建設現場で発生する鉄スクラップの水平リサイクルフローを構築し、アップフロントカーボン削減を推進

大林組解体現場で発生する約1,000tの鉄スクラップを大林組建設現場で循環利用

プレスリリース

株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、建設資材における脱炭素社会・循環型経済の実現に向けた取り組みの一環として、大林組が請け負う解体工事で発生する鋼材(鉄スクラップ)を、大林組が施工する新築工事において循環利用を行うため、建材商社、金属リサイクル事業者、電炉鉄鋼メーカーと連携し、解体から鉄スクラップの発生を経て、電炉鋼材として再生し、再び建設現場で利用するまでの輸送ルートと事業者選定を最適化する水平リサイクル(※1)フローの構築に着手しました。

この取り組みの第一弾として、東京都港区北青山三丁目の解体工事で発生する鉄スクラップ約1,000tを、水平リサイクルフローに適用し、大林組新築工事で循環利用します。

社会的背景

2050年カーボンニュートラル実現を目指し、建設業界では建設物のライフサイクル全体のCO2排出量であるホールライフカーボン(※2)の削減につながる取り組みを進めています。その中でもアップフロントカーボン(※3)の削減は建設会社による貢献度が高く、建設物の設計、施工段階で、リユースやリサイクル建材を積極的に採用していくことが重要です。

大林組は資材製造時のCO2排出量が大きい鋼材に着目し、2024年6月に国内初となる建物解体後の鉄骨構造部材を新築建物へリユースする取り組みを始め、リユースのための設計手法の検討や技術開発による、建設資材の循環利用に取り組んでいます。一方、リサイクルについては、鉄スクラップから電炉鋼材への再生利用は確立しているものの、再び建設用の鋼材として供給されるとは限りませんでした。

取り組みと効果

輸送ルートと事業者選定の最適化で、輸送時CO2排出量の削減と鋼材のトレーサビリティを確立

建設現場における鉄スクラップのリサイクルフローは、一般的に発生する建設現場から、金属リサイクル事業者による回収、輸送を経て、電炉鉄鋼メーカーで再生し、建材商社などを介して再び鋼材(電炉鋼材)となり、供給されることはありましたが、これまで各社の経済合理性が優先され、輸送時CO2排出量の削減を考慮したプロセスになっていませんでした。

今回、鉄スクラップの水平リサイクル実現にあたり、連携各社の協力により、発生する建設現場から、電炉鋼材として新たな建設現場に供給されるまでの輸送ルートと事業者選定を最適化するフローを確立し、輸送時CO2排出量の削減に貢献します。また、昨今リサイクル原料の来歴や品質確認の履歴など、製品や素材の環境配慮度を可視化して証明・共有することを求めるトレーサビリティやデジタル製品パスポートのニーズが高まる中、従来把握することができなかった鋼材のトレーサビリティについて、水平リサイクルフローに大林組が関与する部分の情報提供が可能になります。

水平リサイクルフローイメージ(従来と比較)

電炉鋼材使用によるアップフロントカーボンの削減

初適用となる東京都港区北青山三丁目の工事では、既存建物の解体に伴い排出される鋼材約1,000tのリサイクル(電炉鋼材に再生)を行い、大林組施工の新築工事で使用します。それにより新材(高炉鋼材)を使った場合に比べ、製造時CO2排出量を約60%削減します。

今後の展望

2024年度は首都圏および関西の建設現場で鉄スクラップの水平リサイクルフローを適用開始し、地域性も考慮した輸送フロー選択のノウハウを蓄えていくことで、2025年には全国の各事業者との連携を進め対象地域を拡大していきます。さまざまな建材のリサイクル、リユース、資源の有効活用プロセス確立に今後も取り組み、脱炭素社会や循環型経済の実現に貢献していきます。

  • ※1 建設業界で掲げる水平リサイクルについて
    コンクリート塊を再生コンクリート骨材、アスファルト・コンクリート塊を再生アスファルト合材として再生利用するなど、建設廃棄物を元の建設資材に再生資源化することや、貴重な資源を最終処分せずに有効利用を進めること
  • ※2 ホールライフカーボン
    建設資材の製造、輸送を含む施工、運用、解体、廃棄されるまでの建物のライフサイクルで発生するCO2排出量
  • ※3 アップフロントカーボン
    建設資材の製造段階(原材料調達、輸送、製造)および、施工段階(現場への輸送、施工)に発生するCO2排出量

以上

大林組 コーポレート・コミュニケーション室広報課
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