山岳トンネル坑内で切羽前方の水平・鉛直方向の変位が計測できる二軸先行変位計を開発
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技術・ソリューション
大林組は、掘削中の山岳トンネル坑内から、切羽前方の水平・鉛直、両方向の変位計測が可能な二軸先行変位計を開発しました。
山岳トンネルの切羽より前方の地山は、掘削した時点から「先行変位」が発生し始めます。先行変位を測定することで、地山に生じるすべての変位を取得でき、切羽での崩落事故の防止と正確な地山の安定性評価につながります。しかし、従来の先行天端沈下計は、重力加速度センサー(※1)を用いているため、鉛直方向の変位計測に限定されていました。今回開発した二軸先行変位計では、ロボット制御などに利用される高精度ロータリエンコーダ(※2)を採用し、水平方向の変位計測も可能としました。
二軸先行変位計は、長さ1mのセグメントを連結させる構造で、ヒンジ部に水平方向と鉛直方向に回転するロータリエンコーダを1個ずつ設置しています。これを長尺鋼管先受け工の鋼管やGFRP(※3)管内に設置することで、水平、鉛直それぞれの先行変位を計測できます。また、ロータリエンコーダはわずかな変位も検知し、高精度な計測が可能なうえ、重力加速度センサーよりも安価であるため、従来機器よりも安価に作製できます。
二軸先行変位計を設置することで、既設トンネルや既設構造物の挙動監視が必要な近接施工では、掘削に伴う地中の先行変位を計測し、近接構造物の影響をリアルタイムに監視することができます。従来、近接構造物の水平方向の挙動を監視する場合は、地表に傾斜計などを設置しており、計測範囲は土被りが小さい坑口部付近に限定されていました。
二軸先行変位計は、トンネル坑内に設置するため、複数地点において近接構造物の地中変位を計測することが可能になります。また、水平方向の変位が大きい地山では、水平方向の先行変位を考慮して、地山の安定性を正確に評価することが可能になります。
大林組は、二軸先行変位計の現場適用を進めることで、山岳トンネル工事の安全性や品質の向上を図り、健全なインフラの構築に貢献してまいります。
- ※1 重力加速度センサー
物体の重力方向の傾きや三次元方向の加速度を計測するセンサー
- ※2 ロータリエンコーダ
物体の回転量や回転速度を計測するセンサー
- ※3 GFRP
ガラス繊維強化プラスチック