物で発見されることはほとんどなく、その形を知ることは困難だ。当時描かれた絵図から、船のカタチをひもとく。

シリーズ 藤森照信の「建築の原点」⑬ 園城寺・光浄院客殿

藤森照信(建築史家・建築家、東京都江戸東京博物館 館長、東京大学名誉教授)

建築史家にして斬新な設計者としても知られる藤森照信氏が、建設物を独自の視点でとらえるシリーズ。今回は、古代の天皇と貴族の為の「寝殿造」から武家の為の「書院造」へと変化する間にあったとされる、「主殿造」に注目した。

<仕様等>

  • 書名    季刊大林 62号「中世の湊町」
  • 仕様    B5判、4C、本文62頁
  • 発行・企画 株式会社大林組コーポレート・コミュニケーション室
  • ISSNコード 0389-3707
  • 発行日   2023年6月30日

大林組プロジェクト

中世日本の北の玄関口 幻の湊まち・十三湊の復元

復元:大林組プロジェクトチーム
監修:伊藤毅

中世以前の日本では、平城京、平安京、大宰府などの拠点を除くと都市と呼べるものは多くはなかった。しかし中世に入り経済が発展すると、人口集積が進んだ地方で「都市的な場」が形成されるようになったと言われているが、良く分からない点が多い。都市の黎明期にあたる「都市的な場」は、いったいどのような様相を呈していたのだろうか。

その問いをひもとくためにプロジェクトチームが注目したのは、津軽半島西岸に位置する「十三湊(とさみなと)」だ(現在の青森県五所川原市十三)。想定復元を進めるうちに見えてきたのは、辺境地の集落というイメージを覆す、都市や港湾の機能が計画的に整えられ、蝦夷地との交易や日本海航路の拠点として繁栄した街の姿だった。

以上

この件に関するお問い合わせ先
大林組 コーポレート・コミュニケーション室 広報課
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