ドローンおよび自律4足歩行ロボットを用いた放射線計測技術を開発

ソリューション/テクノロジー

大林組は、未来技研株式会社、株式会社菊池製作所、株式会社松浦電弘社と共同で、ドローンおよび自律4足歩行ロボット「Spot」を用いた放射線計測システムを構築し、局所的に放射線量の高い箇所が発生していないかなどの検査を省人化させる技術を開発しました。

原子力施設や中間貯蔵施設では土壌などの放射線量の調査が必要ですが、モニタリングポストによる定点観測や歩行調査などの手法が採用されており、広大な敷地に対して面的に計測を行う技術が確立されていません。また、人手不足が深刻化する中、省人化も大きな課題となっています。

そこで、大林組は福島県に整備された中間貯蔵施設の大熊3工区土壌貯蔵施設にて、ドローンおよびSpotを使った放射線計測技術の実証試験を行い、迅速な計測を行いながら、省人化を可能にする技術を開発しました。

  • 検出器を搭載したドローン

  • 検出器を搭載した自律4足歩行ロボットSpot

実証試験の内容と結果、計測技術の特長は以下のとおりです。

実証試験内容

実証試験を行った中間貯蔵施設は、除染作業で発生した土壌(以下、除去土壌)を貯蔵し、覆土しています。地表面に局所的に放射線量が高い箇所が発生していないかの調査を、鉛の遮へい体を装着した検出器を搭載したドローンおよびSpotで行いました。ドローンは広大な面積を迅速に計測ができ、Spotはより詳細に異常箇所を特定できます。また、Spotを用いることで、ドローンが飛行できないような建屋内での計測が可能になります。

今回、地表面に露出した除去土壌を想定した放射線源(以下、線源)を設置し、その周辺をドローンおよびSpotを停止させずに走行させたまま、線源の検出が可能かどうかの確認を行いました。ドローンの飛行高度は3m、飛行速度は秒速1mと設定し、Spotは走行時の検出器高さを70cm、走行速度を秒速約0.8mとしました。

実証試験結果

1MBq(メガベクレル)の線源を地表面に設置し、ドローンおよびSpotにその直上を3往復走行させたところ、ピークが6ヵ所現れ、線源を特定することがでました。1MBqという線源は、地表面から1m高さで約0.08μSv/hの空間線量率に相当する放射能であり、これは一般に安全とされる0.23μSv/hの約3分の1に当たり、十分に小さな放射線量でも検出できるという結果です。

  • 【ドローン】計測時間と計数率の関係

  • 【Spot】計測時間と計数率の関係

また、本実証試験ではドローンにGPSを搭載し、位置データと放射線計測データを組み合わせることで、検出結果をカラーマップとして可視化できるようにしました。

ドローンによる測定結果をカラーマップで表示した図

計測技術の特長

本技術は、除去土壌の中間貯蔵施設や減容・再生利用事業施設だけでなく、原子力発電所の廃止措置開始後の建屋周辺および内部のモニタリングや、放射性廃棄物を地下に埋設した後の点検作業においても有用な技術です。また、実証試験では、狭い範囲を詳細に検査し、1時間当たり約4,500m²の速度で計測できることを確認。通常の人による歩行調査(1人1時間当たり約1,100m²)に比べ約4倍の生産性向上を実現しました。また、日常業務として広範囲の計測にドローンを使用する場合は1時間当たり約4万m²の計測が可能であり、さらなる生産性向上が図れます。

大林組は、ドローンおよびSpotを用いた放射線計測技術を提案することで、原子力関連施設の維持管理作業の省人化を実現し、安全で安心できる社会インフラの構築に貢献します。