J-WALL®Ⅱ工法を鉄道近接の狭あい地に適用

掘削土・使用材料を減らし、CO2排出量の削減に貢献しました

ソリューション/テクノロジー

大林組、JFEスチール株式会社、ジェコス株式会社が共同開発したJ-WALLⅡ工法が、JR横須賀線武蔵小杉駅の雨水貯留槽工事(発注者:東日本旅客鉄道株式会社、竣工:2023年3月)に適用されました。

JR横須賀線武蔵小杉駅では、2面2線化工事に伴い用地面積が増えたことから、雨水流出抑制施設として雨水貯留槽を増設しました。増設にあたっては、既設施設との一体運用を図るために、既設雨水貯留槽と隣り合う形で、JR横須賀線の高架橋や用地の境界との狭あいな範囲の地下に設置する必要がありました。さらに一定の貯水量(内空)の確保も必要であったため、施工性・経済性に優れた工法が求められました。

J-WALLⅡ工法は、合成構造用鋼矢板を仮設土留め壁および本設躯体の一部として利用できる工法です。本工法を雨水貯留槽側壁へ適用することで、狭あいな範囲を最大限利用した雨水貯留槽の新設を実現しました。なお、J-WALLⅡ工法は、これまでに地下擁壁への適用事例がありましたが、鉄道近接およびボックスカルバート構造(※1)への適用は、今回初となります。

【J-WALLⅡ工法 施工概要図】

本工事でのJ-WALLⅡ工法適用の特長は以下のとおりです。

狭あいな場所で地下貯水槽を構築

J-WALLⅡ工法は、躯体の外側に必要な施工幅を省略し、躯体の壁厚を薄くできます。そのため、全方位を囲まれ限られた施工場所に一定の貯水量を確保する、最大限の面積かつ掘削深さが浅い雨水貯留槽の構築を可能にします。

狭あいな場所での施工状況(JR東日本撮影協力)

ボックスカルバート構造への適用

鋼矢板に鉄筋をスタッド溶接(※2)で接続し、頂版および底版(※3)へ定着することで、ボックスカルバートの側壁と頂・底版との円滑な応力伝達を可能とする構造としました。

頂版接合部配筋概要図

施工数量およびCO2排出量の削減

躯体を薄壁化したことで、コンクリート量を23%、鉄筋量を48%削減するとともに、掘削深さを浅くすることで、掘削土量を25%削減しました。これにより工期短縮を図り、従来に比べてCO2排出量の削減にも貢献しました。

従来工法とJ-WALLⅡ工法の平面図・断面図の比較

従来工法とJ-WALLⅡ工法の使用材料比較

主鉄筋 鉄筋量
合計(kg)
コンクリート量(m³)
外側 内側
J-WALLⅡ (ビートルパイル) 4-D16 62.47 0.99
RC構造 4-D22 4-D19 119.92 1.28
比率 0.52 0.77

※鉄筋量・コンクリート量は鋼矢板1枚幅(900mm)・壁高2.85m当たりの量

鉄筋施工状況(撮影協力:JR東日本)

J-WALLⅡ工法の側壁
RC構造の側壁

今後も都市部の狭あい地などでの開削工事において、J-WALLⅡ工法の適用拡大に取り組むことで、掘削土量・使用材料の削減や工期短縮によるCO2排出量の削減を実現し、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献してまいります。

  • ※1 ボックスカルバート構造
    地中に構築される箱型のコンクリート構造物
  • ※2 スタッド溶接
    鉄筋やボルトを金属板に瞬時に溶接する方法。J-WALLⅡ工法では、接合鉄筋をハット形鋼矢板に溶接する
  • ※3 頂版および底版
    カルバート構造物の屋根および床となる部材で、側壁と接合されることにより箱型の構造物を形成する