3Dプリンターで製作した模型でTLP型浮体式洋上風力発電施設の設置方法の妥当性を確認

ソリューション/テクノロジー

大林組は、セメント系材料を使用した3Dプリンターにより、テンションレグプラットフォーム(TLP)型浮体式洋上風力発電施設に用いるコンクリート浮体の模型(高さ:約1.3m、幅:約2.3m)を製作し、水槽実験にて大型の起重機船を必要としないTLP型浮体基礎の設置・係留シミュレーションを行い設置方法の妥当性を確認しました。

洋上風力発電施設の基礎構造形式は、海底に基礎を構築して風車を支持する着床式と、海に浮かべた基礎に風車を設置する浮体式とに分別され、大林組は浮体式においてTLP型浮体式洋上風力発電施設基礎を考案し、一般財団法人日本海事協会から設計基本承認を取得しています。

TLP型のコンクリート浮体は、その求められる性能から水密性が重要であり、接合部なく製作することが理想です。そこで、3Dプリンターを使ってTLP型コンクリート浮体の模型を製作し、高い水密性を実現するとともに、設置・係留シミュレーションによる設置方法の妥当性の確認を行いました。

TLP型浮体式洋上風車イメージ
自然浮遊状態の完成模型

製作したTLP型浮体模型とシミュレーションの内容は以下のとおりです。

3Dプリンターによる複雑な形状の模型製作

TLP型コンクリート浮体は、風車を支持する円筒構造物に対して、放射状に3つの円筒形レグが付く複雑な形状です。この形状を3Dプリンターで製作するには、積層方向に対して大きく傾斜する箇所があることから、一体造形で製作することは困難でした。分割して製作した部材を接合する方法であれば、3Dプリンターでも複雑な形状に対応できますが、接合部を設けるとコンクリート浮体に求められる水密性を確保できません。

そこで、大林組が開発したサポート材を土台としてその上にセメント系材料を吐出して積層する技術を用い、接合部を設けることなく一体造形でTLP型浮体模型を製作しました。この技術は、接合部なく複雑な形状を製作できることから、水密性だけではなく強度などが求められる複雑な形状にも適用できます。

3Dプリンター積層時
完成模型下部

TLP型コンクリート浮体基礎の設置・係留シミュレーション

TLP型浮体基礎とは、コンクリート浮体と海底に設置されたアンカーをテンドンと呼ばれる緊張係留材(鋼管やワイヤーロープなど)で結束し、コンクリート浮体の浮力によって生じる緊張力を利用して風力発電施設の基礎として機能させる仕組みです。コンクリート浮体を設置するには、陸上で製造した浮体を船で設置場所まで自然浮遊状態で曳(えい)航した後、浮体を海中に半潜水させてテンドンと結束して係留することになります。

今回の実験では、曳航、設置、係留のそれぞれの状態を想定し、制作した模型の内部に重量やバランスを調整するバラスト水を入れることで、それぞれの状態を再現し、重心計測のために模型が傾斜した状態も再現しました。同時に、浮体模型の実際の状態と、シミュレーションソフトで予想した状態を比較し、シミュレーションソフトの妥当性も合わせて検証しています。

実験の結果、バラスト水の注排水によって浮体の姿勢を制御できること、シミュレーションソフトによる解析結果と実際の状況が比較的よく一致することが確認できました。

バラスト水注水状態
バラスト水注水による沈下・傾斜試験
シミュレーション

大林組は、今後、本実験の成果を踏まえてさらなる技術開発と実証実験を積み重ね、TLP型浮体式洋上風力発電施設の具体的な施工方法を確立していきます。これからも、浮体式を含めた洋上風力のEPC分野における競争力を強化することで、脱炭素社会の実現に貢献していきます。